英語習得と米国社会を学ぶ上で、教材となる映画『JFK』

英語を習得する為、教材として見た映画「JFK」。何時の間にか、離れられない映画になってしまった。

映画の文字起こしに、約1週間。意味・発音を調べるのに、約1週間。下準備に約2週間を費やした後、初めて映画を見る事ができた。

繰り返し映画を見た後、漸く内容を理解できた記憶がある。それ程、時間がかかる長編大作。英語を学ぶ上では、最適な教材かもしれない。

 

・題名     『JFK』    

・公開    1991年 米国  

・提供    ワーナーブラザーズ     

・監督    オリバー・ストーン

・製作    オリバー・ストーン、A・キットマン・ホー

・脚本    オリバー・ストーン、ザカリー・スクラー

 

出演者

◆ジム・ギャリソン      :ケビン・コスナー(ニューオーリンズの検事)

◆クレー・ショー       :トミー・リー・ジョーンズ(JFK暗殺の一味を思われる人物)

◆リー・ハーベイ・オズワルド :ゲイリー・オールドマン(JFKを暗殺したと云われる人物)

◆ビル・ブロザード      :マイケル・ルーカー(ギャリソンの調査メンバーの一人)

◆ルー・アイボン       :ジェイ・O・サンダース(ギャリソンの調査メンバーの一人)

◆ウィリー・オキーフ     :ケビン・ベーコン(クレイ―・ショーを知る人物。裁判でも証言する)

◆リズ・ギャリソン      :シシー・スペイセク(ジム・ギャリソンの妻)

◆デビット・フェリー     :ジョー・ペシ(ショーと同じく、JFK暗殺の一味と思われる人物)

◆ジャック・マーティン    :ジャック・レモン(元FBI、現探偵のバニスターの元助手)

◆ジャック・ルビー      :ブライアン・ドイル=マーレイ(ダラスのナイトクラブ経営者)

◆ガイ・バニスター      :エドワード・アズナー(元FBI、現探偵業を営む)

◆X大佐            :ドナルド・サザーランド(ギャリソンに重要な情報を提供する)

 

あらすじ

1963年11月22日、ダラスで現大統領「ジョン・F・ケネディ」が暗殺された。

 

「大統領がダラスでパレード中、銃弾を受け、ケガをしました」。

 

CBSの名アンカーである「ウォルター・クロンカイト」が、臨時速報を告げる場面で此の物語が始まる。

 

アメリカ南部のダラスで、パレード中の現大統領ジョン・F・ケネディが銃弾に倒れた。

ダラスから程近い、ニューオーリンズ地方検事「ジム・ギャリソン」は執務室で仕事中、部下の「ルー・アイヴォン」(以下ルー)から大統領が撃たれたとの報を聞く。

大統領が撃たれた報を聞いたジム・ギャリソンとルーは、TVがあるナポリタンスパゲティの店にいき、続報を待った。

 

アメリカ全国民が続報を待つ中、まもなくTVのアンカーが涙くみながら大統領の死亡を伝え、副大統領「リンドン・ジョンソン」が第36代大統領に就任した事実を告げた。

長い物語の始まりである。

 

自宅で家族と供にTVを眺め、続報を食い入るジム・ギャリソン(以下ギャリソン)。

続報で大統領暗殺に係りがあると思われる男、「リー・ハーベイ・オズワルド」(以下オズワルド)が逮捕されたと告げる。

大統領暗殺犯とされたオズワルドは、ニューオーリンズにて、実に不可解な行動をしていた。自分は「マルキスト」で「フィデル・カストロ」支持者であると自称するなど。

しかし実際オズワルドは、ニューオーリンズで右派に近い人物とつきあっていた。「デビット・フェリー」、「ガイ・バニスター」、後に登場する「クレイ・ショー」等。

アメリカ南部は保守色が特に強い地域であり、ニューオーリンズも類に漏れず、保守色の強い市であった。

そんなコミュニティでオズワルドは何故、活動できたのであろうか。

 

ギャリソン達は事件当夜、ガイ・バニスター(以下バニスター)に銃で殴られたジャック・マーティン(以下マーチン)に事情を聞きにいく。しかしマーティンは何故か詳しく語りたがらない。何かに怯えている様子だった。。

しかしジム・ギャリソン達に僅か乍らも、デビット・フェリー(以下フェリー)・バニスターと、オズワルドの関係を話した。

 

次にギャリソンが訪ねたのは、刑務所にいる「ウィリー・オキーフ」。彼は嘗てオズワルド、フェリーたちと個人的な趣味で関係あった。個人的な趣味とは、男色。

話を聞くに、ケネディ暗殺前、自分はフェリーとオズワルドの二人を、ニューオーリンズの「クレイ・バートランド」と名乗る男の家で会っていると証言した。

 

個人的趣味の集まりのパーティーでは、フェリー・オズワルドを始め、反カストロキューバ移民、極右などの魑魅魍魎とした人間が参加していたと話す。

パーティーが終わり僅か数名になった際、フェリーが酔った勢いでケネディ暗殺の計画を仄めかしていたとギャリソンに話す。

ウィリー・オキーフは酔った勢いの戯言かと思っていたが、後に本当にケネディ暗殺が起こり、自分は戦慄したと証言する。彼は後の法廷場面で、クレイ・ショーの証言する。

 

調査を進めていく中、ケネディ暗殺に係る重要な証言をした人間が、次々と謎の死を遂げている事実が判明。疑惑は益々深まるばかりだった。

調査進展後、「クレイ・バートランド」とは、ニューオーリンズで有名な実業家「クレイ・ショー」と判明する。

ギャリソンは思い切ってクレイ・ショー(以下ショー)を検事局に呼び、参考尋問を行う。

 

参考尋問でショーは、フェリーとオズワルドの関係を完全否定。

ウィリー・オキーフなど全く知らない、自宅に呼んだ事もないと完全否定する。

また自分はケネディ暗殺には関与もしていないし、CIAの契約エージェントでもないと強く否定した。

 

ショーの参考尋問の数日後、今まで極秘に遂行していたギャリソン達の調査が公となり、ギャリソン達は世間の注目を浴びた。

注目を浴びると云う事は、裏を返せば、調査にいろいろな圧力・妨害・中傷が始まると云う事。実

際、ボランティアと称してのスパイ行為、盗聴、調査チームの切り崩し等が行われた。

 

調査が明るみになった後、ギャリソン達が調査の手がかりとしていたフェリー、キューバ系反カストロ活動家などが、次々に謎の死を遂げる。

更にFBI等の切り崩し等で、調査チームはついに、仲間割れを始めてしまう。

ギャリソンの調査が公になった後、マスコミの殆どは反ギャリソン側に立った。一体何故だろうか。これもケネディ暗殺の闇と言われている。

 

調査が進むにつれ、仲間が一人かけ二人かけ、やがてギャリソンの家庭すら崩壊してしまう。

いろいろな妨害にあい、調査チームは次第に壊滅的な状態になる。

 

劇中最終はほぼ、クレイ・ショーの法廷場面となる。

裁判ではギャリソンの証言が有効なものとされず、完全に不利な状態となる。

中には、証拠として採用されない証人も現れる。ギャリソンの必死の立証にも係らず、裁判の進行が全てがショー有利に傾く。

 

最後の陪審員の結果は、「not guilty」(無罪)。

ショーは意気揚々として、裁判所を後にする。

一方、ギャリソンは妻と長男に支えられ失意の中、むなしく裁判所を後にする。

 

見所

映画の始まりの退任するアイゼンハワー大統領の退任演説が非常に意味深い。

アメリカ国内の軍産複合体の存在をよく表している。流石に軍人あがりの大統領だけに、軍産複合体の脅威を理解していたと言える。

 

ケネディ暗殺の続報を固唾を呑んで見守る中、TVからCBSニュースキャスター「ウォルター・クロンカイト」が涙ぐみながらニュース速報を伝える姿が、当時のアメリカ国民の心境をよく表している。

 

フェリーの尋問の際、ギャリソンがフェリーのテキサス行きを尋ねる場面がある。何故ギャリソンがフェリーのテキサス行きを知ったのか。

実は検事局に、フェリーのテキサス行きを知らせる垂れ込みがあった。

垂れ込みの主は、バニスターに銃で殴られたマーチン。マーチンは、病院から検事局に電話をかけた。しかしマーチンがどうしてフェリーのテキサス行きを知ったかは謎。

因みに史実では、バニスターが銃で殴った相手は、探偵事務所でバイトで働いていた若者。マーチンは映画用の設定。

マーチンの話ではフェリーは反カストロで、オズワルドとバニスターと関係があった事を匂わしている。

更にオズワルドの「マルキスト」は偽装。実際はCIAの下級エージェントであったと示唆している。

 

オズワルドが出入りしていたバニスターの事務所が入居していた建物は、二つの通りに面し、出入り口が二つあった為、住所が二つ存在した。しかし実際は同じ建物。

劇中にないが、この建物内には「キューバ革命委員」という、反カストロ運動の事務所も存在していた。

今にして思えば、建物自体が反共が集まる存在だった言える。

 

フェリーが暗殺の概要を話す場面があるが、実際の暗殺でフェリーは計画の一部しかしらなかったと思われる。左程、重要な役目は果たしているとは思われない。

映画上の設定と思われる。フェリーも所詮、下部組織の一人だった可能性が高い。

 

ギャリソンメンバー(検事局職員)が、車でレストランに到着する場面がある。

よく見れば、車が停まる寸前、近くにいたアフリカ系アメリカ人女性が、ギャリソンの存在を確認(二度見している)している。

車が止まった直後、近づき握手を求めているのが分かる。何気に細かい描写と思われた。

これは直前のウィリー・オキーフ(以下オキーフ)の話(オキーフは大の黒人嫌い)と、アフリカ系アメリカ人女性を対比させているのではないかと思われる。

何故なら、劇中冒頭バニスターも言及していたが、当時ケネディは、「公民権運動」に積極的に関与していた。

前述したが、南部は保守的要素がとても強く、右派に近い地域だった。1860年の南北戦争の背景を考えれば、自ずと理解できる。

南部では、決してケネディの人気は芳しくなかった。此れが後のキング牧師の暗殺にも繋がる。

 

歴史的背景を知らなければ、なかなか理解し難い。

大統領選でケネディと争ったニクソンは、ケネディとは反対の考えであり、南部では人気があった。

ニクソンは1968年の大統領選では、南部重視の南部戦略を採用。当選した。

 

スタッフの調査によれば、ケネディに関する重要な証言をした人間は次々に謎の死を遂げている事実が判明する。

更にオズワルドはどうやら情報機関の指令を受け、ソ連に偽装亡命したと思われた。

亡命後ふたたびアメリカに戻ってきた経歴が判明。しかしアメリカに帰国後、何も罪に問われなかった。

帰国後のオズワルドは、不可解極まる行動をしていた。どうやらCIA関係者と繋がっていた模様。

オズワルドは海兵隊の兵役期間、日本の横田基地にいた過去がある。公言されていないが、横田基地はCIAの日本の拠点の一つとされている。

 

内容とはあまり関係ないが、オズワルドの妻がメディアのインタビューに答えている場面で登場する彼女の弁護士が、何故か「ミハイル・ゴルバチョフ元書記長」に似ていた。

当時ソ連は、ゴルバチョフが推進するペレストロイカの真っ只中で、国が揺れていた時代。その事を捩ったのかもしれない。

 

ギャリソンとルーが現地(ダラス)で調査した際、多くの人間の重要な証言が採用されなかった事が判明。

暗殺後の現場で、多くの揉み消しが行われていた事も判明する。

ジャツク・ルビー(以下ルビー)の店で働いていた女性の話では、地元警官はかなり風紀・品行に問題があった。買収されていても、可笑しくない状況とも思える。

 

モデルとなっているギャリソン本人が、実際映画に登場している。

「ウォーレン委員」の委員長、「アール・ウォーレン」役で出演。劇中ではルビーに尋問している場面、記者のインタビューの答えている場面で登場している。

 

劇中でギャリソンとルーが、パレードのコースについて話しているが、パレードのコースは直前に変更されていた。

変更した責任者は、当時の市長「アール・カベル」

アール・カベル市長は、1961年「ピッグス湾事件」の失敗で、ケネディからCIA長官「アレン・ダレス」と一緒に首を斬られた、CIA副長官「チャールズ・カベル」の実弟。

 

この時、先に「クレイ・ショー」の名前が先に出ているが、直後にビル・ブロザード(以下ビル)がフランチ・クオーターで「クレイ・バートン」がショーである事を突き止めるが、聊か順番が逆と思われる。

脚本を間違えたのかもしれない。

 

フレンチ・クオーターとは
ニューオーリンズでフランス系移民で作られた歓楽街の地区

 

ケネディの南部遊説が決まった後、ニューオーリンズ、ダラスの色々な場所で、偽のオズワルドと名乗る男が出現。男はさも、オズワルドが粗暴で、攻撃的であるかの様な印象を与える行動をしている。

更にオズワルドがソ連にいた時、オズワルドと名乗る男がトラックを購入したり、ソ連から帰国後も何も政府組織側から尋問もされず、国防省に関連する地図会社に就職している何か怪しげな事実を突き止める。

普通政府の防衛に関する会社に就職する際、厳しいチェックを受ける筈が、オズワルドは何のチェックもなく簡単に就職していた。

 

ギャリソンは非公式にショーを検事局に呼び、参考尋問を行う。

ショーは質問をのらりくらりとはぐらかし、全く尻尾を掴ませない。なかなかの曲者。結局、尋問は徒労に終わる。

ショーを尋問後、最初の蹉跌が生じる。先ずはギャリソンの家庭。ギャリソン夫妻の間に、隙間風が吹き始める。

更に今迄秘密にしていた調査が、世間に暴露される。

調査が表沙汰になり、フェリーがギャリソン側(検事局)に保護を求めて来た。調査が公になった為、自分の命が危うくなったとギャリソンに告げた。

自分の命を狙う相手は、エージェント(政府機関)・反カストロキューバ人・反ケネディ組織・マフィア等であろうと。

 

マフィアとキューバの関係
マフィアは、キューバ革命前の首都ハバナに莫大なカジノ利権を持っていた。キューバ革命後、カストロはカジノ利権を剥奪。マフィア側は利権を取り戻そうと躍起になり、カストロ暗殺を計画していた。従って、キューバ侵攻に消極的だったケネディ政権を非難していた。更に司法長官の実弟「ロバート・ケネディ」は徹底したマフィア狩りを行っていた。結果ケネディ政権を快く思っていない軍、CIA、FBI等とは反ケネディで一致していた。

 

しかしギャリソン側の必死の警護にもかかわらず、フェリーは謎の死を遂げる。

同じくケネディー暗殺に関与していると思われる、反カストロキューバ人も惨殺死体で発見される。

更に検事局に盗聴器が仕掛けられたり、内部分裂を狙うかのようにスタッフのビルがFBIに買収される等、様々な妨害行為が発生する。

 

ギャリソンは謎の情報提供者に遭う為、ワシントンD.Cへ向かった。

謎の人物は名は明かさず「X大佐」と名乗る。X大佐は以前、政府内部にかなり近いポジションにいた。彼が話す極秘情報はギャリソンの想像の域を越え、とてつもなく大規模な話だった。

 

話を聞き、ギャリソンは己の規模ではとても取り扱う事ができないと自覚。しかしX大佐は、既に賽は投げられた、進むしかないと必死にギャリソンを励ます。

X大佐の話は、ギャリソンのケネディ暗殺調査に重要な意義を与えた。

情報機関の秘密工作。軍産複合体の繋がり。マフィアと反ケネディ勢力の繋がり。政府側の組織の繋がり等。劇中での役目は大きい。

X大佐の話を聞き。ギャリソンはショーの逮捕に踏み切る。裁判闘争を通し、暗殺計画を白日の下に晒す事を画策する。センセーションであったが、各マスコミは終始、反ギャリソンだった。

 

ケネディ調査が進展する中、次第ににギャリソンの家庭が崩壊していく様子が描かれている。劇中にはないが、実際ギャリソンは妻と離婚している。

スタッフ会議でスタッフ間の対立が確実となり、内部分裂を起こす。ビルは既にFBIに買収され、FBIにケネディ調査の情報を流し、ビル自らが内部分裂を画策した。

ビルはルーや他のスタッフに問い詰められ、事務所ではもう一緒に働けないと告げ、事務所を飛び出す

ルーは、ビルの裏切り行為は目に余り、もう一緒には働けないとギャリソンに告げる。

しかしギャリソンは反対にルーを詰り、ルーもギャリソンの調査チームから去ってしまう。

 

結果として、ケネディ調査を潰したいと目論んでいた勢力の思う壺になってしまった。

「組織は頭から腐る」と言われるが、言葉通りとなり調査チームは弱体した。弱体した状態でショー裁判を迎える羽目になる。

 

尚、「ルー・アイヴォン」は、実際のスタッフだった主任検事補「フランク・クライン」、「ビル・ブロザード」は、主任捜査官の「パーシング・ジャーべ」をモデルにしているものと思われる。

実際は、フランクが先に辞め、ジャーべは個人的な金銭トラブルで調査チームを離れている。

劇中ではビルとルーが他のスタッフとの言動を混合させて、物語を進めている。       

 

ギャリソンに対し、色々な圧力・誹謗中傷があった模様。

ギャリソンがニューヨークのTVトーク番組に出演後、ビルがギャリソンの信用を貶めようと空港に現れたのも同じ。

ギャリソンは州軍の予備兵であり、州軍からの報酬を調査に充てていた。その為か分からないが、ギャリソンは州軍から解任を申し渡されていた。ギャリソン達は、他にも各政府機関等から様々な妨害を受けていた。

現実に「ジャーべ」はギャリソンの事務所を辞めた後、しばしギャリソンの処に来て、色々な攪乱・妨害行為をしていた。

 

劇中最後はショーとの法廷闘争の場面が中心。

法廷では「ハガティ判事」を始めとして、殆どの陪審員はシーを擁護する側に回った。

検察側の証人で暗殺計画を聞き、「クレイ・バートランド」と名乗る男は、其処にいるショーだと証言した「オキーフ」は実在人物の「ペリー・ラッソー」がモデル。

ジャンキーでショーは足が不自由だったと証言する人物は、「バーノン・バンディ」がモデル。

劇中で足が悪い様子は、ショーが非公式で検事局に呼ばれた際、伏線として映像に収められている。

 

ショーが逮捕された時、事務的手続きをとった警官が退廷を命じられるが、劇中では「ハバガー」となっているが、実際は「アロイシウス・ハビゴースト」巡査と言われている。

劇中、娘が大学から帰ってきた時、指紋を採ると答えた証人は「チャールズ・スピーゼル」という人物。

 

裁判中、有名な「ザプルーダー・フイルム」が上映された。

映像を駆使しながら「グラシー・ノール」(芝の丘)に数人いた事、銃が発射された銃声と硝煙が上がったとの証言が多数あったと主張する。

発射された弾丸が矛盾した軌道を辿っていて物理的に不可能である事を立証した。此れは「魔法の弾丸」と呼ばれた。

 

暗殺現場では多数の怪しい人間、ライフルを持った人間が目撃された。

ケネディが撃たれた後の現場の混乱ぶり。怪しい人間が立ち去った事、警官、FBIを装った多くの人物が出現。いつの間にか消えてる事など。

途中、オズワルドがルビーに撃たれるシーンがあるが、周りの警官が妙に冷ややかな目をしているのが印象的。いかにも予想していたかの様な表情にも見える。

 

逮捕された人間は身元確認もされず、調書も取られず、釈放されていた。犯人とされたオズワルドは現場近くのビルにいたが、直接暗殺行為には関わっていない。

オズワルドは単なる囮(おとり)・贖罪の子羊であったのではないかとギャリソン側は主張する。

オズワルドは囮で逮捕、口封じ為、殺されたのではないかと。

更に暗殺の陰謀には多くの人間、大きな政府を含めた組織が関わっていたのではないかと主張する。

判事を始めとする多くの人間は、ギャリソンの主張を奇想天外だと決めつける。

 

ギャリソンの力説にも係らず、評決は「not guilty」(無罪)。ギャリソン側は敗訴する。

意気揚々と勝訴を勝ち取り、裁判所を立ち去る、ショー。対照的に失意の中、家族に支えられ、すごすご裁判所を後にするジム・ギャリソン。

明と暗が分かれた瞬間で、映画が幕を閉じる。

 

立ち去る時、ギャリソンがマスコミのインタビューに答えた内容は

「裁判で政府機関の謀略に関する事件を立証するのは困難だ」

この言葉に全てが凝縮されている。

 

映画の最後のナレーションでも述べられているがCIAは数年後、クレイ・ショーがCIAの契約エージェントであった事実を認めている。

 

ギャリソンは裁判後、ギャンブル業界から賄賂を貰ったというでっち上げの罪で起訴されている。

裁判結果は当然無罪であったが、ギャリソンの社会的失墜は避けがたく、4期目の地方検事選挙で落選する。先述したが家庭不和になり、妻とも離婚している。

 

地方検事選挙
アメリカでは日本と異なり、地方検事を選出する際も選挙を行う。劇中でフェリー、アフリカ系アメリカ人女性が「貴方に投票しましたよ」と述べているのは、検事選挙の事。

 

ギャリソンの見識では、反ケネディ分子の組織が結託。実行したものと思われるが、音頭をとったのは主にCIAだと判断している。

ケネディ暗殺調査が公になった後、裁判前後に政府関係からあらゆる妨害を受けたと告白している。

 

いくら民主主義を標榜するアメリカもケネディ暗殺に関しては、全く適用されなかった。アメリカの良心が問われたと言っても過言でない。

全マスメディアはギャリソンと反対の立場をとり、あまつさえ足を引っ張ろうと躍起だった。

 

「パーシング・ジャーべ」は個人的な金銭トラブルで事務所を去ったが、後々もで政府機関の手先となり、ギャリソンを社会的に抹殺するべく破壊工作を何度もしている。「貧すれば、鈍す」といった処であろうか。

 

追記

映画冒頭で映し出される Ella Wheeler Wilcox(エラ・ウィーラー・ウィルコックス)の言葉の意味は

「抗議すべき時に、抗議しない者は、卑怯者である」の意味。

「To sin by silence when we should protest makes cowards out of men」

 

劇中のケネディの葬儀の映像で、ケネディの遺児が映るシーンがあるが、映像に映っていた女の子は、前アメリカ民主党オバマ政権時、日本のアメリカ大使を務めた「キャロライン・ケネディ」である。

 

D・フェリーを演じていた「ジョー・ペシ」。劇中では奇妙な風貌の役を演じているが、「リーサル・ウェポン」では、シリーズ2以降の準レギュラー的存在(レオ・ゲッツ)。

シリーズでは、なかなかコミカルな演技を披露している。逆にリーサル・ウェポンのイメージが強すぎるかもしれない。

 

「クレイ・ショー」を演じた役者は、缶コーヒー「ボス」のCMでお馴染みの「トミー・リー・ジョーンズ」

CMでは陽気なおじさん役だが、今回の作品以外にも、結構クセのある役を演じている。

「逃亡者」「沈黙の戦艦」等は有名。

 

「ウィリー・オキーフ」役の「ケビン・ベーコン」「フット・ルース」で有名。フット・ルースは音楽も有名。

 

「アパートの鍵貸します」で有名な「ジャック・レモン」。探偵事務所で「ガイ・バニスター」に銃で殴られる「ジャック・マーティン」を演じている。

 

ギャリソンの司法学校時代の同期の役「ディーン・アンドリュース」を演じているのは、「ジョン・キャンディ」

彼は1984年作:「スプラッシュ」、1989年作:「キャノンボール3」、1990年作:「ホーム・アローン1」に出演している。

惜しい事に彼は1993年に就寝中、心臓発作にて43歳の若さで亡くなっている。 

 

ケネディ暗殺に関し、様々な資料・書物が存在するが、必ずしも正確に各数字が一致する訳ではない。

それぞれ参考程度にとどめておいた方が無難。若干数字が異なっているものがある。

 

度々「軍産複合体」と云う言葉が登場するが、政府機関と軍需産業の繋がりが作り出す、共同体の様なもの。戦争は軍産複合体にとり、「特需」とも言える。

日本で譬えるなら、公共事業でのゼネコンと政府の関係を想像すれば、理解し易いかもしれない。劇中の法廷シーンでもギャリソンが述べていたが、軍産複合体にとり大統領の地位も一つの駒に過ぎないと云う事。

 

映画製作に参考したと思われる書物を見つけたので、最後に記しておきたい。

 

・参考文献
【JFK ケネディ暗殺犯を追え】 ジム・ギャリソン/岩瀬孝雄訳

(早川書房 1992年2月発行)

 

(文中敬称略)