年金の充実と云う名の増税。パート・アルバイト年収の壁、崩壊は間近。

10月27日、衆議院総選挙が行われ、結果として自公政権与党の過半数割れとなった。
各党の選挙公約の中、年金に関する項目が一際注目された。更に年収の壁について。
今回、選挙後俄に注目された年収の壁について述べたい。
目次
年収の壁とは
年収の壁とは、主にパート・アルバイトで働く労働者の年収の制限を示す言葉として使われる。
具体的には、パート・アルバイトで働く年収が130万円、或いは103万円を超えない為の制限枠と云えば分かり易いかもしれない。
何故、130万円か103万円を対象にしたのかと云えば、この金額が夫婦であれば、何方かの配偶者扶養控除になる為。
敢えて配偶者としたのは、主夫と云われる層も出現する為、昨今の事情を踏まえ表記した。
しかし大概は主婦を指す。主婦は夫の扶養控除の枠内で、パートとして働く。
130万円と103万円の違いは、夫の年収で対象となる制限が変わる。
それは今回の話題とはあまり重要でない為、区別の仕方は問題にしない。
今回は統一して、年収の壁とします。
年収の壁を超えた後
今回の話題である年収の壁が崩壊した後、起こる事象と云えば。
最も端的な言葉で示せば、それは
増税
何故、増税かを説明すれば、
年収の壁を超えた為、扶養枠で働いていた配偶者は扶養から外れ、勤め先の社会保険に加入しなければならなくなったと云う事です。
配偶者扶養の話は、過去のブログ年金を述べた時、何度も説明しました。
勤め先の社会保険に加入義務が生じたと云う事は、パート・アルバイトではなく、勤め先の正社員として働く事を意味します。
正社員と云う事は、当然勤め先の雇用保険は勿論の事、健康保険・厚生年金に加入しなければなりません。
※40才からは介護保険も必要
実は此の話、前回のブログにも関連します。
前回私のブログと云えば、副業でやっていた深夜のコンビニバイトをクビになったという話でした。
私は3年前から、社会保険の対象者でした。
しかし「雇用主の都合つまり経費削減の為、又私自身、あまり波風を立てたくない」との理由で無保険で働いていました。
だが今回の社会保険の適用拡大で、とうとう雇用主は年金事務所・税務署等に隠し通す事ができなくなったと云うのが真相。
私は健康保険・厚生年金はおろか、雇用保険すら掛けて貰えませんでした。
当然失職後は、失業保険も貰えません。
私に限らず、今回の10月の社会保険の適用拡大で失職、転職した方もいると思います。
更に11月の通称「フリーランス新法」の施行で、失職した方もいるかと思います。
私は、この二つに抵触していました。
雇用主は社会保険の削減が目的で、会計上、私を業務委託か、フリーランスと扱いとして、経費を浮かしていました。
雇用契約であるにもかかからず、実態を歪め、節税の為、業務委託か偽装フリーランスにしていたと云う事です。
勿論、本人の事前通知と承諾もなく。
雇用主が何故無理やり業務委託かフリーランス扱いにするのかと云えば、前述したがやはり社会保険の削減が目的。
業務委託・フリーランスであれば、労働基準法の適用外となり、労働基準監督署の力も及ばない。
更に労働災害も適用されず、節税対策にもなります。
節税対策の手法は、委託外注費を税金の対象となる消費税から経費として引く。
フリーランスは謂わば会社側にとり、
労働基準法・社会保険を気にしなくてよい、安価で融通の利く労働者と云える。
しかしこのやり方は、もう使えなくなりました。理由は、去年から始まった「インボイス制度」の為です。
委託者・フリーランスは個人事業主扱いとなり、請求書の発行が必要。その為、インボイス登録が必須となりました。
インボイス登録がなければ、税務署は必要経費と認める可能性は低い。
ですから、この手法は今後無理と云う事。もし税務署の調査に入られた場合、「脱税行為」と見做されます。
従って、私は10月の社会保険適用の拡大、11月のフリーランス新法の両方に該当する為、雇用主からクビを切られました。
あともう一つ理由を挙げるとすれば、私はその職場に、4年10ケ月勤めました。
此れも退職後に知りましたが、その職場は長くて5年までの契約だったそうです。
5年経つと正社員として扱わざるを得なくなり、あと2ヵ月という処で、私はクビを切られたと云う事。
まあ此れも、後の祭りですが。
結局、知らなければ雇用主に都合よく扱われ、損をすると云う事でしょうか。
急遽出た、年収の壁、撤廃報道
令和6年11月8日の早朝、ネット上で、厚生労働省(以下、厚労省)が年収の壁の撤廃を検討するという報道がされた。
この報道を見て、私は聊か驚いた。余りにも早急すぎるという理由で。
実はこの撤廃の検討は、以前から厚労省でされていた。
しかし改正は約4年後、2028年10月頃かと予測されていた。
処が急遽、この時期に報道された。何故だろうか?
結論を先に云えば、
厚労省は、一日も早い財源確保の必要性を感じ、法案の審議、成立、施行を目指したと思われる。
つまり国会運営が迷走しない中に、早めに決めてしまおうという意向が透けて見える。
理由は繰り返すが、「早急な財源確保」の為。
もしこの来年の通常国会で審議され、通過となれば、来年10月には実施される見通し。
私が余りにも早急すぎると云う所以。
今年10月に社会保険適用拡大、11月にフリーランス新法が施行されたばかり。
更に来年10月、年収の壁撤廃となれば、労働者側はおろか雇用主側も混乱が生じ、労働現場はにっちもさっちもいかなくなるだろう。
それだけ大きな改正。
繰り返すが今年の10月、11月の法律による労働条件の変化で、何人かは失職、転職した。
しかし来年の改正で、労働者・雇用者がした行為は、全く無意味となる。
では次の章で、今回報道された内容を吟味したい。
年収の壁、撤廃の内容
前回も述べたが、今年10月の社会保険適用拡大の対象基準は
・週の就業時間が、20時間以上である事。
・賃金は8,8万円以上である事。
・2か月以上、勤務する意思がある事。
・学生でない事。
・従業員51人~100人の企業。
この条件を満たす企業は、保険対象者の従業員に対し、速やかに保険加入を勧める手続きをしなければならない。
しかし今回の報道は、年収の壁・企業の人数の撤廃する方向で最終調整に入ったとの事。
つまり企業の従業員数、年収は関係なく、全てのパート社員は会社の社会保険に加入義務が生じると云う事。
極端な言い方をすれば、
配偶者控除は廃止します。働いた人全員が会社の保険に入り、保険料を納めて下さいという厚労省のお達し。
週20時間以上の条件は残しているが、実際20時間以下で働く事は不可能。
理由は、20時間以下で会社の保険加入となれば、それこそ手取りは微々たるモノの為。
20時間以下であれば、働く意味がないと云う事。必然的に勤務時間は増える為、実質残しても形骸化する。
参考までに会社の社会保険に加入すると云う事は、手取りが減ると云う事。
どれ程かと云えば、保険は労使折半の為、30%保険が掛かると計算して、約15%手取りが減る形となります。
残りの15%は、会社が負担すると云う事です。
前述したが、今年10月の法改正で、今迄勤めていた職場を辞めた労働者。
経費削減の為、従業員を切った雇用者は、全く無駄な行為をしたという事。
「双方の痛み分け?」と云った処でしょうか。
結果論だが、プラマイゼロならば、何もせず労務管理の改善をすれば良かった。そう思えてならない。
クビを切った人間も、職場を離れた人間も、互に嫌な思いをしなくて済んだ。
もし事業を継続する意思がある経営者であれば、長い目で見て、此れを機会に職場にいた人を大切にすれば良かった。
公にはしないが、政府も社会保険の拡大を理由に、耐え切れない企業は退場して欲しいとの狙いがあるのではないかと推測する。
体力のない企業はどんどん潰れ、特定の強い企業だけが生き残る。結果、人は強い企業に集約される。
もし業界全体が耐え切れないのであれば、此れを機会に業界全体が真摯にこの問題に取り組み、改善しなければならない。
対象となる業界を挙げれば、主に小売業、飲食業、建設業、運輸業、製造業等だろうか。
何れも労働集約型で、パート・アルバイト、非正社員の比率が高い。
この業界の全従業員が保険の対象となる。果たして中小企業は持ちこたえる事ができるだろうか。
皆様は上記を踏まえ、如何お考えでしょうか?
政府を始めとした省庁の姑息なやり方に、呆れるか怒りが湧くと思います。
これが現在の日本という国の有様。まさに、「税金大国」。
此れも以前ブログで述べたが、岸田前政権を呼び名を決めるとすれば、「増税内閣」と記した。
まさにその通りとなりました。岸田前政権を総括すれば、全ては「増税に始まり、増税で終った」。
2026年4月から始まる通称「独身税」も然り。子育て支援と云う名目だが、実際は増税。
ここ近年の政府のキーワードは、「増税」。後を継いだ石破内閣も同様。
何度も述べているが、江戸時代末期は「五公五民」だった。庶民の生活は窮乏。
其の後、周知の通り、「一揆・打ちこわし」が多発した。現在も全く同じ。
既に国民の税金負担は、実質50%を超えている。過去の歴史が示すが如く、日本はかなり危険な状況となっている。
私自身、就職氷河期を経験。昔のモデルケースと云われた人生を歩む事ができなかった。
そして今この世代の人数が一番多く、社会全体の各分野を支えている。軈てこの世代は10~20年後、60才以上となる。
果たして今の若者は、未来の日本社会を支えて行けるだろうか。おそらく無理でしょう。此れも問題を常に先送りしてきたツケ。
今迄、過去何度もブログで年金について話してきたが、既に年金は破綻していると予測する。
年金は宛にしないのが無難。年金が宛にならないと云う事は、それに代わる収入源を見つけなければならない。
来年迎える2025年問題を含め、日本は途轍もない老人大国となる。もはや増税では賄ないきれない。
現実を見た際、限りなく暗い。
少子化の流れも、止まる事はないだろう。
何故なら年収の壁が撤廃されれば、パート職員は今迄以上働かなければ手取りが増えず、子育てもままならない為。
今年1~6月までの出生率をみた処、約34万人だったと記憶している。単純に2倍しても、70万人に満たない。
前述したが、私の世代は約200万人だった。凡そ3分の一の計算。此れでは現在の社会維持は不可能だろう。
何か良い手だてを考えなければ、約40年後、日本という国は存在していないかもしれない。
それほどの危機的な状態。
今後の日本の行く末
最後になるが、参考までにもし年収の壁が撤廃されたならば、概算だが年金の元を取るのに約28年かかるとの予測。
65才から年金が貰えるとすれば、28年後は93才。皆様は、93才で元が取れる年金を果たして有難いと思えるでしょうか。
私の考えは、「ノー」です。93才まで生きているとは思いません。譬え生きていても既に五体満足ではないでしょう。
そんな状態で年金を貰っても、嬉しくありません。因ってこれは、捨て金に近いと思います。
そんな事を考えながら一日を過ごした深夜、又衝撃的なニュースが飛び込んできました。
その内容は、政府は「高額医療費制度」の上限額を引き上げる検討に入ったとの事。
本日の大きな二つのニュースは、何れも厚労省がらみ。如何に厚労省が焦っているかの証拠。
本当に社会保障費の財源が枯渇していると云う事を、まざまざと見せつけられているような気がする。
高額医療費制度の引き上げも、結局は増税。
今後益々、見直し改正と云う名の増税が検討されると思われる。
国民は何時まで耐えられるか。時間の問題かもしれない。もう既に限界に達していると思う。
(文中敬称略)
追記
・令和7年5月16日付
忘れていた頃、驚くべきニュースが飛び込んできました。
その内容は、
の閣議決定がなされたとの事。
閣議決定されたという事は、今通常国会で法案が提出されるという事。
まさに私が文中にて、指摘した通りとなりました。
通常国会もあと僅かというタイミングで出してきた法案。明らかに姑息としか言わざるを得ない。
残りあと1ヵ月、今夏に参議院選挙が実施される為、各党の関心は既にそちらに向いている時機。
どさくさ紛れに出してきた。何故このタイミングなのか。
答えはやはり、昨年秋の衆議院選挙で政権与党が過半数割れを起こした為。
過半数割れを起こした為、政治家や厚生官僚が通したい法案を可能な限り、今国会で通過させたいと思ったのであろう。
更には総選挙後、政権与党の支持率低下により、参議院選挙の大敗が予測される。
まさに私が指摘していた通りとなりました。
文中ではあまりにも早急な場合、中小企業から反発がある為、猶予期間を設け近い将来実施されると述べた。
法案の内容は、
約2年後に51人から緩和との事だが、実際は31人以上になると予測する。
しかしいつ変わるか分からない。来年からも十分あり得る。
パート・アルバイトの大半を占める中小企業は、死活問題。今後、事業継続は益々厳しい。
そう遠くない将来実施されるのであれば、人手不足の職場は此れを機会に、「待遇と職場環境の改善」を目指せば如何だろうか。
待遇と職場改善をしなければ、倒産もあり得る。倒産を避けたいのであれば、今の中に対策を練らなけらば生き残れない。
事実上、経営者は既に逃げ道はなくなったと云える。
・令和7年5月27日付
年金改革法案の修正が政権与党(自公)と立憲民主党の3党間で合意した。
合意の内容は、基礎年金(国民年金)の底上げが主な狙い。
具体的には、就職氷河期世代の年金受給額を増やす為、厚生年金の積立金を活用する。
つまり就職氷河期世代は非正規雇用者が多く年金積立が少ない為、その穴埋めに正社員の厚生年金の積立金を補填するといった方が分かり易い。
通常国会の年度末が6月22日の為、十分間に合う計算。つまり前回指摘したように今夏の参院選に間に合わせる為、どさくさ紛れに出してきたと云える。
本当に小狡い手法。
厚生年金の積立をしている正社員とすれば、たまったものではない。それも3年もすれば、不公平感はなくなるが。
何故なら、あと3年をめどに政府は、パート・アルバイトの全従業員を厚生年金の対象とする為。実質、働いた者は全て厚生年金の対象。
逃げ道はなくなる。政府は此れが目的。
その為、将来的に国民年金は個人事業主でない限り、存在しなくなるという事。
政局的に見えれば、今回の法案と通す上で政府与党は立憲民主党と手を組んだ。予算を通過させる際は、維新と手を組んだ。
これが少数与党の弱み。逆に言えば、政策毎に合致する野党を手を組み為、各野党は選挙で掲げた公約を政府に呑ます絶好の機会。
野党は国民に公約の実現をアピールする為の場ともなる。与党としても、各野党の切り崩しの手段ともなる為、なかなかお政局運営ともいえる。
石破内閣は昨年秋の総選挙にて過半数割れを招いたが、無事通常国会を乗り切ったと云える。
一方野党は、与党が過半数を割りながら天下の宝刀である「内閣不信任決議」を提出しなかった。
譬え提出しても、既に会期末が近い。パフォーマンスとして出すかもしれないが、時すでに遅しと云える。
野党の足並みが揃わなかったのは、各野党が党利党略に走り、一枚岩でなかったことが挙げられる。
旋風を巻き起こした国民民主党は、参院選の公認候補者に躓き、オウンゴールの形で支持率の低下を招いた。
あと二ヵ月に迫った参院選は、益々混迷を極めてきた。
野党の失速で、旧政党の自民、公明、立憲民主が少し巻き返したのかもしれない。