出演者はよく分からないが、何故か面白い映画『ジャッカルの日』
★懐かしい洋画シリーズ
・題名 『ジャッカルの日/The Day of the Jackal』
・配給 ユニバーサル 1973年米国・カナダ公開
・監督 フレッド・ジンネマン
・脚本 ケネス・ロス
・製作 ジョン・ウォルフ
・音楽 ジョルジュ・ドルリュー
・原作 フレデリック・フォーサイス
目次
出演者
◆ジャッカル :エドワード・フォックス
◆クロード・レベル警視 :マイケル・ロンズデール
◆内務大臣 :アラン・バデル
◆モンペリエ夫人 :デルフィーヌ・セイリグ
◆デニース :オルガ・ジョルジュ=ピコ
◆キャロン :デレク・ジャコビ
◆偽造屋 :ロナルド・ピックアップ
◆銃製造屋 :シリル・キューザック
あらすじ
実際にあったド・ゴール暗殺をモデルにした小説を描いた、「フレデリック・フォーサイス」の小説を原作とした映画。
1962年8月、フランス大統領「シャルル・ドゴール」はアルジェリアの独立を認めた。
独立に反対する軍人・右派OASは政策の転覆を図る為、ド・ゴール暗殺を企てた。
しかし計画は悉く失敗。
地下に潜ったOASは、オーストリアに潜伏。外国から専門の殺し屋を雇う事にした。
雇った殺し屋のネーミングは「ジャッカル」。ジャッカルは警察の捜査網を搔い潜り、パリに到着。
ド・ゴール暗殺寸前まで漕ぎつける。
戦勝記念日にてド・ゴール暗殺の為、ジャッカルはスコープを覗き、トリガーを引いたその瞬間。
見所
初めにド・ゴール暗殺未遂のシーンから幕を開ける。
ド・ゴールという人間はつくづく、強運の持ち主と思われた。
銃弾140発以上浴びながら、無傷だった。
第二次大戦中のド・ゴールの歴史を振り返っても、改めて強運の持ち主と言える。
やはり天下を獲る人間は、運が強くなければダメと言う事であろうか。
劇中最後でも、ド・ゴールの強運さが遺憾なく発揮される。
ジャッカルの報酬が莫大な為、OASは大掛かりな銀行強盗・宝石商などを襲い、大金を作る。
しかしあまりにも行動が大胆だった為、政府側にOASが何か陰謀を企んでいる予兆を政府側に掴ませてしまう。
ジャッカルが偽名でパスポートを取得する為、墓場で幼少期に早逝。
一度もパスポートを取得していない人間を探すなどは、なかなか奇想天外な方法。
思わず、成程と唸った。
空港でデンマーク人のパスポートを盗むシーンは、あまりにも大胆すぎて周囲の人間にバレないか逆に不思議に感じた。
後ろの老紳士は、気付かなかったのであろうか。今なら防犯カメラでバレバレ。
パスポートの偽造屋が妙に軽薄。普段はブルーフィルム(ピンク写真)などを売り、生計を立てている模様。
結果として軽薄さが故に、死を招く羽目となる。
外国映画で良く見られるが、道路にあまり白線や横断歩道のようなものがない。
劇中でジャッカルが、凱旋門広場の周辺の道路を横断している場面があるが、映像でも見当たらない。
ローマ、スペインの観光地でも似た環境。何気に気になった。
非公式に、各国の情報機関の思惑が入り乱れているのが面白い。
陰で違法行為を繰り返しているのも、諜報界では当たり前。
世界では、暗黙の了解とも云える。表立て騒ぐのは、日本ぐらいであろうか。
情報機関を持たない日本のアレルギーでも言おうか。
フレデリック・フォーサイスは、元MI6に関係があった。
世界は所詮、腹黒い。ウォレンスキーを非合法的に拉致、拷問時の死亡などは典型。
そのお陰でウォレンスキーが呟いた、「ジャック」という一言。
此の一言が後の捜査の手がかりとなり、結果としてド・ゴールを救う事になる。
盗聴・機密漏洩防止の為、タイプで打ったものを直にバイク便で内閣府に届ける処が、何気に細かい。
メール・電話を使う現代でも、情報機関では昔ながらの手段を用いる事があると聞いた。
欲張り過ぎたイタリア人の偽造屋。案の定、始末される。
ジャッカルが偽造屋の死体を箱に入れ、鍵を掛けた後、一丁上がりといった仕草で箱をポンと叩くシーンが何気に面白い。
偽造屋本人も言及していたが、国柄による国民のイメージを描写したものだろうか。
ジャッカルが森で銃の試し撃ちをする際、歩幅でターゲットとの距離を測っているのが映像から分かる。
試し撃ちの際、3発は銃の狙いを調整する為。4発目は、水銀弾。
水銀弾は命中した瞬間、対象物を粉々に破壊する。故に当たった瞬間、対象物のスイカ?が炸裂した。
スイカは実際に、ド・ゴールの頭を意識したもの。
車の排気パイプに改造銃の銃身を隠すが、実際クルマの排気口や射撃する際、銃に影響がないのか甚だ疑問に思った。
フランスに偽造パスポートで入国しようとする際、入国審査の長らしき人物がジャッカルを疑わしいと思いながらも入国を許可したのは何故か。
まだジャッカルの情報が伝達されてなかったのであろうか。
ジャッカルが連絡員に電話をしてジャッカルの名が相手方(フランス政府)に知られたと分かった時、ジャッカルがパリとイタリア標識の分岐点で、一瞬迷う描写が何気に細かい。
ジャッカルの揺れ動く心情を表している。
ジャッカルの行為で一つ疑問なのが、車の色がバレた時、青色の車を塗装した事。
塗装した直後に事故をおこし、廃車にしてしまうのが何とも不思議。
なんの為の作業であったのか、全く分からない。
ジャッカルは、ニースのホテルで出会ったモンペリエ未亡人を誑(たぶら)かし、未亡人宅に潜伏。
しかし未亡人はあまりにも深入りし過ぎた為、ジャッカルに始末される。
ジャッカルはその場で変装。全く別人の、デンマーク人教師に成り済ます。
翌朝早く未亡人宅を抜け出し、列車でパリに向かう。
一方、レベル捜査官はモンペリエ未亡人が殺された事実を知り、ジャッカルを殺人犯として公開捜査に乗り出す。
ジャッカルが列車でパリに向かったのを知り、レベルと部下はパリ駅に向かうが、一足違いで逃げられてしまう。
ジャッカルは、パリ市内のサウナで知り合った男の家に潜伏する。
男が何故、自宅にジャッカルを招待したのかは謎。
内閣会議で内部通報者を突き止める為、盗聴。通報者を突き止めたレベルだが、内務相に
「どうして突き止めたのかね」
と質問された際、レベルが、
「此処にいる人間の全ての会話を盗聴しました」
と返答した瞬間、メンバーの皆が凝り固まり、あっけにとられ棒立ちになってしまったのが印象的。
どの国も役人という人種は、めんどくさい仕事を部下にやらせ、事が完了する寸前、横からしゃしゃり出て来て、手柄を横取りしようとする。
ジャッカル探しが佳境まで迫った処で、レベルは内務相から役を解任される。
ジャッカルを自宅に招いた男が殺害される寸前、床に落ちたロブスターが何故かもの悲しい。
床に転がった際、もがいているのが映像音から確認できる。
結局レベル抜きではジャッカルを見つける事ができず、レベルは解放記念日当日に再び内務相からジャッカル探索の為、呼び戻される。
これも役人の体質をよく表している。
厳重な警備を搔い潜る為、ジャッカルは傷痍退役軍人で片足を失った老人に扮した。
ジャッカルは、偽造身分証明書と偽退役軍人書を掲示。首尾よく警備網を突破した。
行き先は狙撃をする為、以前下見をしたアパートの最上階。ジャッカルは合鍵をつくっていた。
尚、狙撃の為の銃の隠し場所は、傷痍退役軍人を装う為の小道具として利用した、松葉杖本体だった。
松葉杖を解体、銃を組み立てるジャッカル。
時は既に、ド・ゴールが退役軍人のメダル授与の為に現れる直前。
ド・ゴールが現れ、ジャッカルはトリガーを引く。
しかし偶然にもド・ゴールが頭をかがめた瞬間、弾はド・ゴールの頭をかすめ、地面に着弾する。
ここにもド・ゴールの運の強さが現れている。
二発目を装填した時、警備の警官から警備網を突破した人間がいると聞いたレベルが警官と供に、ジャッカルの部屋に突入する。
ジャッカルは一発目で警官を撃ったが、次の弾の装填が間に合わず、レベルの機関銃で銃殺された。
調査の結果、ジャッカルはイギリス人であったのか、他の国籍であったのかは不明。
国籍不明のまま、パリ郊外の無縁墓地に埋められ、映画は幕を閉じる。
今回イギリスの諜報機関は、ジャッカルがイギリス人らしいという理由で非公式だが、積極的にレベル(フランス政府)に協力した。
しかしジャッカルはイギリス人かどうか不明と言う結果で、イギリスは何とか面目が保てた。
それとも事件が無事解決した為、フランス政府は国際情勢を鑑み、イギリス政府にジャッカルは不明だったと態と報告したのかもしれない。
追記
全体に全く無駄のない、スムーズな流れとなっている。2時間を超える作品となっているが、不思議とそんなに長くは感じない。
ド・ゴール暗殺に失敗。処刑されたバスチアン中佐の元恋人役デニーズ(オルガ・ジョルジュ=ピコ)は、1968年作:「さらば友よ」で、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンに罠にかける役で出演している。
ジャッカル捜査の担当になった副総監レベルの助手キャロン(デレク・ジャコビ)は、同じフレデリック・フォーサイス原作「オデッサ・ファイル」:1974年作で、偽造屋として出演している。
因みに、オデッサ・ファイルも、出演者の名が知らなくても楽しめる映画。
ジャッカルがイタリアのジェノバで密造銃屋に向かう際、音楽が聞こえるが、その音楽は日本で流行った「私はピアノ」の曲に似ている。
寧ろ年代から云えば、映画の方が古い。それを考えれば、逆に日本のミュージシャンが真似たのかもしれない。
劇中の最後場面の独立解放記念日の映像は、本当の映像を採用した。
(文中敬称略)