内閣府経済諮問会議発表「氷河期世代、3年で30万人雇用」について
内閣府経済諮問会議発表にて、「氷河期世代、3年で30万人の正社員雇用への骨太の方針」。
大昔のある時期、「骨太の方針」と言う文字がやたらマスコミに登場していたのを記憶している。
同じ言葉が持て囃されていた経緯を考えれば、甚だ注意しなければいけない。
何故なら大概、あまり上手くいかない為。
目次
内閣府方針・見解
今回この発表について述べたいと思う。
最近私がよく取りあげる「年金問題」にも密接に係わっている事を先に述べておきます。
就職氷河期世代が抱える固有の課題(希望する就業とのギャップ、社会との距離感等)を踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、同世代の活躍 の場を更に広げられるよう、地域ごとに対象者を把握した上で、具体的な数値目標を立てて3年間で集中的に取り組む。
支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者(少なくとも50万人)、就業を希望しながら様々な事情により求職 活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100万人程度と見込む。3年間 の取組により、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用者については、30万人増やすことを目指す。
引用元:内閣府令和元年第3回経済財政諮問会議 議事にて
皆さん、この資料をご覧になり如何お考えでしょうか。
結論から先に述べますが、「時既に遅し」でしょう。
そう言ってしまえば、身も蓋もないが、私自身が同世代にあたる為、ハッキリそう言える。
時間はどの人間にも唯一、平等に与えられた最も貴重な財産。
西洋は諺にであれば「Time is money」だろうか。過ぎ去った時間は戻って来ない。
いくら悔やんでも悔やみきれない。
その時は気付かないが、後になって振り返れば、実はあの時が歴史の分岐点だったと気付く事が多い。
時計の針は、二度と戻せない。
歴史の言葉を借りれば、
「事を成すには何事もタイミングが大事。タイミングを逃せば、物事は決して上手く進まない」
だと常に思う。
現実問題として
今回の政府方針も遅きに期した感がある。
既に1994年からの第一次就職氷河期を含めれば、対象者は既に40代半~50代前後。
3年かけてとの話だが、3年後に上記の人達はすでに40代後半~50代前半。
そんな年齢に達した人を、雇う企業が果たして何件あるだろうか。
単に正規社員の数を増やしても、何もならない。
何故なら、正規社員になれども、賃金所得が上がらない限り、全く意味をなさない為。
賃金所得が比較的、大きとされる大企業が果たして雇ってくれるだろうか。
答えは「否」である。当然だと思う。
現在少子高齢が進み、毎年の様に新卒就職率の更新。
今年の就職内定率をみても明らかに「売り手市場」と云う事が分かる。
後述するが、「ヒト・モノ・カネ」の値段は需給で決まる。
新卒に採用が集中するのも当然だと思う。私が経営者であれば、当然同じ事をする。
経団連会長・トヨタ社長も公言しているが、「今はもう終身雇用の時代ではない」と断言している。
大企業ですら、この様な状況。
まして中小企業が、40代後半~50代前半の人間を積極的に雇うのかが問題。
そう考えれば所詮、絵にかいた餅を言わざるを得ない。
定年が60歳として、あと何年働けるかと計算すれば、僅か約10年であろう。
中小企業が勤続10年の人間を真剣に雇い、育てようとするだろうか。
更に政策と云うものは、直に成果が出るものではない。
結果は5年~10年の長いスパンが必要。
今回の対象者を考えれば、既に50代半~後半、ひと昔前は60歳で還暦。
生きていくだけが精一杯。
結局、色々な社会保障費の支払人を増やすだけが目的にしか過ぎない。
全く根本的な解決にならない。
中小企業自体、10年後に会社が存続しているか分からない。
仮令雇用されたとしても未婚の人間ならば、将来の自分の生活しか維持できないだろう。
まして結婚など考えられない。結婚しても子供を持つことは不可能に近い。
子供をもった時点で、自己破産の道にまっしぐらと思われる。
仕事がある中は何とか育てられるかもしれないが、失職した場合などは厳しい。
譬え子供が社会人になるまで働けても、夫婦の老後生活は不可能に近い。
子育てにお金を遣い果たし、貯蓄など殆どできない。
政府がやたら企業の再雇用を進めているのも理由がある。
それは年金問題でも述べたが、破綻寸前の年金財源の確保、将来年金支給減額の為の対策である。
「ヒト・モノ・カネ」は需給で決まるとで前述した。
人の需給関係のバランスを崩すのが目的。
簡単に述べれば、働く人が多くなれば求職する人が多くなり、雇う側の人間は低賃金で人を雇えるという仕組み。
近年の好景気で人件費が高くなったのを、人余りにする事で、賃金が安く抑えられるというカラクリ。
雇う側にすれば、願ったり、叶ったり。
新卒が少ない為、企業が新卒を求めれば、新卒の就職率は上がる。
逆に求人者が多くなれば、就職の門が狭くなり、賃金も抑えらえるという仕組み。
政府は外国人労働者受入れを拡大したり、年金の改悪に着手している。
改悪と書いたのも理由がある。
もしご興味がおありでしたら、過去のブログをご参考にされて下さい。
参考:最近、各年金についての記事を読み、簡単にまとめてみました
夫の賃金が安ければ、妻も働かざるをえない。
妻が働けば、厚生年金加入者が増え、厚生年金第3号保険者から外れ、扶養の除外となる。
此方も政府と企業の思惑は一致している。
言葉は悪いが、政府は
「老後は年金だけで生きていけない為、低賃金で一生働いて下さい」
と言っているに等しい。
繰り返すが、私は2000年にサラリーマンを辞めて以来、皮肉にも年金問題に詳しくなった。
年金問題を知れば知る程、将来的に破綻か支給が減額されるのが理解できる。
悪くはなれども、好転などありえない。
他の気になる項目
就職相談、教育訓練・職場実習、採用の全段階について、専門ノウハウ を有する民間事業者に対し、成果連動型の業務委託を行い、ハロー ワーク等による取組と車の両輪で、必要な財源を確保し、取組を加速
引用元:上記同掲載
とあるが、甚だ疑問。失職した際、失業手当を貰う為ハローワークを訪ねた人は分かると思うが、ハローワークの相談・斡旋・職業訓練・資格取得のプログラム等は、殆ど役に立たない。
失業手当を貰うための簡単な手順を述べるが、
①自主退社、解雇・倒産で支給される時期が異なる事。解雇・倒産で失職ならば手続き後、直に支給される。
自主退社であれば待機期間後、支給される。だいたい約3ヵ月。仮令リストラに近い自主退社でも同じ。
待機後、勤続年数・年齢により、支給される期間が異なる。
支給金額は、働いていた当時の給料により異なる。
②待機期間中、ハローワークが推奨する職業訓練がいくつか存在する。職業訓練中であれば、待機期間中であっても無職期間とみなされ、失業手当が支給される。
結構ややこしいが失業期間中、短期でもバイト・手伝いなどで収入が発生した場合、その期間は無職と見做されない。働いた日の分、失業手当が先延ばしになる。
この職業訓練というのも、かなり曲者。
まず希望の職業訓練を受ける為の募集の面接がある。
面接日、合格後の訓練日程も存在する。
しかし職業訓練終了後、決して訓練に関連した仕事に就けるとは限らない。
訓練を受けた企業にそのまま就職できる人もいるが、ごく稀な事。
訓練後、訓練に関連した仕事に就けなければ、全く意味がない。
中には早く失業手当を貰いたい為、受講している人もいる。
又訓練により、年齢制限もある。
年齢制限、男女差なしと建前上、述べているが実際には存在する。
それは或る意味、当たり前とは思うが。
③短期間に取得できる資格など所詮、あまり役に立たない。
何故なら、新卒の若い人材に先行投資と割り切り、時間をかけて教育すれば若い人間は直に取得する。
取得すれば、何年も役に立つ。
中年から初老になる人間に高度で専門的な技術が習得できるかは、甚だ疑問。
仮令習得できても、あと何年会社に貢献してくれるかと考えれば、雇う側は足踏みするのは当然。
自分もトライしてみようと思った時期もあった。
だが将来的な時間の少なさを考え、断念した経験がある。
ハローワークの求人実態
ハローワークの求人検索をみた方は分かると思うが、空求人・世間で言う所謂「ブラック企業」または、政府の助成金目当てと思われる求人が含まれている。
以前問題になって政府助成金当ての3ヵ月の試用期間のみ雇い、その後馘首する企業も存在した。
※同じ2017年、某企業が中小企業緊急雇用安定助成金を受けながら、某政治家のパーティー券を買い続けたとの記事もある。尚この企業は以前も不正受給を告発され、返還した経緯があるらしい。此方は確信犯とも言える。
ハローワーク側も薄々は気付いているが、見て見ぬふりをしている様な状況。
以前利用していた時、そう思われる企業の求人を度々見かけた。
以前あまりにも悪質な為、私自身職員に対し指摘した事もあるが、その時の職員が述べた言葉は、
「それは管轄が違う」
だった。
俗に言う、「縦割り行政・役人得意のたらい回し」。
責任転換・自己保身ともいえよう。
職員の話では、労働基準監督署の管轄だと云われた。
因みに労働基準監督署に相談した処、此方でも又、あやふやな返事でもみ消されてしまった。
要するに「たらい回し」。
役人と言うものは庶民が相談に行けば、相談に乗る振りをして、暫し別の部署にたらい回しをする。
まさに典型的。
昔の映画、黒澤明監督の作品「生きる」に近い。
どうやら役人気質は、昔から変わらないと見える。
おまけに大騒ぎになった事を上手く利用し、これ幸いと自分達の省庁の利権拡大に奔走する。
大概は所轄省庁の利権拡大、予算獲得に利用されるのみ。
年金などは典型。省庁みずからの不祥事でありながら、その不祥事の修正の為、また国民の税金を遣う。
決して身を削る事などしない。
いつも思うが、政府が関与した雇用・経済政策など殆ど成功していない。
企業に例えれば、「JDI、ダイエー、ルネサス」など全滅に近い。
国の予算を垂れ流しているに過ぎない。失政以外の何物でもない。
結果として今回の雇用方針も、おそらく失敗するだろう。
初めに述べたが、遅きに期した。
どの企業も、今回の対象となっている年齢層にポッカリ穴が空き、真空状態となっている。
この世代が年金問題、少子化問題の原因になったとも言える。
この世代が20代の頃、就職が安定、家庭を持ち、子供を2人を持てば、少子化は粗解消されていた。
年金の際にも述べたが、この問題は既に、1990年代に認知されていた。
認知されていたが、政府を始め、官僚が有効な対策を打たなかった。20年遅い。
失われた世代・見捨てられた世代
人間は生きている限り、必ず歳をとる。歳をとりながら年齢相応に、しなければならない人生の通過儀礼が山ほどある。
しなければならない事をせず、歳をとってしまえば、取り返しがつかない。
時間は戻って来ないと言う事。
自分が同世代で、この様な境遇だからこそハッキリ言える。
今回の物事の本質が見えてくると言えようか。
結局、日本全体が衰退にむかっていると云う事。
皆分かっているが、あまりにも怖くて誰も言い出せない、あの状況に似ている。
今回の政策も、おそらく失敗するだろう。
失敗して又年月が経てば、対象世代は60近い年齢となる。
何もキャリアがなく老後を迎えた時、多くの老後難民が発生するのが想像される。
今後は、無事老後に辿りつくのも難しいかもしれない。
つい最近世間を騒がせた2つの大きな事件があった。
「川崎市の通り魔事件」、「元農水次官の息子殺傷事件」。
犯人と殺された息子の年齢は、51歳と44歳。いずれも引きこもり、ニートに近い存在だった。
まさに問題の世代と言える。
二つの事件を振り返れば、如何に問題の奥が深いと言える。
隠れ引きこもり、ニートを入れれば、更に増えると予想される。
この事件も「失われた世代」の副産物だろう。
今後、益々このような事件が増えるのではないかと予測される。
しかし問題が深すぎ、政府が小手先の政策をしても所詮、不可能に近い。
嘗て戦国の世が終わり、徳川治世を迎えた。世の中は平和になった。
しかし戦乱がなくなった事で多くの兵士が失職。
更に徳川幕府の厳しい統制・改易などで多くの浪人が世に溢れた。
浪人は増えたが、幕府は全く有効な手をうたず、世の中には益々浪人が溢れた。
世の中の政情不安を利用。
1651(慶安4)年、由井正雪が乱を起こそうとした。
徳川治世末期、幕府は厳しい庶民の統制を布き、庶民は食えなくなり、とうとう不満が爆発。「一揆・打ちこわし」が多発した。
人間食えなくなれば、最後は爆発する。
現代も庶民の生活が益々苦しくなり、生活ができなくなれば、庶民はこぞって爆発する。
流石に昔のような暴力的手段ではないかもしれないが。
そうならない為に政府・官僚は、小手先だけの政策で済ませる事は止めた方が良い。
失われた20年ではなく今度は、失われた30年に突入する可能性があるだろう。
賛否両論いろいろあるが、いまこそ令和時代に戦国の世の「織田信長」のような既成観念・既得権益を打ち壊す人間が必要かもしれない。
(文中敬称略)
追記令和2年8月11日付
この記事を書き、一年以上が過ぎ去った。
一年たった現在、この話題はすっかり雲散霧消した。
何故なら今年に入り、今でも話題となる新型コロナウイルス騒動。
ウイルスの影響で経済は完全に停滞。
就職氷河期世代を救うどころか、来年の新卒が就職難となりかねない状況となった。
時代は再び廻る。
去年まで救おうとしていた世代は此れで、完全に見捨てられたと云っても過言でない。
将来を考えれば、滅びゆく世代よりも、此れからの世代をすくことがまだ世の中の為になるから。
そう考えれば、繰り返すが死ぬまで運に恵まれない、損した世代と云えるだろう。
世間は無常である。