米価高による、令和の米騒動。その問題点は
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皆様、去年の秋頃から米の値段が高いと云う報道を耳にした事はありませんでしょうか。
今回は,米価に纏わる話です。実は私は元農家の小倅でした。
性格に言えば、孫になりますが。
目次
現在米価は、例年の約1,7倍
昨年の夏頃からだろうか、米価が上がったのは。私は然程、気にしていなかった。
家系が元農家で自作でないが、その伝手により例年通りの価格で米を入手する事が出来た為。
マスコミ報道によれば、徐々に米価は高騰。今では平年の約1,7倍との事。
消費者にすれば流石に上がり過ぎた感はあるが、元農家の私とすれば、あまり上がり過ぎたという感覚はない。
何故なら今の価格でも農家はトントンか、まだ赤字の可能性がある為。
消費者は値上がりした為、農家は当然利益があると思うかもしれない。
それについては次章で説明したい。
米農家の問題点、それは高齢化と慢性的な赤字
いきなりタイトルで結論を述べたが、米農家は課題は高齢化と慢性的な赤字です。
高齢化は後継者不足にも繋がる。毎年米を作っても、黒字になる事はありません。
先ず申し上げるべき事は、農家はそもそも「個人事業主」。サラリーマンではありません。
ですから今の時期、「確定申告」が義務となります。
個人事業主の為、資金調達は全て自分で賄う必要があります。
大概自分の貯蓄か、農協からの借入、地元信金からの借入になります。
色々苦労を重ね、実りの秋に収穫しても、赤字になる事が往々にしてあります。
何故赤字になるのか。それはやはり、 米価が安い為 。
米価が安い為、会社で喩えれば、収入に対し、コストが上回ったという事になります。
此れが偽わざる米農家の現状です。政府も消費者も放置していたというのが今日の農家の実情。
毎年米を作っても赤字の為、当然その息子や親族は、継ぐ意思はありません。
喩え継いでも他の仕事の収入で、赤字を補填するという事が続きました。
当然徐々に農家の体力が減っていくのは、一目瞭然。
資本主義の下では、「ヒト・モノ・カネ」は需給で決まります。
赤字が続く産業に、若い世代が入る可能性は甚だ低いと言わざるを得ません。
繰り返しますが、此れが日本の農家の実態です。
それ故、赤字を回避する為、休耕田にする農家が増加した。
何を隠そう、私の先祖の家も、今は米作をしていない。
親の世代で米作を諦め、農村を離れ都市部に越してきた。私は元農家の孫に当たる。
休耕田にするのが嫌で毎年作っている農家もいるが、赤字が続いている。
では何故、「作っていない田を売らないのか」という疑問が湧くかもしれません。
田畑は農地法の絡みがあり、売りたくてもなかなか売れないのが現状です。
農地法というのは何ぞや、という方がいるかもしれません。次に農地法について説明したいと思います。
農地が簡単に売れない理由
農地が簡単に売れない理由。それは「農地法」がある為。
農地法とは、簡単にいえば「農地を守る為に、転用や売買が容易くできない」という法律です。
本当に簡単に述べましたが、もし売買するのであれば、市町村の農業委員会の許可を得なければなりません。
その許可も譲渡される者は、農業を行う事を前提で購入しなければならない。
つまり買い手は農地を取得後、必ず就農しなければならないという事になります。
所得した農地を農地以外の目的で使用してはならないと云う事。
此れが売買のハードルを高くしている原因。此れは賛否両論、色々あるが。
就農していない私が云うのも何だが、私はそれで良いと思う。
日本の食料事情を考えれば、致し方がない。
前述したが、個人事業主の為、自分の田畑以外、手をつけれないと云う事。
これは突き詰めれば戦後のGHQまで遡る。所謂、「農地改革」。
農地改革が、今になって響いてきた。
云いたい事は、農業は個人事業を止めて、法人化するしか生きる残る術がないと云う事。
法人化にすれば、戦前の地主制度の復活と唱える人もいるかもしれないが、法人化して株式公開をすれば、それは防げる筈。
前述したが、資本主義では価格は需給で決まる。儲かると思えば、勝手に人が集まる。
そうすれば長年の赤字体質も解消できる。
今迄米価は安すぎた。此れが農家の本音。
日本人は国産米に拘る為、政府や農協が無理やり価格を抑えてきた。
今回の騒動で消費者は自覚して欲しい。今迄が安すぎたと云う事に。
時々マスコミ等で黒字農家が紹介されるが、その農家は大概米作でない。
何か単価の高い農作物を作っている農家。高原レタス、メロン、イチゴ等。
今回は米作農家の為、説明は割愛します。
大昔の1993年、時は平成の御世だったが、その時も米が不足した。
不足した米を政府は、外国米を輸入する事で解消しようとした。
処が国産米に対する国民の拘りが強く、結局政府は頓挫した。それと同じだろうか。
普段は安くて気にもしないが、いつもより高くなれば消費者は大慌てする状況に。
昨今の長引く不況と円安、更に物価高が重なり国民生活は疲弊している。
人件費、原料費、光熱費、燃料費の高騰で値上げの嵐。
小売業、飲食業、建設業、運輸業もそうだが、農業も同じ。
更に農業の場合、天変地異等の影響も受けやすい。作物の被害を受ければ、その年はほぼ収入ゼロ。
此れ程、リスクが高い商売もない。此れが農業の問題点と言えるのではないだろうか。
相続登記義務化の影響
昨年4月、政府は何代に渡り、名義を変更していない土地に対し、相続登記の義務化を定めた。
俗にいう、「相続登記の義務化」である。
この法律で何が生じるかと言えば、名義変更により土地名義を明確にし、土地売買を活性化させるのが目的。
この試みは決して悪いとは思わない。私も大賛成。猶予期間は3年。
3年の間に相続を明確にして、法務局に名義届をしなければならない。
都会に住む人は分からないかもしれない。
何が問題かと言えば、やはり農地法に絡む土地相続が原因。
前述したが、私の親は農家であり乍、農業を捨て都市に移住した。
当然だが、相続の権利を有する。
他の親族も相続権があるが、他の親族も全て都市に住み、違う仕事をしている。
鋭い方であれば、もうお分かりだと思う。
相続登記義務化の為、戸籍謄本と土地台帳を調べた処、何と土地建物、田畑などが3代前の名義となっていた。
つまり私にすれば、曾祖父に当たる人物。
名義変更をする際、曾祖父から派生した家系を一つ一つ当たる必要がある。
此れは大変な作業。相続権のある人物一人一人に事実を伝え、確認を取る。
本人達の意向をくみ取り、再び協議する。遺産相続は必ず揉めるという典型。
まさに、膨大な作業。因みに、現在進行形で協議が続いている。
その中でも取り分け問題なのが、やはり農地。
農地の名義を変更して、一体誰が継ぐかと云う事。
結果を云えば、誰も継ぎたがらない。理由は前述した通り。
今では全員が農家を捨て、都市で暮らしている。今更、農家(農業)など継ぐ気はない。
農地法の関係で就業する意思がない為、名義変更や売却は難しい。
喩え名義変更はできても、売却は難しい。此れが相続登記義務化の足枷になっている感が否めない。
農地以外であれば、最悪更地にして固定資産税約10年分を国に払い、引き取ってもらう方法がある。
しかし更地にするには、約600万円かかり、固定資産税の10年分というのが大きな負担。
農地に比べれば、マシかもしれないが。
最後に
今回、思いつくまま米価高騰による農業の問題点を挙げたが、此れに限らず現在の農業は問題が山積している。
此れも長年政府が農業に対し、真剣に取り組んでこなかった結果と言える。
今後食料生産と自給率を考え、政府は衰退した農業政策の大きな見直しを図る必要がある。
そうしない限り国産米は高級品となり、日本の国民が国産米を食べれない日が来るかもしれない。
奇しくも江戸時代末期、米価が高騰。「一揆・打ちこわし」が乱発。倒幕した。
日本人は大人しすぎる民族と云われるが、ある一線を越えた時、怒りが爆発する。
特に米に関しては、日本人は不思議と敏感に反応する。やはり消費量が減ったと雖も、まだまだ主食。
今迄の日本の歴史を振り返れば、人間食えなくなれば、やはり最後は暴動。
それも大概、米が原因となる事が多い。
政府もその事を鑑み、舵取りをしなければ、政権転覆もありえると心した方が良いと思う。
今年の夏、参議院選挙が行われるが、その時が一つの指標となるかもしれない。
今回の米騒動を見て、そんな思いが頭を過った。
(文中敬称略)