ハチャメチャ刑事と老刑事との名コンビ復活『リーサルウェポン2』

★懐かしいアクション映画

 

・題名   『リーサルウェポン2』

・監督    リチャード・ドナー

・脚本    ジェフリー・ボーム

・製作    ジョエル・シルバー、リチャード・ドナー

・音楽    エリック・クラプトン、マイケル・ケイメン、デイヴィッド・サンボーン

・配給    ワーナーブラザース

・公開    1989年 米国

 

登場人物

 

◆マーチン・リックス:メル・ギブソン

パート1でもお馴染みの、ハチャメチャぶりを発揮するロス市警の刑事。パート1からマートフとコンビを組み、事件を解決する。

今回は南アフリカ共和国に関する事件であるが、事件が進むにつれ、前回登場した亡くなった、リックスの妻(ビッキー)の死の謎が判明する。

 

◆ロジャー・マートフ:ダニー・グローバー

パート1からリックス刑事とコンビをを組む、ロス市警のベテラン刑事。リックスとは凸凹コンビではあるが、次々に事件を解決していく。

そして家族思いの刑事。事件では反目し合いながらも、リックスの事を家族同様におもっている、心優しい人物。

 

◆レオ・ゲッツ:ジョー・ペシ

FBI側の証言者。今回の事件の犯人側の会計士を務める。少し変わった人物。リックスとマートフがレオの護衛を任される事になり、意外にもレオと今回二人が追っている事件との関連性を見出し、捜査に協力する事になる。

此の回以降、レオは準レギュラー的役割を果たす事になる。

 

◆アージャン・ラッド:ジョス・アクランド

南アフリカ共和国の領事官。極端な黒人差別主義者であり、外交官特権を利用し、悪事の数々を尽くす。

リックスとマートフの捜査により、徐々に身の危険を感じ、悪事で儲けた金と一緒に帰国しようとする。

 

◆ピーター・ボーステッド:デリック・オコナー

アージャン・ラッドの部下であり、汚い仕事をする集団の頭目。暗殺の中心的存在。冷酷非道であり、パート1でのリックス刑事の妻の事故死にも、深く関わっている。

 

◆リカ・デンハッス:パッツィ・ケンジット

南アフリカ共和国領事館に勤める女性秘書。事件でリックスと知り合い、恋に落ちる。

恋に落ちるが、その事が原因で上司のアージャンに疎まれ、始末される。

 

◆ティム・カバーノ:ディーン・ノリス

ロス市警に勤める刑事で、リックスの同僚。仲間とポーカーの最中、爆破され死亡する。

 

◆エディ・エステバン:ネスター・セラーノ

同じくロス市警に勤める刑事で、リックスの同僚。他の刑事と同様、ボーステッドの報復を受け殺害される。

 

◆トム・ワィラー:ジュニー・スミス

ロス市警に勤めるリックスの同僚の、黒人刑事。今回の事件に係り敵の報復を受け、殺害される。

 

◆トリッシュ・マートフ:ダーレン・ラブ

マートフの妻。パート1から登場していて、お馴染み。

 

◆リアン・マートフ:トレイシー・ウルフ

マートフの長女。パート1では、誘拐されリックスと父マートフに助けられる。

 

◆カリー・マートフ:エボニー・スミス

マートフの二女の末っ娘。パートの比べ、徐々に成長しているのが分かる。

 

◆ニック・マートフ:デイモン・ハインズ

マートフの長男。カリーと同じく、徐々に成長しているのが見て取れる。

 

◆署内の精神科医:メアリー・エレン・トレイナー

出番は少ないが、毎度登場する署内の精神科医。何気パート1の時と同様、リックスの行動に対し、何気に注意を払う。

しかしリックスはマートフと出会い、既にパート1の様な精神不安的ではなく、まともな精神を保っている。

 

◆爆弾処理班のベッカー:ケネス・ティガー

何気に登場する人物。リックスが拘束衣を脱ぎ、外れた肩を壁にぶつけいれる際、マートフの自宅トイレに爆弾が仕掛けられた際、頭として登場する。

続編のパート3でも登場する。

 

あらすじ

 

映画冒頭は、麻薬事件に絡みロス市警のリックスとマートフが不審な二台の車を追跡するシーンで始まる。追跡の末、不審者に逃げられるが、不審者が乗り捨てた車から、大量のクルーガーランド金貨(当時売買は停止されていた)が発見される。

 

不審者を逃した事、マートフが自宅にて脅迫された事で、一時的に事件を離れFBIの証言者(レオ・ゲッツ)の護衛に付く事になる。

護衛に付いた二人だが、レオは今二人が追っている事件に、深いかかわりを持っている事が判明する。二人はレオを連れ出し、事件解決に進む。

 

事件解決を図るリックスとマートフ、その他の同僚だが、事件を進める上で思わぬ壁に遭遇する。事件の犯人は外交官特権を利用した、領事官を始めとする職員連中だった。

連中は、外交官特権を利用、麻薬密売に手そ染め、莫大な金をため込んでいた。二人の前に壁が立ちふさがるが、二人はいつもの型破りな方法(アウトロー)で、事件を解決していく。

 

事件を解決していく中に、過去の事故死したリックスの元妻(ビッキー)の死の真相も明らかとなる。真相を知ったリックスは怒りに燃え、領事館連中に復讐する。

 

要点

 

劇中冒頭でリックス刑事とマートフ警部補が、赤い西ドイツ製の(当時)のBMWを追跡するシーンで幕を開けるが、追跡中の無線の声と西ドイツ製の車が、物語の伏線となっている。

以前『リーサルウェポン1』、『ダーテイハリー1、2』でも述べたが、当時のアメリカ社会の世相を反映している。

当時アメリカ社会は、『パックス・アメリカーナ』と呼ばれた、第二次大戦後の繁栄が終わりをつげ、寧ろ敗戦国であった日本・西ドイツに貿易面で圧倒されていた。

その為アメリカ社会では、日本製・西ドイツ製が溢れていた時代だった。

 

それを表し半ば皮肉るような形で追跡の際、追跡する相手の言葉が分からず日本語・ドイツ語と捩り、西ドイツ製の車をアメ車が追跡して、逮捕?(実際は逃げられ、クルーガーランドを押収)されるシーンとなる。

リックスとマートフの会話でとうとうロスのラジオ局も日本に買収されたと発しているが、これは当時日本がバブル経済の真っ只中で、日本のソニーがコロンビア映画を買収した事を捩ったもの。

アメリカ社会では当時、「アメリカの魂を買った」とソニーは罵られた。

更にほぼ同時期、三菱地所がアメリカの象徴である「ロック・フェラーセンター」を買収した時期とも重なり、アメリカ国民には金に物を言わせた金満日本との印が強かった。

その為アメリカ国民の反日本の感情も強かったと言える。

何気ないシーンにも見えるが、伏線・刷り込み。しかし追跡の際、何故マートフの妻の新車で犯人を追跡しているのかは、謎。

 

リックスとマートフがレオを連れ南アフリカ共和国領事館を訪れ、ホテルでレオを襲撃した犯人を見つけ追跡した際、追跡された犯人が牽曳き車を奪い逃走する。

その時、牽曳き車に繋がれたていた車が、何故か日本製のホンダ(シビック)だった。

あまりにも、露骨なシチュエーションとも言える。

 

更にマートフ一人自宅にいる時、トイレに爆弾が仕掛けれられ、リックスがマートフを助けるシーン等も似たシチュエーション。

爆破でトイレの便器がふってきてアメ車にあたっても、丈夫にできている事を表現している。

 

穿った見方をすれば、今回の主題となる南アフリカ共和国は当時、極端な人種差別(アパルトヘイト)政策を実施していた。

第二次世界大戦中、ドイツが実施していたユダヤ人隔離政策を鑑みれば、何か同じ事を想像させるシーンとも言える。今回の場合、ユダヤ人ではなく、アフリカ系アメリカ人(黒人)ではあるが。

 

冒頭リックスとマートフの追跡を振り切り逃亡した男が後に領事に処刑されるが、処刑された男の名前は、ハンスだった。ハンスはドイツ系によくある名前。

話の展開上、アメリカ社会での黒人差別を微妙に取り入れた話となっている。

南アフリカ領事館の捜査で陣頭指揮を執るマートフの家に、脅し・脅迫に行くシーン。

マートフ夫妻は縛り、二人を脅迫する際放った言葉は、差別用語そのものだった。

 

今回登場し、後に準レギュラーとなるレオ・ゲッツはFBIの証言者としての設定だが、リックスとマートフとサブウェイでサンドウィッチを購入した際、ツナ(鮪:まぐろ)のサンドウィッチが嫌いだと呟くシーンが存在する。

此れも鮪を寿司として食べる日本人を、暗に皮肉ったシーンとも言える。

 

因みにレオは細かく、綺麗好き。身柄はかくす為、リックスのトレーラーにいた時、綺麗にリックスの部屋を掃除している。

更にマートフの家で食事する際、リックスとマートフが冷蔵庫に残っていたスパゲッティを食べる時も、皿を使わないのと述べている。

この点は流石に細かい作業をする会計士といった処であろうか。

 

劇中の進行上、リックスは南アフリカ共和国の秘書の女性(リカ・デンハッス)と仲良くなるが、二人は敵に拉致され、リックスが拘束衣を着せられ川に沈められる。

沈められる直前、パート1で写真のみ登場した元リックスの妻(ビッキー)の、死の真相が明らかとなる。

リックスが沈められる前、既に領事館の秘書リカは沈められていた。

この時、リックスはロス市警の以前、シカゴ市警にいた事実が判明する。

ビッキーの死の伏線も、マートフの妻トリッシュとの会話の際、洗濯物の中にあったペンについての際、登場している。

因みに此の拘束衣を着せられたリックスが、肩の関節を外し脱出するシーンも冒頭にて伏線で登場する。

この場面で登場する署内の精神科医(メアリー・エレン・トレイナー)も毎度ながら、良い味を出している。以前も述べたが、ダイ・ハード1では、ロスの地元TVのキャスター役として、出演している。

 

パート1とパート2は、密接に繋がっている。つまりリックスの妻の死は、今回の事件の敵方の相手の仕業だった事が判明。

妻の死、同僚の刑事達が次々に犠牲になった事を知り、リックスは復讐に燃え、マートフと二人で領事館を襲う事になる。

 

リックスとマートフに追い詰められた領事(アージャン・ラッド)が最後に勝ち誇ったように外国領事館特権を振りかざし、罪を逃れようとするが、例の如くマートフが勝負を決める仕草として首を捻り、「無効だ」と吐き捨てシーンが痛快。

見事に悪徳領事官アージャンは、額を撃ち抜かれる。

因みに、額を撃ち抜かれた領事の持っていた銃がモーゼル(ドイツ製の銃)である事も、冒頭の西ドイツ車を登場させた事にも何か通じるシーンとも言える。

 

此れも以前紹介した映画のブログでも述べたが、粗同じ時代に公開された『ダイ・ハード』シリーズにも、同じシチュエーションが存在する。

此れは二つの映画製作に加わった「ジョエル・シルバー」が、深く関わっていると見える。

『ダイ・ハード1、2』では、もろに日本・西ドイツVSアメリカの様な構図で描かれているのが、理解できる。

やはり当時アメリカ社会は、経済的に打ちひしがれて諸外国に脅かされていた為、自信を喪失したアメリカ国民の心情に、風穴を開ける意味合いがあったと思われる。

 

劇中の重々しい内容ではあるが、マートフの娘リアンがTVCMに初主演した際、内容が分からず父マートフがビデオをセットして、皆で観賞しようとする場面が笑える。どこの父親でも同じ心境であろう。

 

一緒に観賞する場面にて、今回マートフの家の増改築を請け負っている大工さんも参加しているが、何気に大工さんも伏線。

増改築の時、マートフがリックスを自宅に連れてきた折、大工が使う自動釘打ち銃の音を、銃音と勘違いして二人が一瞬銃を抜くシーンがある。

此れは劇中マートフが敵に襲われる時、拳銃の代わりに釘打ち銃を使うシーンの伏線。

 

後日、TVCMを見た署内の刑事が面白可笑しくマートフの机の上にTVCMの商品を捩った飾りものをしたのが、如何にもアメリカ社会にみられるユーモアのセンスと言える。

リックスとマートフが南アフリカ共和国領事館の連中を挑発する為、レオとマートフが南アフリカ共和国領事館を訪れ騒ぎを引き起こす。

その時何故レオは、南アフリカ共和国領事館の連中に気付かれなかったのだろうか。

後の展開を見れば、不思議だった。

 

騒ぎに紛れ、リックスが領事館に侵入するが、正確に言えばリックスは不法入国を果たした事になる。一応領事館は、南アフリカ共和国の領土となる為。

しかしリックスの挑発的行為が原因でリックスを始め、マートフ、その他の署内の同僚の刑事が南アフリカ領事館の職員ボース・テッドに命を狙われ、殺害される羽目になる。

その時水槽を爆破したリックスは、領事のアージャンを態とだが、「アドフル」と呼んでいる。アドルフとは勿論、「アドルフ・ヒトラー」の事。

人種差別主義者と言う意味で、使用していると思われる。

 

何気にマートフがリックスが領事館で掴んだメモの内容を解明する為、自宅に戻りビデオを再生する際、当時まだ有名な会社でなかった、シューズメイカーの「ナイキ」のメッセージとCMが挿入されている。

何気に宣伝として映画に使われる手法。

 

しかしリックスが妻の死の真相をしり、復讐の為南アフリカ領事館の建物を支えている土台をリックスの四駆で破壊するシーンが存在する。

実際可能なのだろうか。当時見た際、不思議だった。

 

毎回思うが、他の映画でもよく見られるが、銃を撃ち鎖を斬ったり、錠を外すシーンあるが、実際は難しい。

現実では跳弾になり、危険。しかし何故か映画等で暫し使われるシーン。

 

しかし船のコンテナの中味が凄い。1000ドル紙幣の山。どれだけ阿漕な行為をして稼いだのか。

一瞬マートフが1000ドル紙幣の札束の一つを掴み、「此れ一つあれば子供を大学に遣れるのに」と漏らしたのが印象的。

コンテナに閉じ込められ二人が脱出した際、コンテナを運ぶスイッチが映るのが伏線となっている。

リックスとボーステッドが最後の格闘後、リックスが最後に使用したのが、此のスイッチだった。

 

事件解決後、二人の笑顔がなんとも爽やか。パート1に続き、ボロボロになったリックスをマートフが抱き留め映画は終了する。二人の仕事を越えた友情が、又深まった瞬間と言える。

「パート1」でリックス刑事に見られた悲壮感は、もう既に見当たらない。

 

追記

 

今回南アフリカ共和国の黒人差別に対する、抗議を含めた内容となっているが、主役のマートフ(ダニー・グローバー)は私生活において、アフリカのスーダンの黒人差別のデモに参加して逮捕、その他にもデモに参加、不法侵入などで逮捕されている。

劇中にて南アフリカ共和国領事館にて、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策に抗議するシーンが見られるが、どうやら本人も映画だけではなく本音のようだ。

 

マートフの自宅にて爆弾が仕掛けられ、助けられるシーンが存在するが、警察の爆弾処理班のリーダー(ケネス・ティガー)として登場する刑事は、同じシリーズ『リーサルウェポン3』でも登場する。

登場するシーンは、リックス刑事と警察内部捜査官(女性:レネ・ルッソ)、男子トイレで話合い際、登場する。その場面は、なかなか愉快。

 

映画は約20年前に作られたが、当時と様相が異なり南アフリカ共和国もかなりの変化を遂げたた。

南アフリカ共和国の黒人解放の父と言われた「ネルソン。・マンデラ」氏も映画公開後、獄中から解放され(1990年)、1994年には、南アフリカ共和国の大統領に就任している。

 

まだ記憶に新しい日本で開催されたラグビーWCでは、南アフリカ共和国は見事に三度目の優勝を成し遂げた。

チームはもう白人ばかりではなく、白人と黒人の混成チームであり、主将は黒人選手だった。まさに上手く融合した形ではないかと思う。

南アフリカの外交職員がリックスのトレーラーを襲い、リックスと女秘書(リカ)が脱出する際、パート1から登場するコリー犬(サム)がいるが、この時を最後に以下のシリーズでは見かけなくなる。

シリーズを通じ言えるが、マートフ一家の家族がシリーズを重ねる事に子供達が徐々に成長していく姿が見える。

 

(文中敬称略)

前回:破滅型刑事と年配刑事とのハチャメチャ事件劇『リーサル・ウェポン』