改正どころか改悪 厚生年金の適用拡大議論

本日「勤労感謝の日」に伴い、久し振りに時事問題に触れたいと思う。議題は働くことにより、当然関係してくる「年金問題」。ブログ開設当初、既に語り尽くした問題であるが、改めて論じてみたい。

 

改正どころか、改悪。厚生年金問題の適用幅拡大論議

タイトルの通り、最近俄に厚生年金の適用幅の拡大が政府間で論議されているが、結論から言えば、要らない論議。日本の歴史上、数々の失政があるが、此れはまさにその例に当て嵌まると言える。

つまり「改正ではなく、改悪」。大昔の日本史で「徳政令」と言うものが暫し発令されたが、まさにあれと同じ類。為政者、政府の事務方の失政を国民側に押し付けたもの。

その結果、社会が益々混乱。その後数々の戦・動乱・一揆などを巻き起こした事象と同じと言える。理由として以前のブログにも述べたが、一言で表せば

「今迄の厚生年金の積み立て額が、将来支給する為に、足らなくなった。その為、更に積み増ししようという魂胆」が見え見え。

よく言われる「自転車操業」に近くなったと言える。自転車操業の慣れの果ては、大概は破綻。破綻しなくても、青色吐息の状態でいつ倒れても可笑しくない状態。

結局、今迄の加入者から徴収する額では立りなくなり、今迄対象外だった人間の数を増やすという、一時凌ぎの延命策に過ぎず、根本的解決には至らないのが関の山。

これはいつか来た道ではないかと思われる。まさに「国民年金」。国民年金もこの道を歩み、徐々に支給額が減り、現在に至った。まさに同じ歩みと言える。

 

今回の争点

今回の争点は、今迄パート・アルバイトの数が501人以上の企業に対し、パート・バイトにも厚生年金の適用を課していた。

此れも以前ブログで述べたが、2016年10月、政府は501人以上のパート・アルバイトを抱える企業に対し、厚生年金の加入を義務付けていた。

私は丁度その頃、本業の他にその適用される企業に所属していた為、対象者となった過去がある。しかし当時その企業が取った策(法の抜け道)は、2か月続けて以下の条件を満たさない為に調整する事だった。

つまり以前も書き記したが、今か書き記す以下の条件に適合すれば、厚生年金の対象者となる。その条件とは、

 

①所定労働時間が「週20時間以上」
②月額賃金8.8万円以上
③雇用期間1年以上見込み
④学生は除外
⑤従業員規模501人以上の企業 

これは大企業の殆どのパート・アルバイトの人間が当てはまると思われる。

 

当時私の所属していた企業の取った策は、一ヶ月は粗フルに働き、二ヶ月目は、上記の条件に触れないないように調整する事だった。

何故なら企業と私も、厚生年金の対象者になる事を望んでいなかった為。本業があった為、保険・扶養又、確定申告などの関係で手続きが面倒だった為と主張する。

そして政府は何をおもったのか、今回の検討条件として、501人以上の項目を、51人以上に改正しようとしている。つまり働く人間全てに、厚生年金を徴収しようとする企みと言える。

他の報道によれば、極端な話、5人以上の事務所にも適用しようとする目論みの報道すら散見された。5人以上であれば、粗100%と言える。

5人以上の小企業では、年金の負担が膨大で、倒産する恐れすらある。5人以上の企業で生き残るのであれば、有名な弁護士事務所、会計事務所、大手保険事務所ぐらいではないかと思われる。

 

とどのつまり、過去の政治家・官僚の失態を自分達が全く責任をとらず、全て企業に丸投げしたと言える。少子高齢化、医療拡大、年金問題など、20年以上前から予測されていた。その間、政府・官僚達は何の有効な手段をとらなかったと言える。

 

その失政を巧妙に隠し、国民の責任に押し付けたかにも見える。更に腹正しい事に、官僚を始め公務員は今現在60歳定年だが、自分達は、65歳定年を必死に政治家に働きかけている。

何故65歳定年かと言えば、民間では以前は60歳から年金支給であっあが、現在では65歳に延長されている。つまり自分達が定年を迎え、退官後、目出度くすぐさま年金受給者となる手筈と言える。

何故公務員が厚生年金が貰えるかと言えば、此れも以前ブログで述べたが、公務員は以前自分達の年金「共済年金」と言うものを掛けていたが、将来の目減りする事が判明していた為、公務員が無理やり自分達の年金を民間の厚生年金にくっつけてしまった。

民間の厚生年金のかけていた側としては、たまったものではない。周知の如く、公務員の退官後の恩給が、とてつもなく高い。長生きするれば、するほど儲かる仕組み。

いつも隠されて表に出ないが、国家公務員だった場合、本人が死亡した際、本人が受け取っていた年金は、その配偶者に移行される。此処まではまだ良いとしても、次にその配偶者が死亡した場合、普通の民間であれば、そこで支給は終了だが、国家公務員の場合、なんとその両親の子供迄、受給資格が存在する。これは国家公務員の優遇措置の一つと言われている。読んだ方も、本人が国家公務員でない限り、かなり矛盾と感じると思う。

今回の議論においても、全てのパート・アルバイトに適用されるという議論が先走り、実は事業者・パート・アルバイトの当事者は、決して手放しで喜んでいないのが分かる。

これはマスコミを利用した、政府の典型的な世論操作と言える。

 

政府を擁護する企業群

一方同じ企業でも、政府の立場を擁護しているのも企業も存在する。

それは扶養を抱える人間を雇っている企業側は、諸手を振っての賛成派と言える。何故ならパート・アルバイトをしている配偶者がいれば、配偶者あわよくば子供が企業の扶養から外れる為である。

簡単に言えば夫が企業で働けば、妻・子供が扶養家族となる。今では、逆の立場も存在するかもしれない。どちらでも良いが、パート・アルバイトをしている配偶者が、勤め先の厚生年金に加入した際、扶養が外れ企業の負担は少なくなる。

しかし扶養から外れた配偶者側は、問題が多い。先ず厚生年金を企業と個人で折半で負担する為、可処分所得が減る。更に雇用が不安定。いつ勤め先が、倒産するかも分からない。配偶者の勤め先に比べ、職場がなくなる可能性が高いと言う事。

実際そうなってしまった場合、再度配偶者の扶養になる際、手続き・心理的負担が増大するなどが考えられる。配偶者の企業としても、公にはしないが、一旦扶養を離れ再度加入の場合、決して良い気分にはならないだろう。

 

厚生年金の適用幅拡大と並行して、いつも議論されるものに「配偶者控除の撤廃か、引き下げ」が議論されているもの、その為。結局この壁が、パート・アルバイトの攻防となっている。

配偶者控除の額で、パート・アルバイトも調整して働いているのが、現実。私の知り合いの働いている職場などは既に、51人以上の適用に備え対策を練っている。

つまりその職場は一人の人間の週に働く時間を減らし、多くの人間を採用して、細かい時間に区切り働かしている。これでは今回の政府議論も、全く意味を成さない。

前述した私の勤めていた企業も、常に法の抜け道を探す為、現場との乖離が激しい。今回に限り中小企業も、怒り心頭だと思う。今迄安い人件費で乗り切っていたが、今後は難しいと予測される。消費税のアップも痛い。

 

但し繰り返すが、一部の企業では賛成する動きも存在する。それはデフレ下であるからこそ、儲かっていた商売。つまり安い人件費だからこそ、成り立っていた企業と言える。

具体的に述べれば小売業、飲食店、農業、工場の生産ライン、配送、流通等。ここ数年、少子化と日本経済の好調により、人手不足と言われていた職場。

その様な職場は低賃金だからこそ、成り立っていた商売と言える。資本主義の下では、価格とは所詮「需給」で決まる。「ヒト・モノ・カネ」の価格も需給で決まる。つまり少子化で企業が新卒が欲しければ、新卒の価値が上がる。それと同じ。待遇と職場環境が改善されなければ、資本主義の下、人が集まらないとは当然の事。

 

では新たにデフレ下で、人が集まっていた職場に人を戻すには、どうすれば良いか。答えは簡単。人を増やせば良いだけ。デフレの下、人手不足の職場を補っていたのは、研修名目で来日した、外国人労働者。

現在の都会のコンビニ・ファーストフード・牛丼屋などの飲食店の店員さんを見れば、納得がいくと思う。つまり外国人労働者で補っていた。

地方ではまだ浸透していないが、都会では当たり前の風景となっあ。地方の場合、工場、配送関係、農業等が多いと思われる。

少し回りくどくなったが、つまり人を増やせば働く人が多くなり、人件費が減ると言う事。数を増やせば、その価値が減ると言う事。

同業の店が増えれば、利益が分散され、利益が減る同じ考えと言える。配偶者控除が撤廃、若しくは限りなく低く設定されれば、余程の収入がない限り、自ずと100%の人間が働かざるを得なくなる。すると労働者が過多となり、人件費が抑制されるという考え。

 

政府が生涯労働を推奨する訳

今年の春頃、政府の金融庁が、老後年金だけで生活するには、心許なく更に2000万円以上の蓄えが必要と発表。物議を醸しだし、政府側が慌てて金融庁の発表を無理やり撤回させる騒動となった。実際、あれは本当の事だと思う。

私としては、2000万円でも足らないと思う。政府としては、あまりにも事が大きくなった為、慌てて火消しに走ったと見ている。

先程から何度も述べているように、つまり年金が足らないと言う事。年金は既に、当てにならないと言う事を証明しているに等しい。

 

「年金が足らない為、国民の皆さんは老後も死ぬまで働いて下さい」と宣言しているようなものだ。あまりにもあからさまには言えない為、如何にも耳障りの良い、「生涯活躍・生涯教育・生涯労働」という言葉を羅列しているに過ぎない。ふとそんな政府の目論見が、垣間見られる。

 

今後益々、国民の生活苦、企業そして国家の運営は難しくなると予測される。少子高齢化は益々加速。国民間の所得の格差が広まり、極端な二極化が進むであろう。その時果たして日本と言う国が、存在しているかも甚だ疑問。

年金問題を何故いつも私が言及するのかと言えば、此れも以前述べたが、私の親が団塊世代で、私が団塊二世の為。

それも団塊二世で、最も世代の人口が多く、進学・就職・年金でもその煽りを喰った世代。つねに損した世代の為。

 

「失われた世代」、「見捨てられた世代」、「損した世代」、「今後も損し続ける世代」と言える。自分自身努力が足りないと思い、自分に言い聞かせていたが、歳を取るにつれ、人生自分の力では、どうにもならない事を思い知らされた世代とも言える。

 

人間、絶えず努力しなければならない。しかし努力をしても成果を出し評価されるかどうかは、又別の問題と悟らされた世代とも言える。

 

追記

2019年11月27日の政府見解では、2段階で拡大を検討中。 

2022年に「101人以上」の企業に適用。2024年10月に「51人以上」に順次引き下げる案が有力らしいが、あまり意味がない。

何故なら、何度も述べている様に、必ず法の抜け道がある為。

 

中小企業の経営者も望まないし、従業員も望まない。理由は、厚生年金の対象者になりたくない為。

それこそ一つの経営者から逃れ、収入を維持する為に、仕事(パート・バイト)の時間を調整して、他の経営者の仕事を幾つか掛け持ち(ハシゴ)しなければならない。

違う経営者であれば、厚生年金の対象にならない為。しかしそれは雇用者・従業員の両方にとり、あまり好ましい雇用形態とは言えない。

政府・事務方は足りなくなる厚生年金の対象者を増やし、年金増収を見込んでいるのであろうが、それは現場を全く知らない、机上の空論と言わざるを得ない。

 

(文中一部敬称略)

参考:年金・少子化・子育て・働き方改革、問題の全て根は同じ