少年時代、皆が真似た映画 ジャッキー・チェン『蛇拳』
懐かしい香港映画。
ジャッキー・チェン(成龍)シリーズの一つ「蛇拳」。
地上波で放送された翌日、学校ではジャッキー・チェンが溢れていた。
そんな素朴な時代の映画。
・題名 『蛇拳』
・公開 1977年 香港
・配給 思遠影業、東映
・監督 ユエン・ウーピン
・製作 ウン・シーユアン
・脚本 ウン・シーユアン、クリフォード・チョイ
・音楽 周福良
目次
出演者
・単呆 :ジャッキー・チェン(カンフー道場で下働きをする青年)
・白長天 :ユエン・シャオティエン(蛇拳流派の継承者)
・リー師範 :デーン・サキ(簡福が住み込みしている道場の師範)
・リン師範 : チャン・ロン(同じく、簡福が住み込みしている道場の師範)
・上官逸雲 :ウォン・チェンリー(鷹爪拳流派の頭目)
作品概要
カンフー道場で下働きをする単呆は、師範代の練習台などをやらされ、悲惨な毎日を送っていた。
カンフーを習うなどもっての他、いつもこき使われていた。
或る日、単呆は町で複数の人間に絡まれている老人の助けに入った。
実は老人はカンフーの使い手。
単呆れの手など借りなくても切り抜ける事ができたが、単呆には分からないように気を遣い、相手を打ち負かした。
単呆はカンフーの達人とは露知らず、ただ困っている老人と思い込んだ。
自分の道場に連れていき、道場で老人をもてなした。
老人との談笑中、単呆は稽古と云う名目で、ただの殴り台にされた。
単呆の惨めな姿を見た老人は、一宿一飯の恩義を感じ、単呆にカンフーのよけ方を伝授する。
壁にカンフーの極意を記し、地面に足捌きを残し立ち去った。
その日から、単呆のよけ方の訓練が始まる。
老人の正体は、実は蛇拳の継承者「白長天」。
白長天は蛇拳と鷹爪拳の追っ手から逃れる為、逃亡中の身だった。
他の蛇拳の使い手は既に鷹爪拳の使い手に殺され、蛇拳一派は絶滅寸前。
その為、残り少ない生き残りの人間を集め、再興の途中だった。
或る日、単呆は白長天によけ方を実践で試す機会を得た。
白長天に教わったよけ方の技を駆使、見事に相手の攻撃を躱した。
今迄いかさまの試合をして態と殴られていたが、今回は本気で相手の攻撃をよけてしまった。
相手の攻撃をかわした為、単呆は道場の師範代に報復を受ける。
単呆は怒りと哀しみで、道場を飛び出した。
道場を飛び出した際、偶然にも敵の待ち伏せにあい負傷した白長天と再会する。
単呆は必至で白長天を看病した。
単呆の看病の甲斐あり、やがて白長天は回復する。
回復後、白長天は簡福に恩義と哀れを感じたのか、単呆に蛇拳の奥義を伝授する。
白長天は単呆にカンフーを教える際、3つの約束を科した。
①自分(白長天)を師匠と呼ばぬ事
②自分(白長天)が戦っていても、決して加勢をしない事
③やたら習得した技を、人に見せぬ事
単呆は白長天の約束に疑問に感じたが、カンフーを習得したいが為、即座に了承した。
翌日から二人の厳しい修行が始まった。
単呆は今までのうっぷんを晴らすかの如く修行に没頭した。
単呆は次第に、蛇拳の技を身に付けていく。
或る日、単呆の道場にライバル道場が手下を引き連れ、道場破りにやってきた。
相手はかなりの使い手。
道場の二人の師範代は、何も抵抗できず、あっさりやられてしまう。
それをみた門弟達は皆、ライバルの道場に移ってしまった。
落ちぶれた道場に、ハン師匠が戻って来た。
単呆から事情を聞いた師匠は、名誉と奪われた弟子を取り戻すべく、ライバルの道場に乗り込んだ。
ライバルの道場に乗り込み試合をする師匠だが、ライバル道場に雇われた使い手に苦戦する。
師匠がやられる寸前、単呆は相手に靴を投げつけた。
単呆は相手の怒りを買い、戦う羽目となる。
白長天から、むやみやたらと人に技を見せぬ事と云われていた。
しかし単呆は成り行き上、掟を破ってしまった。
白長天から学んだ技をふんだんに使い、単呆は相手をぶちのめす。
相手をぶちのめした後、再び奪われた門弟が戻ってきた。
その時、単呆の戦い振りを物陰から見ていた人物がいた。
その人物は蛇拳のライバルである鷹爪拳の頭目、上官逸雲。
上官逸雲は単呆の戦いぶりを見て、どうやら単呆の近くに白長天がいるのを悟った。
密かに単呆の後をつけ、アジトを突き止める。
上官は白長天とは知り合いと名乗り、単呆に近づいた。
単呆は上官逸雲の言葉を信じ、白長天が戻ってきた際、上官に知らせる約束してしまう。
白長天は蛇拳の残党に会う為、仲間の隠れ家に出かけた。
しかし敵の待ち伏せにあい、危うい処で虎口を逃れた。
白長天が外出中、単呆は白長天から預った極意書を参考に稽古に励んだ。
単呆は偶々飼っていた猫が、毒蛇をやっつけるシーンを目撃する。
咄嗟に何かが閃く。
単呆は猫の動きをヒントに自分なりの工夫を加え、猫の動きをうまく蛇拳の技に取り入れた。
暫くして、白長天が戻って来た。
白長天が戻った後、何も知らない単呆は上官逸雲に知らせに行く。
処が、上官は既に門の前にて待ち伏せていた。
単呆は白長天が来た事を知らせ、上官を家に招き入れる。
白長天は危険を察知。既に逃走。
上官は壁をつたい、白長天を追った。単呆も二人の後を追う。
上官は白長天を追いつめ、二人の格闘が始まる。
初めは互角だったが、次第に上官が態勢有利となる。
白長天がやられる寸前、単呆が助けに入った。
白長天を助ける為、単呆は上官と戦う。
単呆は初めは上官に全く歯が立たなかった。
しかし単呆は持ち前の粘りで徐々に自分のペースに持ち込む。
自分が編み出した新しい技を駆使。苦闘の末、とうとう上官を打ちのめす。
上官逸雲を倒した後、道場の料理人(正体は鷹爪拳の回し者)が現れ、二人を毒殺しようとした。
しかし二人は初めから毒入りのお茶を飲んでおらず、と単呆と白長天にあっさりやられてしまう。
此処で映画は終了する。
見所
何々拳シリーズの定番だが、ジャッキーがカンフーの奥義を取得する為の修行シーンが見もの。
どのシリーズでも、必ず挿入されている。
修行のシーンが面白い。大昔の子供の頃、真似てみたものだった。大概不可能だったが。
他の作品「酔拳」等にも出演している師匠役(白長天)のユェン・シャオティエンが、とぼけたような好演を披露している。
何気に、良い味を出している。毎度、ジャッキーとの掛け合いが面白い。
ラスボス役のウォン・チェンリーも毎度お馴染み。定番とも言える。
配役が殆ど「酔拳」と変わらないのも面白い。
香港映画全般に言えるが、配役が大概同じ。
どの映画をみても、似たような俳優が出演している。
ブルース・リーの映画紹介でも述べたが、
ジャッキー、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウは大の仲良し。
数々の香港映画で、共演している。
「大福星」「五福星」「七福星」でもお馴染み。
余談だが、ジャッキーが稽古中、飼い猫と蛇が戦うシーンがある。
途中で蛇が猫に絡まっているシーンが見られる。
此れは編集上のミスと思われる。
冒頭で白長天が蕭勁 (白扇をもった男)に出会うが、何故逃げたのか分からない。
劇中での二人の格闘では、白長天が圧倒的だった。
単呆が蛇拳を習得した時点で、居候している道場の師匠より強くなっている。
越えた時点で、道場にいる意味が分からない。
道場主とロシア人宣教師は、単なる引き立て役。
今でいえば、「やられキャラ」と言う事だろうか。
しかし詳細に一つ一つの矛盾を挙げずとも、全体を通し屈託なく楽しめる映画と言える。
前述したが、当時地上波で放送された翌日、学校ではジャッキーを真似た男子生徒が大勢出現。
皆がジャッキーになりきり、カンフーごっこをした。
今思えば、何とのどかで素朴な時代だったと思う。
大概悪ふざけが度を越し、喧嘩になるのがオチだった。
何はともあれ、懐かしい時代だった。
今振り返ってみれば、アニメのヒーロー物の実写版を見ている様な感じであろうか。
そんな気がした映画だった。
(文中敬称略)
:アクション満載 ジャッキーチェン監督・主演『プロジェクトA』
:香港三代スター(ジャッキー・サモ・ユン)共演、『スパルタンX』