再びニューヨークで活躍 ブルース・ウィルス主演『ダイ・ハード3』

★ブルース・ウィルス主演映画、第三弾

 

・題名       『ダイ・ハード3』

・監督       ジョン・マクティアナン  

・配給       20世紀フォックス  1995年 米国

・脚本       ジョナサン・ヘンズリー

・製作       ジョン・マクティアナン、マイケル・タッドロス

・編集       ジョン・ライト

・音楽       マイケル・ケイメン

 

出演者

 

◆ジョン・マクレーン  :ブルース・ウィルス

ニューヨーク市警刑事。前回は妻の仕事の関係でロス市警だったが、再びニューヨーク市警に舞い戻ってきた。

妻とは別居中で、そのせいか今は生活が荒れていて、停職中。今回も酒浸りで二日酔いの処を、無理やり引きずり出された。

テロ犯サイモンの命令で、黒人ハーレム街で差別用語を書いたプラカードを持ち立ち尽くす。

なぶり殺しにされる寸前、ハーレムで電気屋を営むゼウスに助けられ、以後行動を共にする。

 

◆ゼウス・カーバー   :サミエル・L・ジャクソン

サイモンの命令でハーレムに迷い込んできた、マクレーンを事の成り行きで助けてしまう。

その事がサイモンの怒りを買い、以後マクレーンと供にサイモンの命令ゲームに付き合わされる羽目となる。

 

◆サイモン・P・グルーバ  :ジェレミー・アイアンズ

冷徹な爆弾テロのリーダー。

個人的にマクレーンに恨みを持ち、マクレーンを自分が命令するゲームに参加させるが、サイモンの本来の目的は別にあった。

 

◆カティア・タルゴ   :サム・フィリップス

爆弾テロ集団の一味で、爆弾作り専門。マシアス・タルゴの妻。

夫婦でフリーランスのテロリスト。残忍な性格は夫に勝るとも、劣らない。冷血な殺人者。

 

尚、本人は喉を斬られ、声が出ない設定となっている。

初めに登場した際、喉元に傷があるのは、その為。

 

◆マシアス・タルゴ   :ニック・ワイマン

ハンガリー出身のフリーのテロリスト。

妻のマシアスと供にサイモンに従い、爆弾テログループに加わる。

しかし爆弾テロは表向きで、狙いは他にあった。

 

◆アーサー・コッブ警部 :ラリー・ブリッグマン

ニューヨーク市警のマクレーンの上司。しばしマクレーンを毛嫌いする。

サイモンに裏交渉を持ち掛けるが、あっさり断られる。

事件が進むにつれ、マクレーンのやり方を認め、最後は協力し合う。

 

◆コワルスキー・コニー :コリーン・キャンプ

ニューヨーク市警の女性刑事。マクレーンの同僚。しばしば短気な処を見せる。

名前から推測するに、ロシア系移民の子孫であろうか。

 

◆ジャック・ランバート :グラハム・グリーン

ニューヨーク市警の刑事。コニーと同じくマクレーンの同僚。殆ど表情を変えず、着実に仕事を熟す。

しかし、コッブ警部がジョンの居場所を尋ねた時、冗談紛いに「少なくとも教会にはいませんね」と答える意外性もある。

 

◆リッキー・ウォルシュ :アンソニー・ペック

ニューヨーク市警の刑事。コニー、ランバート同様、マクレーンの同僚。

ニューヨーク市の役人に扮したサイモンの一味に殺害される。

 

◆チャーリー・ワイス   :ケビン・チャンバーリン

ニューヨーク市警に爆弾処理班に勤める、陽気な性格の持ち主。

正義感もあり、小学校に仕掛かられたと思われた爆弾に、最後まで立ち向かう。

 

◆パークス        :ジョー・ザルーム

マクレーンが追跡した際、テロ集団の一味と間違われた鉄屑運搬トラックの運転手。

見かけによらず、知的な面がある。マクレーンが呟いた疑問に、サラッと答える処が渋い。

名も無き、無名の戦士と云った処だろうか。

 

あらすじ

 

ニューヨーク中心地のデパートにて白昼、爆破事件が発生。犯人と思われる人物がニューヨーク市警に電話をかけてきた。

電話をかけてきた男は、サイモンと名乗り、ジョン・マクレーン刑事を指名。自分が命令するゲームに参加を求めてきた。

 

もし断った場合、無差別に爆弾テロを起こすと脅迫して。

ジョンはホーリーと別居中。その事が原因で心を病んでおり、酒におぼれ廃人寸前。

おまけに停職中だった。

 

ジョンはウォルター警部から二日酔いの処を叩き起こされ、無理やり黒人街のハーレムに黒人差別の言葉を書いた看板をもって立つ事を命じられた。

 

当然ジョンはハーレムで黒人たちに絡まれ、殺される寸前に陥る。

ジョンの様子をみていたゼウスは、咄嗟にマクレーンを助けてしまう。

ゼウスは様子を見ていたサイモンから反感を買い、其の後マクレーンと行動を共にする事を余儀なくされる。

 

サイモンの命令により二人は、ニューヨークの市内を彼方こちらに振り回される。

振り回された結果、サイモンの命令に間に合わず、ニューヨークのウォール街の地下鉄構内を爆破されてしまう。

 

地下鉄構内が爆破された後、サイモンは「更にどでかい爆弾をニューヨークの或る小学校に仕掛けた」と、予告した。

ニューヨーク市警は躍起になり、何処かの小学校に仕掛けられた爆弾を探し始める。

爆弾を探し始めたのは良いが、なかなか見つからない。

 

サイモンと名乗るテロ集団は、実は小学校爆破が本来の目的ではなく、本当の目的は全く別にあった。

その全く別の目的とは。

 

見所

 

過去のシリーズとは異なり、クリスマス・イブに事件が起きるのではなく、白昼堂々と事件が発生する。舞台は再び、ニューヨーク。

前回から推測するに、空港テロ事件でマクレーンはロス市警であったが、再びニューヨーク市警の設定。

 

サイモンに命令され、ジョンは黒人ハーレムに立たされる。

ジョンがコッブ警部と同僚に駆り出され、警察のバンで運ばれるシーンがあるが、その時の会話が面白い。

 

会話の内容は、ナンバーズの番号。

当選番号を全員が知っていたのは、全員が籤を買っていたと言う事。

因みに当選番号は、「4667」。

 

会話中で自分の市警のバッジナンバーを賭けているという同僚(リッキー)がいたが、此れは後の伏線ともなっている。

リッキーの番号は、「6991」。

 

ジョンがハハーレムに降ろされ、プラカードも持って歩いている時、一番初めに逢う黒人女性の表情が面白い。

これから起こる騒動を、見事に表現している。

 

デウスとラジカセを持ち込んだ甥っ子達との会話が、興味深い。

何気にアメリカ社会の世相を表している。黒人と白人の対立意識とでも云うのだろうか。

 

テロリストの電話の主は「サイモン」と名乗り、マクレーンを助けたゼウスを「ソマリア人」と呼んでいるが、何気に或る意味を含んでいる。

 

サイモンは、ユダヤ系移民によくある名前。

ソマリアは、古代北イスラエルの都市であったが、アッシリアに征服され、強制移民させられた。

ソマリア人とは、強制移民をさせられた人を意味する。

つまり米国のアフリカ人の強制移民の象徴の言葉として(奴隷売買で移民させられた)、使われている。

 

日本語訳では、流石に問題ありと思われたのか、かなり意訳がされている。

日本語を見ただけでは、おそらく理解不能かもしれない。

私自身、初めて英語だけを聞いた時、全く理解できなかったが、後になり深い意味が込められている事が分かった。

 

劇中の細かい演出だが、映画を製作した年は、西暦1994年であろうか。

この年、サッカーWCアメリカ大会が開催された。アメリカは、然程サッカーは強くない。

サッカー人口は多いが、決して強豪とは言えない。日本とどっこい、どっこいだろうか。

 

何故サッカーの説明をしたのかと云えば、ジョンとゼウスがハレムを脱出する際、乗車したイエローキャブのリアシートの上に、さりげなくサッカーボールが置いてあるのが分かる。

おそらく宣伝効果を狙ったものと思われる。

 

此れは映画ではよく使われる手法。

同じ時期の1994年作:『スピード』という映画がヒットしたが、あれも同じ手法が使われた。

主人公のキアヌー・リーブスが左手に嵌めていた時計は、日本製カシオの「Gショック」だった。

映画のヒットで、時計も爆発的に売れた。

 

ジョンが地下鉄に仕掛けられた爆弾を処理する為、地下鉄を追跡するシーンがあるが、二人がイエローキャブで、ニューヨーク市内のセントラル・パークを突っきるシーンが豪快。

よく撮影許可が下りたと思う。

 

日本に例えるならば、東京の日比谷公園であろうか。

日本であれば、絶対撮影許可が下りないと思われる。

 

因みによく見れば、イエローキャブが公園から出た時、車のタイヤが脱輪しているのが分かる。

次のシーンでは、車は正常に動いていたが。

おそらく撮り直しが利かなかったものと思われる。

因みに、セントラル・パークを抜けた時の所要時間は、たったの3分。

 

参考までに

「90ブロックを、30分で行け」とのサイモンの指令だが、米国では1ブロックは、約100メートル四方の一区画の事。

 

つまり90×100=9000メートル:約9キロメートル。

ニューヨークのど真ん中を30分以内で行けと云うのは、不可能に近い。

 

マクレーンとゼウスが居た公衆電話は、地下鉄72番のブロードウェイ(アッパー・ウエストサイド)付近。

サイモンが指定した場所は、ウォール街の地下鉄構内のキヨスクの電話。

 

地下鉄72番は、有名なマンション「ダコタ・ハウス」の近く。

ダコタ・ハウスはジョン・レノンが暗殺された場所。音楽学校で有名なジュリアードも近い。

 

目的のウォール・ストリート街は、マンハッタン島のほぼ突端(ロー・マンハッタン)に位置している。

 

ゼウスが地下鉄のキヨスクに到着時、公衆電話は二つ設置されていたが、一つは壊れていた。

電話を譲って貰う為、ゼウスは白人男性に話し掛けた。

 

その時、白人男性はゼウスに向かって

「ブラザー:よう、兄弟」と呼びかけるシーンがある。

 

それに対し、何故ゼウスが激しく怒ったのか。

冒頭のハーレムでのゼウスと甥っ子との会話を見れば、理解できる。

 

ゼウスは白人に対し、かなり偏見を持っているようだ。敵愾心とでもいうのであろうか。

その為、ブラザー(よう、兄弟)と軽く話しかけた白人男性に、腹を立てたと思われる。

 

参考までに、ゼウスが白人警官に拳銃を突き付けられた際、「Duck(あひるの意味)」と叫んだのは、スラングで「屈め、頭を下げろ」と云う意味。

何気に拳銃を突き付けている警官が震えているのが分かる。おそらく経験の浅い警官と思われる。

 

何気に思い出したが、パート1(ダイ・ハード)で、アル・パウエル(ビル占拠事件でパトカーに乗った警官)が「wild goose chase」と呟いたが、言葉の意味は「無駄、無駄足」と云う事。

 

因みにこのスラングは、パート2の冒頭あたりでも登場している。

地下鉄が爆発した際、先程の警官とゼウスに「ブラザー」と呼びかけた白人の狼狽さが愉快。

爆発した地下鉄が駅構から迫ってくるシーンは、アクション映画の醍醐味とも言える。

白人男性も警官も事実が呑み込めず、ゼウスに逃げろと諭されている。

 

爆破後、近くの連邦準備銀行の職員の姿が印象的。

これから起こる悲劇が予測できず、地下鉄爆破がまるで他人事のように感じられ、皆でお菓子を頬張る(ほおばる)姿が笑える。

 

爆発後、マクレーンとゼウスがFBIのアンディ・クロス、CIAのビル・ジャービスに面会。

テロ集団のほぼ全容が明かされる。

 

この二人は表向きの人物であり、二人の上役は、実は後ろに控え、白髪のサングラスをかけた男と思われる。

諜報界では、よく使われるカバー。

つまり表に出ている人物より、その下の身分と思われる人物が大物である事が多い。

外国大使館でも暫し使われる方法。大使館職員の運転手・庭師等が大物の場合が多い。

 

この時初めて、サイモンとジョンの関係が明かされる。

サイモンはパート1で、ロスビル占拠事件でテロリストのリーダーだった「ハンス・グルーバー」の実兄。

 

此処で、一つの疑問が生じる。何故、弟の名前が「ハンス」なのか。

実はハンスは、ドイツ人によくある名前。

 

一方、兄はサイモン。前述したが、サイモンはユダヤ人によくある名前。

つまり、兄はユダヤ系の名前。弟はドイツ系の名前。

脚本を書いた人間が違うからかもしれないが、何か皮肉を込めたネームミングと云える。

 

パート1から7年程の月日が経っている為、ある程度のズレは仕方がないのかもしれないが。

因みに最後に分かるが、ジョンの妻ホーリーは今回、声の出演のみ。

 

同じく今回、毎度お馴染みの悪名高いジャーナリスト「ウィリアム・アザートン」は出演していない。

最もロスの地元キャスターの為、出演の必要がなかったのかもしれない。

 

因みに今回リッキー役で出演している刑事は、パート1のロスのビル占拠事件では、ロスの警官役として出演している。

 

登場する場面は、ジョンにナカトミビルからパトカーを銃撃され、バックで事故を起こしたアル・パウエルがジョンと無線で交信する時。

アルの流れ出てた額の血をタオルで拭う警官が、今回のリッキー役の「アンソニー・ペック」。

 

サイモンが云う事には、ニューヨークにある小学校の一つに爆弾を仕掛けたとの事。

尚、起爆装置が警察無線の周波数に反応するようにセットされている為、警察無線は使うなとの命令。

 

トンプキンス公園広場での爆弾解除方法は、しばしクイズ、私立有名小学校、入社試験などでもよく扱われる問題。

詳細を述べれば、3ガロンの容器と5ガロンの容器があるが、何とかして4ガロンの水を作れとの問い。

 

やり方を説明すれば、

①先ず5ガロンの容器に、水を満杯にする。

②満杯にした水を3ガロンの容器に移す。すると、5ガロン容器の中に、2ガロンの水が残る。

③3ガロン容器の水を、全て捨てる。

④5ガロンに残っていた、2ガロンの水を、3ガロンの容器に入れる。3ガロンの容器には、1ガロン入る、余裕(スペース)が生まれる。

⑤再び5ガロン容器に、水を満杯にする。

3ガロン容器には、1ガロン入る余裕がある為、5ガロン容器から、1ガロンの水を流し込めば、5ガロン容器には、4ガロンの水が残るという仕組み。

 

参考:トンプキンス・スクエア
トンプキンス・スクエアとは、マンハッタン区イースト・ビレッジ(アルファベット・シティ)地区の中心に位置している 広場の事

 

地下鉄爆破事件が起きた場所は、世界一の金融街「ウォール街」がある地区。

映画が進行するにつれ、初めはジョンを巻き込んだ、只の復讐劇かと思われた。

しかし復讐はカモフラージュであり、この場所で爆発した事に意味があるのが後に判明する。

 

地下鉄近くの「連邦制度準備銀行」の職員・警備員が何気に抜けている。

警備員の一人がテロリスト集団が履いている靴に注目したが、時既に遅しの感。

何故ならセキュリティーシステムを破壊する目的で、テロ集団は態々銀行近くの地下鉄を爆破した為。

 

尚、連邦準備制度理事会とは日本に例えれば、日本銀行。

劇中では、地下金庫に世界各国政府の金塊が眠っている設定。

 

つまりテロ集団はジョンへの個人的復讐に見せかけ、銀行の地下金庫の金塊強奪が目的だった。

金塊の運搬の為、予め土建屋からトラック14台を盗んでいた。

ジョンが黒人街のハーレルに運ばれるバンの中で、伏線として述べられている。

 

しかし商売の名目で連邦準備銀行を訪れた集団の面子をみれば、ビジネスを目的として銀行を訪れた集団とは思えない。

あまりにも悪人面をしている。

 

伏線としてゼウスがジョンと助け、警察署でサイモンとの会話中、コッブ警部がサイモンに裏取引を持ち掛けるシーンがある。

その時、サイモンがフォート・ノックスの金塊を積まれても、取引をしないと言っていた。此れも伏線となっていた。

 

因みにフォート・ノックスの金塊とは、米国陸軍フォート・ノックス基地に保管されていると云われている、金塊の事。

 

尚、サイモンが銀行の地下で呟いたセリフに

「此処にある金塊はフォート・ノックスの10倍以上、フォートート・ノックスは観賞用さ」がある。

意味は、あまりにも銀行の金塊が多いのを捩ったものであろう。

 

ジョンがサイモンの狙いに気付き、一味が待ち受ける銀行を訪ねた。

ジョンが警備の連中が相手一味であると悟ったのは、一味がナンバーズの当選番号(4667)を知らなかった為。

さらにリッキーの市警番号のバッジ(6991)を、一味の一人が付けていた為。

 

ジョンとゼウスが盗んだ車は性能が悪い為、新たにベンツを盗んだには笑える。

その時、デウスが金塊を前の車に置き忘れたのも愉快。

 

その時車と一緒に失敬したのが、携帯電話。

この時点で(1994年当時)で既に、小型の携帯電話が登場していたのは驚き。

 

サイモンの謎かけで、21と云う数字が問題となるが、21はつまり42の半分。

42とは、アメリカの歴代大統領の数字。

 

1994年、当時のアメリカ大統領は「ビル・クリントン」だった。

クリントンは42代目の大統領。

 

オープンカーに乗った女性が、ジョンたちの乗った車を追い越した際、「ヒラリー・クリントン」になったつもりかと叫んだ時、21の謎が解けた。

つまりサイモンが意味する21は、21代目のアメリカ大統領の事だった。

 

21代目、アメリカ大統領の名前は「チェスター・A・アーサー」。

ジョンもゼウスも問題の解き方が分かっても、答えは分からなかった。

 

ゼウスの甥っ子達が通う小学校は、偶然にもチェスター・A・アーサー小学校だった。

後に甥っ子たちは勘違いして校内に残り、閉じ込められてしまう。

 

ジョンに答えを教えたのは、ジョンがテロの一味と勘違いして捕まえた運転手のパークス。

パークスは只のトラック運転手だが、ジョンにに大きな貢献をする。

ジョンに地下トンネルの存在を教えたのもパークス。

 

警察無線が使えない為、パークスはジョンに頼まれウォルター警部に爆弾が仕掛けられたと思われる小学校の名を教えにいく。

勿論、小学校の名前は、21代大統領の名にあやかった「チェスター・A・アーサー」小学校。

 

テロリストのダンプが向かった先は、キャッツキル山地に連なる地下のダム(コッファーダム)の入り口。

犯人達は人目を避け、地下トンネルで移動した。

 

キャッツキル山地はニューヨーク州の水源。水源の為のダムとも言える。

一味のタルゴがダムを爆破して、ジョンを溺れさせようとした。

 

劇中では、爆破した事になっているが、実際は行われていない。

爆破後、押し寄せる鉄砲水が何気に不気味。

 

ジョンとゼウスが敵に追いかけられた時、車のヒューズを抜いたのは、車のアンチロック・ブレーキ(ABS)が作動しないようにする為。

 

参考:ABS
自動車が急ブレーキをかけたとき、ロックを起こした車輪のブレーキの油圧を機械的ないしは電子的に調節し、安全に止まれるようにした装置の事

 

ジョンとゼウスが船に乗り込んだのは、まさに奇跡。普通ではありえない。

その際、車のワイヤーで敵の一人が真っ二つになったのも、映画ならではの映像。

 

船に乗り込んだ際、ゼウスは銃の知識がない事が判明。

しかし銃の知識はないが、敵に捕まって手錠をかけられた時、ジョンが用意したピンで手錠を開けてしまう処が凄い。

そういえば車を盗んだ時も、車のキーがなくてもナイフでエンジンをかけていた事を考えれば、銃以外は相当な裏知識に長けていると見える。

 

因みに小学校に仕掛かけられたと思われた爆弾はダミーで、囮。

只の爆弾に見せかけたシロップだった。船に積まれたと思われた金塊も、只の鉄屑。

金塊を海に沈ませたと思わせる、サイモンの芝居。

サイモンが船を沈める前、沿岸警備隊に政治声明らしきものを発令するが、此れも政治犯に見せかけた偽装。

 

此れはパート1でのサイモンの弟ハンスと同じ。やはり似たもの兄弟という処だろうか。

ハンスも政治犯を装い乍、実はナカトミビルに蓄えられた米国債の強奪が目的だった。

 

船が爆破されても生き残るのは、流石に映画。

ジョンとゼウスが救助された後、ジョンはランバートから貰った25セントで妻コリーにコレクトコールをする。

 

今回のコリーの出番は、実は此処の声のみ。

電話中、サイモンから貰ったアスピリンの底に書かれた文字で、金塊とテロ集団の居場所が分かる。

 

ジョンとサイモンの最後の対決で、囮となったジョンが敵のヘリを電線の下に誘い込んだ後、サイモンに呟いた言葉が粋。

 

「弟によろしくな」

 

ジョンは、看板の留め金を銃で撃つ。看板の留め金がヘリを襲う。

避けようとしたヘリは電柱に激突。そのまま墜落、炎上する。

サイモン、カティア・タルゴ(女)は丸焦げとなる。

 

かくして事件は、一件落着。最後にジョンが、パート1からのシリーズを通じて登場するスラング

「ざまぁ、みろ」を呟く。

そして再びゼウスからコレクト用の25セントを受取り、終了する。

 

しかしこの様に一つ一つを眺めてみれば、全く息つく暇もない程、各場面に意味を込められている事が理解できる。

 

追記

 

劇中にて、今はなきワールド・トレードセンター(WTC)が一瞬、映し出される。

2001年9月11日に発生した、アメリカ同時多発テロが思い起こされる。

おそらく地上波では二度と放送されないか、仮令されてもその部分はカットされると思われる。

 

リッキー刑事が市の建設課に偽装したテロリストを爆発現場に誘導する際、ワールド・トレードセンター以上の被害と述べているセリフも今となっては、皮肉とも思える。

実際WTCは、1993年2月26日、テロが発生していた。

 

劇中ではゼウスはあまりお目にかかった事のない建物(WTC)だったのか、思わず見とれ脇見運転しているのが分かる。

脇見運転でタクシーがコンボイに衝突しそうになり、停止した際、普通のキャビと思い乗客が乗り込んでくるのが、何気に笑える。

その客もゼウスがあまりにも乱暴な運転の為、目的地に着いた時は恐怖のあまり、微動だにできなかった。

 

マクレーンが地下鉄内から爆弾を投げる際、右手に映っていたポスターは(水中眼鏡をかけた人間の絵。映画撮影は、1994年頃と思われる)、日本の東京の電車内でも貼られていた。

偶然にも発見した。実際私も見た記憶がある。

 

映画自体は、テロ(2001年)が起こる6年前に公開されたもの。

まさか影も形もなくなるとは、思いもしなかった。

今思えば、地下鉄爆破事件だったが、6年後の事件を何か予知したものだったのかもしれない。

 

劇中で女テロリストが登場する際に流れる『ジョニーが凱旋する時』の曲が、何気に劇中のシーンにマッチしている。

なかなか上手い演出だと思う。

 

サイモン・ピーター・グルーバー、タルゴ夫妻が何故、東欧出身の設定なのか。

その疑問を考えた後、一つの答えが浮かんだ。

 

1989年に東西ベルリンの壁が崩壊。東欧諸国が雪崩を打つが如く、社会主義国家が崩壊した。

東欧諸国が崩壊したのは、此れらの社会主義国家の大元、ソ連崩壊が原因だった。

親亀がこけ、子亀がこけたと言える。

 

1985年ソ連では、ペレストロイカ政策を掲げたゴルバチョフ政権が誕生した。

ゴルバチョフ書記長はあらゆる改革を実行。

皮肉にもゴルバチョフの改革は、第二次大戦以後続いていた冷戦構造を終わらせる結果となった。

 

1991年、東西分裂していたドイツは再統一。更に同年、ソ連が崩壊した。

その結果として多くのエリート政府職員(秘密警察、軍関係者、諜報員)が失職した。

 

その様な歴史的背景を踏まえてテロリスト集団を見れば、嘗ては国の要職にいたが国が崩壊。

あぶれてしまった連中と言える。「はぐれ者の軍隊」と言える。

その証拠に一度は金塊を強奪、悦に浸っていたテロリスト集団のリーダーが演説中で、

 

「昨日までは国を持たない軍隊であったが、明日からは何でも買える」
と述べていたのは、その為。

 

つまり一瞬であるが金塊をせしめた事で、明日からはどんな国でも言いなりだ、という意味を含んでいる。

 

第二次大戦後、多くのナチ党員・研究者などがソ連、その他の国に匿われ、後にその国に貢献したと同じ。

東欧諸国の嘗てのエリート集団も国が崩壊後、各国に使い捨てとして雇われた事実が存在する。

今回のテロ集団も、その様な時代背景が垣間見えた。

 

(文中敬称略)

 

パート1:当時のアクション映画の常識を覆した作品『ダイ・ハード/DIE HARD』

パート2:世界一ついてない男、一年後のクリスマスで再び『ダイ・ハード2』