世界一ついてない男、一年後のクリスマスで再び『ダイ・ハード2』
★アクション映画の名作、ブルース・ウィルス主演
・題名 『ダイ・ハード2』
・公開 1990年米国
・配給 20世紀フォックス
・監督 レニー・ハーリン
・脚本 ダグ・リチャードソン、スティーヴン・E・デ・スーザ
・製作 ローレンス・ゴードン、ジョエル・シルバー、チャールズ・ゴードン
・原作 ウォルター・ウェイジャー『ケネディ空港/着陸不能』
目次
出演者
◆ジョン・マクレーン :ブルース・ウィリス (ロス市警の刑事)
◆カーマイン・ロレンゾ :デニス・フランツ (空港警察署長)
◆トルドー :フレッド・トンプソン (管制塔最高責任者)
◆レスリー・バーンズ :アート・エバンス (管制塔技師)
◆マービン :トム・バウアー (管制塔地下管理者)
◆ビトー・ロレンゾ :ロバート・コスタンゾ (ロレンゾの弟)
◆グラント :ジョン・エイモス (テロ対策部隊の隊長)
◆テルフォード :パット・オニール (事件前日に入隊した通信兵)
◆ホリー・マクレーン :ボニー・ベデリア (マクレーンの妻)
◆リチャード・ソーンバーグ :ウィリアム・アザートン (悪徳TVレポーター)
◆スチュアート :ウィリアム・サドラー (テロリストリーダー)
◆ラモン・エスペランザ :フランコ・ネロ (南米某国麻薬王)
◆ガーバー :ドン・ハーヴェイ (テロリストの一味)
◆アル・パウエル :レジナルド・べルジョンソン (ロスの市警警官)
◆サマンサ・コールマン :シーラ・マッカーシー (TVレポーター)
あらすじ
「世界一、ついていない男」、ジョン・マクレーン。
一年前のクリスマス・イブの日、妻ホリーが勤める日系企業ナカトミ、ロス支社のビル占拠事件に巻き込まれた。
事件はジョンの活躍で、無事解決。その時から既に、一年が経過していた。
そして一年後のクリスマス・イブの日、ジョンは再び事件に巻き込まれた。
今度は空港が舞台。偶然妻を迎えに来た空港で事件が発生する。
ジョンは前回同様、否応なく事件に巻き込まれる。
空港の管制塔システムが何者かに乗っ取られ、テロリストにより飛行機が墜落させられる。
テロリストの目的は、米国に護送される或る南米の独裁者、反共産主義の麻薬王(将軍)を奪還する事。
将軍を奪還する為、テロリスト一味は空港のシステムを占拠した。
空港システムはテロリストに占拠されたが、ジョンの飛び入り参加で、テロリストたちはしばしジョンに計画を邪魔される。
邪魔はされるが、テロリスト達は計画を遂行。
対テロリスト部隊として政府から派遣された陸軍特殊部隊すら、事前に示し合わせた仲間同士だった。
しかし両グループは、他者に分からないよう密かに協力し合う。
最後にテロリスト達は、ジャンボ(ボーイング)で国外逃亡を試みる。
計画は達成されたかに見えたが、ジョンの或る工作で、飛行機もろとも吹っ飛ばされ全員死亡する。
テロリストを片付けた後、ジョンは晴れて妻ホリーと無事再会。映画はそこで幕を閉じる。
見所
ジョンがたまたま空港内の喫茶で、怪しい動きをする人物を発見。
追跡後、不審者と判明する。ジョンは空港施設内で、不審者一名を射殺する。
射殺後、ジョンと空港署長の「ロレンゾ」とは案の定、そりが合わない。
ロレンゾの言行はまるで、典型的な役所仕事・官僚主義とでも言えばよいのか。
兎に角、頭が固い。毎度お馴染みのパターン。
シリーズを通して言えるが、ダイ・ハードはその点を何時も皮肉っている。
劇中、度々登場するジョンとロレンゾ、そして後から登場する特殊部隊の隊長「グラント」も全く同じ。
ジョンがポケベルを使っている処が、何か時代を感じさせる。
更にジョンがアナログ的人間と思わせる言動が、度々見られる。
射殺死体の指紋照合を前回登場した(ビル占拠事件)アル・パウエルに頼む際、アルにFAXを使う事に驚かれている。
何気にサラッと流されているが、背景には複雑な事情が絡んでいる。
今回登場する南米の某国の将軍(エスペランザ)は、麻薬密売容疑として米国に護送されている。
しかし以前米国は、南米某国の共産主義者撲滅の際、エスペランザ将軍を利用していた。
将軍が米国の意向で共産主義者取締りを実施する代わりに、米国は将軍の麻薬密売を黙認していた。
しかし米国は目的達成後、今度は米国に麻薬密売をする将軍が邪魔になった。
南米某国政府を通じ、今後は将軍を独裁者・虐殺者として逮捕させた。劇中では逮捕後、米国に護送する設定。
今回のテロリスト集団は嘗て米国軍人であったが、問題があり罷免された元特殊部隊軍人の集まり。
将軍を支持する勢力から金で雇われ、将軍を救出するのが目的の傭兵部隊。
ジョンが管制塔に無断で侵入したTVレポーター「サマンサ・コールマン」と供に追われる場面がある。
無理やりエレベーターに乗せられた時、エレベーターの屋根から脱出は、パート1でもお馴染み。
尚、ジョンとコールマンがエレベーターに無理やり押し込められた時、ロレンゾが階下にいる部下に、二人を拘束するよう命令する。
その際しくじれば「pink slip」を送る事になると部下を脅しているが、「pink slip」とは米国では、解雇通知の事。
ジョンが敵の無線機を手に入れたが、スクランブルの解除法が分からない。
後にマービン(地下管理人)が、あっさりスクランブルを解除していたのが驚き。
空港技師のバーンズでも、無理と言わしめていた代物だった。
因みに無線機は、此の時代の他の映画でもありがちな、日本製「ケンウッド」。
ジョンが空港で使ったFAXは、今はなき「三洋」。当時日本は貿易面で、アメリカ経済を席捲していた。
パート1のビル占拠事件で、妻ホーリーが勤めている会社は「ナカトミ:中富」。
中富と云うのも、何気に皮肉っているのが分かる。大富ではなく、中富の為。
つまり最近、金持ちになった国と揶揄している。
劇中でのナカトミのロス支社代表は、「ヨシノブ・タカギ」。
タカギ役を務めた俳優は「ジェームス・シゲタ」氏で、ハワイ生まれの日系人。
「ヨシノブ」と云うネーミングもおそらく「慶喜」、つまり最後の将軍「徳川慶喜」を捩ったのではないかと推測される。
製作に加わっている「ジョエル・シルバー」は、『リーサル・ウェポン』にも関わっている為、似たような設定が採用された。
空港で射殺された犯人(カクラン)も、持っていた銃はドイツ製。
パート1でも述べたが、此れは決して日本に限らず、テロ集団にも当て嵌まる。
テロ集団は、西ドイツ出身の設定だった。
1970年代に作られた『ダーティ・ハリー』でも既に見られた手法。
ハリーが西ドイツ製の車(ワーゲン)にぶつかるシーンがあった。
尚、パート1で登場した主犯の出身国が、そのまま「パート3」に繋がっている。
参考までにその国は、旧東ドイツ。
劇中の大きな見所は、テロリスト達に偽の着陸誘導をさせられ、飛行機が炎上するシーンであろうか。
公開時、かなりのインパクトだった。
事件が進行するにつれ、空港技師のバーンズはトレド―・ロレンゾ(空港警察署長)より、ジョンが有能と気づき、次第にジョンに協力し始める。
心の変化が何気に見て取れる。今回の影の主役は、地下管理者のマービンと技師のバーンズかもしれない。
パート1同様、劇中にてTVレポーター役の「リチャード・ソーンバーグ」が相変わらずの屑ぶりを発揮している。
飛行機からずり落ちたジョンが、ライターに火を点け燃料に点火する際、「パート1」と同様のスラングを発する。
セリフは何気に、「パート1」を踏襲したもの。テロリストの飛行機が爆破するシーンも見所の一つ。
テロリスト集団の飛行機(ボーイング747)が爆破。
引火した燃料の火が、着地の目安となるランディング・ライトの替わりとなり、上空で旋回していた飛行機が次々に舞い降りてくるシーンはまさに爽快、且つ圧巻。
さり気ない感動も与えてくれる。
TVレポーター「サマンサ」のささやかな心遣いも何気に粋。
一介の地下管理人「マービン」も映画を通し、色々ジョンの手助けをしてくれる。
何気に大きな役割を果たしている。
最後にロレンゾが登場。ロレンゾが、ジョンが冒頭で犯した駐車違反の切符を破り捨てる。
今迄、互いに天敵だったジョンとロレンゾが和解した瞬間。
パート1でも登場したエンディング『Let it snow』が軽快に流れ、映画は終了する。
追記
小説の原作では、舞台が「JFK国際空港」であるが、実際の舞台は「ダレス・国際空港」となっている。
進行上あまり関係ないが、パート1ではニューヨーク市警だったが、パート2ではジョンがのホリーの仕事に付き合い、ロス市警に転勤した設定。
冒頭の駐車違反をして、ジョンが切符を切られた際の会話中にて判明。
しかし劇中ではロスではなく、クリスマス休暇で家族と過ごす為、ニューヨークにいる設定。
何気にややこしい。
以上を基に推測すれば、ニューヨークのホリーの母親(ジョンにとり義理の母)の許に、ジョンと子供が先に着き、後からやってきたホリーをジョンが迎える為、空港にやってきた模様。
ジョンが空港で射殺した男が持っていた銃(グロッグ:ドイツ製)の説明をしているが、詳しくは誤り。
グロッグは、空港のX線探知機に反応する。
「パート1」で登場したジョンに協力的だったアル・パウエルは、ジョンが空港で射殺死体の指紋を照合をする際、僅かばかりだが登場している。
因みにジョンがFAXを借りた際、空港職員の職員がさりがなく、ジョンを誘うのが面白い。
ジョンも嫌味がなく、さらっと流している処が如何にも外国人らしい。
「パート1~3」のシリーズを通して必ず劇中で、名も無き一介のアフリカ系アメリカ人がジョンに対し、協力してくれる。
今回は、空港技師「レスリー・バーンズ」が該当。勿論、今回は味方にもなったが、敵にもなったのは承知の如く。
飛行機でホリーと一緒になったTVレポーター役「リチャード・ソーンバーグ」は、偶々外国の飛行機でありがちなオーバー・ブッキングでないかと思われる。
しかし劇中では、過去のTV番組の内容が航空会社の意にそぐわず、客室乗務員から嫌がらせをされたのかもしれない。
その証拠に仮令オーバー・ブッキングであっても、スタッフの一人はファーストクラスにいて、彼のみエコノミーに移された。
当時の映画宣伝では「パート1」の触れ込みと同様、「パート2」も「世界一、ついていない男」と云うフレーズが使われていた。
特殊部隊隊長グラント「ジョン・エイモス」は、1988年作:『星の王子ニューヨークへ行く』でエディ・マーフィーのシンデレラ役の父親を演じている。
ジョンと空港で撃ち合い、逃げたミラー「ボンディ・カーティス」は、1996年作:『ブロークン・アロー』で放射線処理隊の「サム・ローズ隊長」として出演している。
新管制塔で待ち伏せしていたオライリー(エスカレーターを止めた人物)、「ロバート・パトリック」は、1991年作:『ターミネーター2』でアーノルド・シュワルツェネッガーを苦しめた、「Tー1000」を演じている。
管制塔の責任者トルドーを演じた「フレッド・トンプソン」は、後にテネシー州の共和党上院議員を務めた。以前は弁護士も務めていたほどのインテリ。
映画が公開された当時、アウトマーカーを使い飛行機と会話するのが、画期的に思われた。
しかし冷静に考えれば、ホリーがマクレーンに連絡を取る際、機内電話を利用していた筈。
同様に機内電話を利用すれば、いち早く機内に連絡が取れたと思うが。
しかしそれは映画の進行上、敢えて無視した方が良いかもしれない。
更にジョンが新管制塔で銃撃戦の際、最後の敵をジョンが拾い上げた銃で射殺するが、何故相手はエスカレーターを走り、ジョンに近づこうとしたのか不思議。
そのままマシンガンでジョンを撃てば良かったと思うが。
近年しばし政治で使われるマニフェストという事が使われるが、劇中では「乗客名簿」と云う意味で使われている。
ジョンがエスペランザ将軍を捕えようとした時、スチュワート元大佐が乗り込んでくる。
その時、英語の字幕では2ヶ月かかって計画したと表示されているが、日本語訳では、何か月もかかってと意訳されていた。
他の作品でもそうだが、意訳がされ過ぎて本来の意味と微妙にニュアンスが異なる場合がある。見比べてみれば、面白いかもしれない。
(文中敬称略)
パート1:当時のアクション映画の常識を覆した作品『ダイ・ハード/DIE HARD』