ストーリーよりも登場する車に憧れた漫画 『サーキットの狼』

★私が幼少の頃、夢中になり、其の後の人生に影響を与えた漫画

 

1970年代、日本ではスーパーカー・ブームなるものが沸き起こった。

幼少だった私は、ご多分に漏れず夢中になった。

 

当時スーパーカーに便乗した商売に、子供は即座に取り込まれた。

カード、消しゴム、文房具、プラモデル等、あらゆるものを集めた記憶がある。

 

その中でスーパーカーを取り扱った漫画が存在した。

題名は「サーキットの狼」、作者は「池沢さとし」。

 

漫画中で、当時流行ったスーパーカーがふんだんに登場。夢中になったのは、云うまでもない。

今回、この漫画を取り挙げてみたいと思う。

 

尚、当漫画は私が初めて自分の小遣いで購入した漫画であり、何か特別な思い出があるのも事実。

久々に押し入れから取り出し、読み返してみた。

 

・作品      『サーキットの狼』

・作者       池沢さとし

・出版社      集英社

・掲載誌      週刊少年ジャンプ

・掲載期間     1975年~ 1979年

・コミック     ジャンプ・コミック 全27巻 

 

登場人物

 

★風吹裕也

ロータスヨーロッパを操る公道の一匹狼。

街で自分の愛車を走らせ、シグナルグランプリ(信号が変わると同時にスタートして次の信号までに勝負を決めるレース)で腕を鍛える。

最後にはレース界の頂点、F1レースに参加する。

 

★風吹ローザ

裕也の実姉。モデルであり、若手レーサー飛鳥ミノルの恋人。

後に結婚。飛鳥ミノルは、裕也の義兄となる。

 

★飛鳥ミノル

有望な若手レーサーでローザの恋人。後に裕也の義兄となる。

裕也に色々アドバイスをし、互いに切磋琢磨。

漫画の最後にF1レースにて、裕也と優勝を争う。

 

★早瀬左近

裕也のライバル的存在。常に裕也が参加するレースの好敵手。

愛車は主にポルシェ系。親は電機会社を経営、裕福な家庭で育つ。

ヨーロッパのレース中、アクシデントで落命する。

 

★早瀬ミキ

早瀬左近の妹で、裕也の恋人。兄左近と裕也の、緩衝的役割もする。

 

★谷田部行雄

レース好きのお金持ちのスポンサー。

才能ある人物を発掘して、支援を行う。裕也もその一人。

途中で縁が切れた時期もあったが、最後まで裕也との関係が続く。

 

★沖田

交通機動隊の警察官。才能を認められ、谷田部氏の支援を受ける。

本格的レーサーを目指す為、警官を辞め、公道レースに参加する。

しかし持病の為、ゴール寸前に絶命する。

 

★ハマの黒豹

横浜の暴走族出身。愛車はいつもカウンタック。

しかし当時最高のポテンシャルの車を持ち乍、何故か成績はいまいち。

私としては、登場する車に興味をもった。

 

★隼人ピーターソン

漫画の初期に登場する。プロレスで云えば、完全なヒール役(悪役)。

トヨタ2000GTの名車に乗るが、汚い手法を使う。

それが仇となり、公道グランプリでは、砕けた道から、車もろとも転落する。

 

作品概略

 

ロータスヨーロッパを操る「風吹裕也」は、街でシグナルグランプリを戦う走り屋だった。

街で戦いを仕掛け、勝つ事に喜びを感じ、今まで無敗を誇っていた。

 

ある日、ポルシェを操る「早瀬左近」と出会う。

左近は裕也と負けず、劣らずのドライビングテクニックを持つ。

この時から、生涯のライバルとなる。

 

裕也は、走り屋の祭典で非合法の「公道グランプリ」に出場する事を決意する。

自分の腕がどこまで通用するか、試す心算だった。

 

レースには、ライバルの左近、知り合いの元警官「沖田」、悪名高い去年のチャンピオン「隼人ピーターソン」も参加。

参加者はそれぞれ愛車に乗り込み、デットヒートを繰り返す。

 

死闘の末、裕也が勝利を収め、沖田が2位、左近が3位となる。

しかし沖田はゴール直前、持病が悪化。死亡する。

 

沖田の死、姉の婚約者(のちに義兄)である若手レーサー「飛鳥ミノル」の勧めで、公道を飛ばすだけの野良犬から、本格的なサーキットを目指す狼へと覚醒する。

亡くなった沖田のスポンサーだった「谷田部行雄」は沖田の死後、裕也のスポンサーとなった。

 

谷田部の支援で、裕也は一流レーサーの道を歩み始める。

一流レーサーの道を進み始めた裕也は、数々のレースに参加。

持ち前の勘と腕で順調に勝ち進み、レーサーとして成長する。

 

やがて裕也は、上位者にモーター・スポーツの本場であるヨーロッパのレース参加をかけた国内レースに出場。

レース最後のカーブを曲がる寸前までトップを走っていたが、カーブを曲がり切れず、コースアウトでクラッシュ。

そのまま事故で、リタイアする。

 

今まで順調に勝ち進んでいた裕也の、初めての挫折だった。

飛鳥ミノル、早瀬左近等のライバルに取り残された裕也はしょげかえり、鬱屈した日々を過ごす。

 

しかし周囲の説得もあり、心機一転。

プロレーサーを目指し、単身でヨーロッパに渡る。

 

ヨーロッパではなかなかチャンスに恵まれなかったが、数少ないレースに参加。

裕也は結果を残し、徐々にチャンス・スポンサーを得る。

 

遂に裕也は、F3に参加。好成績を収める。

しかしレース中、悲しい出来事が発生。

事故でライバルだった早瀬左近が、帰らぬ人となってしまった。

 

裕也は実力を認められ、F1のテスト・ドライバーの機会を得る。

しかし其の後、日本チームがF1に参加する事が決定。

急遽、日本チームでのF1参加を決める。

 

日本チームを率いるリーダーは、嘗てのスポンサーだった「谷田部行雄」。

日本チームは、スペインGPに参加。

裕也と元サッカー界のスター「神藤速人」を擁し、F1界にチャレンジする。

 

F1レースに臨み初めは二人とも健闘するが、周を重ねる事にマシンに重大な欠陥が判明。

そのまま二人はリタイアする。

日本チームのF1挑戦は、見事失敗に終わった。

 

一年後、日本チームは再びベルギーGPに挑戦した。

1年前、恥を晒し撤退した日本チームを注目する人間は誰もいなかった。

 

レース開始後、日本チームは下馬評を覆し、善戦した。

神藤速人は序盤から上位に食い込む活躍を見せる。

裕也も後方から追い上げ、とうとうトップ集団に追いつく。

 

トップ集団に追いついた裕也は、ポルシェチームのドライバーとして参加していた飛鳥ミノルと、デットヒートを繰り広げる。

とうとうラストラン。

トップに立った裕也とミノルは、互いに譲らずゴールに向かい、勝利のチェッカーフラッグを受けた。

 

どちらが勝ったかのかは、分からない。

ただ日本人初のF1レースの勝利という名誉で、漫画は幕を閉じた。

 

見所

 

なんといっても内容もさる事ながら、当時のスーパーカーブームが後押ししていた為、漫画は大人気となった。

内容よりも、登場する車に興味を馳せたものだった。

 

漫画のコミックの最後にイラストで、スーパーカーのイラスト、諸元表が乗っていたのが印象的だった。

子供心にワクワクしたのもだった。

 

今思えば、かなり時代を先取りした漫画だった。

街の一介の走り屋から成長。見事、F1レーサーにまで昇りつめ、優勝まで果たした。

 

当時は幼少だった為、今ほどF1、モータースポーツの事情がわからず、理解できない事が多かった。

記憶では、スーパーカーが登場していた場面は面白かったが、スーパーカーが登場しなくなった時点で、漫画の人気も衰えたのではないかと思う。

 

何故なら前述したように、当時の人間にモータースポーツの知識など殆どなく、舞台がヨーロッパに移った為。

当時の殆どの読者が理解できず、離れたと予測する。

 

F1の章は、時代が早すぎたと云える。

今であれば、認知度も高く人気が保てたのではないだろうか。

 

当時のF1レーサーで私が知っていたのは「ニキ・ラウダ」「ジェームス・ハント」「ロニー・ピーターソン」ぐらいだった。

特に私はニキ・ラウダが好きで、フェラーリのマシン(312T)に乗るラウダが好きだった。

尚、漫画で登場する隼人ピーターソンは、ロニー・ピーターソンから取ったものと思われる。

 

因みにコミック最後に、当時の数々の現役レーサーの方が解説として登場している。

中でもF1ブームの先駆けとなった頃の日本人レーサー「中島悟」がコミック23巻に登場している。

 

登場したのが1980年だった為、中島悟は漫画に掲載された後に夢を叶えたと言える。

今にして思えば、漫画は当時、F1レーサーを目指す人間達のバイブルになったのかもしれない。

 

漫画が連載されていた時代と比べ、今では何人かの日本人F1レーサーが誕生している。

しかし残念ながらまだ優勝はない。

近い将来、実現される事を切に願う。

 

日本人ドライバーの最高成績は、3位が最高。

1990年、日本GP鈴木亜久里。2004年、アメリカGP佐藤琢磨。

2012年、日本GP小林可夢偉の3人が達成。

 

まとめ

 

幼少の頃、登場する車が目的で読み初め、私に車の面白さを教えてくれた漫画。

今でも時々時間があれば、読み返している。

 

漫画の影響で若かりし頃、免許取得後、運転に夢中になったものだった。

今では年をとり車の熱は冷めたが、車を運転する楽しさはまだ健在。

 

今後世界は電気自動車・自動運転が主流となるが、何か淋しさを感じるのは、私だけだろうか。

今回読み返し、そんな考えが頭を過った。

 

(文中敬称略)