凸凹コンビの最終話 『リーサル・ウェポン4』

★リックス・マートフ凸凹コンビシリーズ、最終話

 

・題名       『リーサル・ウェポン4』

・監督       リチャード・ドナー

・脚本       チャニング・ギブソン

・製作総指揮    ビッキー・ディー・ロック

・製作       ジョエル・シルバー、リチャード・ドナー

・音楽       エリック・クラプトン、デビッド・サンボー、マイケル・ケイメン

・配給       ワーナーブラザース

・公開       1998年 米国

 

出演者

 

◆マーチン・リックス:メル・ギブソン

毎度お馴染み、破天荒なロス市警刑事。シリーズと通し、既に4作目であり、年齢的なものも影響している。劇中でも、年齢的衰えをリックス本人が自覚するシーンが見られる。シリーズ最終話となるが、シリーズ全体を通し、リックス・マートフが現場の刑事から、内部に移る過程と世代交代をテーマにした内容に仕上がっている。

 

◆ロジャー・マートフ:ダニー・グローバー

同じくロス市警に勤める警部補。リックスとコンビを組み、数々の事件を解決してきた老刑事。しかしリックスと供に年齢の衰えを感じ、次世代の人間にバトンタッチする役割を演じている。それは仕事でも家庭においても。

 

◆ローナ・コール:レネ・ルッソ

前回シリーズの事件がきっかけで、リックスと深い関係になり、そのまま結婚。現在妊娠の身で、休職中。

 

◆レオ・ゲッツ:ジョー・ペシ

シリーズ2からの、ほぼ準レギュラー的存在。リックスとマートフの二人にまとわりつき、いい味を添えている。前回は不動産屋兼、なんでも屋であったが、今回は探偵となっている。

 

◆エド・マーフィ警部:スティーブ・ケイハン

リックス・マートフの上司で、二人のよき理解者。二人のハチャメチャぶりに何時も手を焼くが、いつも温かく見守ってくれる人物。劇中最後では、リックス一家とマートフ一家に交じり、レオと一緒に家族扱いとして、記念撮影に参加している。

 

◆トリッシュ・マータフ:ダーリン・ラブ

マートフの妻。シリーズを通し、夫マートフと相棒のリックスを温かく見守る人物。マートフ一家がよきアメリカ社会のモデル的な家族として描かれている中心人物的存在。陰の功労者といった処であろうか

 

◆リアン・マータフ:トレイシー・ウルフ

マートフとトリッシュの長女。シリーズの初めから登場して、初めは高校生であったが、シリーズを重ねる事に成長。今回はとうとう妊娠して、母となる設定。よってマートフ刑事は、おじいちゃんとなる。

 

◆ニック・マータフ:デイモン・ハインズ

マートフとトリッシュの長男。リアンと同じでシリーズの初めから登場し、初めは幼少であったが、前作では既にハイスクールだった。今回の立派に成長し、既に青年男性として登場している。

 

◆キャリー・マートフ:エボニー・スミス

同じくマートフとトリッシュの次女。シリーズの初めから登場して、初めは幼児であったが、既に大人の女性に成長している。例えるならば、シリーズ初めに登場した、長女リアンほどに成長している。時の流れを実感させる。以前も述べたが、このシリーズのもう一つの見所は、シリーズを重ねる事に、マートフ一家の子供の成長ぶりが伺える処であろうか。

 

◆ワン・シン・クー:ジェット・リー

今回の敵役。チャイナマフィアのボス的存在。捕らわれた一家のボスを救い出す役割を演じ、その為に大量の偽札(人民元)を印刷する。ジェット・リーにしては、珍しく悪役を演じている。

 

◆リー・バターズ:クリス・ロック

リックスとマートフと同じく、ロス市警に勤める若手の刑事。時代の流れであろうか、劇中にマーフィ警部も述べているが、今では大卒が刑事。リックス・マートフのような現場からの叩き上げは、既に古い時代となりつつある。どこの世界にもある、世代交代の象徴として登場している。更に彼は、もう一つの世代交代の象徴としても描かれている。

 

あらすじ

 

毎度シリーズでお馴染みの、ハチャメチャコンビ。いつもの如く、冒頭からハチャメチャぶりを発揮してくれる。

しかし何時も破天荒な行動を繰り返すリックス刑事であったが、何かいつもと違う。いつもと違うのは自分の意識ではなく、自分の体。

自分の体がいつしか、以前若かりし頃の無茶ができた時に比べ、明らかに変化していた。誰にでも訪れる年齢と供に訪れる、人間としての衰え。

リックスは認めたくはないが、最近如実に感じ始めていた。

 

或る日の夜、リックスとマートフ、そして準レギュラーであるレオの3人は、マートフ自慢のボートで夜釣りに出かける。

夜釣りを楽しんでいた3人だが、密航船と思われる不審船に遭遇。当然リックスとマートフは追跡にかかる。

銃撃戦の末、船を操っていた連中は逃亡。不審船のみ取り残され、海岸に座礁する。座礁した船倉からは、案の定不法入国を果たそうとした中国人たちが大勢潜んでいた。

不法入国の為、全員拘束されるが、マートフは偶然救命ボートに身を潜めていた中国人一家を発見。咄嗟に匿い、自宅に連れ帰る。

 

翌日リックスが、マートフの家を訪れる。リックスがマートフの家を訪れた際、朝食に中華料理の匂いが漂っているのに疑問を抱き、昨夜マートフが連れ帰ってきた中国人一家を発見する。

一見、何の変哲もない一家と思われたが、その一家は他の密航者とは違い、ある重要なミッションの為、今回他の密航者に交じり渡航した。

その或る重要なミッションとは。

 

見所

 

今回の映画のテーマは、ズバリ「時代の継承」。今迄のシリーズのように確かに笑いあり、アクションありの映画だが、映画初期の頃(パート1)に比べ、だいぶ映画の趣旨が変わってきている。

映画初期に見られたリックス刑事の悲しい過去が原因の精神不安定・破滅的行為は見られず、リックス・マートフ刑事の破天荒乍らも、面白おかしく事件を解決するストーリーと変化している。

 

特に今回はリックス・マートフのコンビは勿論の事、リックスとマートフ刑事の家庭における変化を劇中にて、取り挙げている。

冒頭の事件中、二人は互いに自分たちの環境の変化を知る。

リックスには新しい妻(前作の内部捜査官、ローナ)と子供。マートフは、長女リアンの妊娠。それぞれ新しい生命の誕生による、家族構成の変化。今回の映画は新しい家族が増えた事による、世代交代を大きなメインとしてしている。

 

今迄優れた能力で数々の事件を解決してきたリックスだが、リックスは自分自身の体力の衰えを感じ始めた。新しい世代が入署してきた事による、自分の立ち位置の変化などが劇中にて描かれている。

誰もが避けて通ることのできない老化の問題を、さり気なく取り入れている。老化を感じ始めた時のふとした淋しさと、認めざるを得ない現実との葛藤。

何気にアクション映画であるが、人間の避けて通れない永遠のテーマが織り交ぜている。

因みに冒頭の事件後、前作に続きリックスの子を宿したローナが登場するが、いつの間にローナが犬好きになっているのが分かる。前作では、犬は嫌いと述べていた。此れも、ちょっとした変化と言える。

このシリーズの良い処の一つとして以前も述べたが、マートフ一家の子供の成長する過程が見もの。初期に子供だった長男と次女が、いつの間にか大学生の設定。時の流れを感じる。

 

リックスとマートフは現場から退き、巡査部長からいきなり2階級特進の警部となる。理由は現場にいれば、あまりのハチャメチャな事をしでかし、現場が混乱する為。

挙句に二人の破壊ぶりが原因で、保険会社から契約を打ち切られた為。ロス市警としては、苦肉の策で二人を現場から遠ざけ、管理職として机に縛りつけようとする企み。

いつの間にかロス市警刑事課のメンバーも、知らない顔ばかりとなる。既にマーフィ警部、リックス・マートフは古株。シリーズを重ねる毎に、二人の顔にも年齢を感じさせる。

チャイナタウンのボス(ベニー・チャン)の塒で冒頭の密航船の船員を見つけ追跡するが、リックスは寸での処で逃がしてしまう。

往年のリックスであれば、捕まえたであろう。当に時の流れは残酷だ。全盛期を過ぎつつあるリックスの姿が描かれている。

パート1、パート2でマートフが良く呟いた言葉。「年寄りには、つらい」

此の言葉がとうとう、リッグスにも当てはまる時期となった。

 

今回のシリーズで初めて分かったが、マートフの父親も元警官だった。何故なら密航してきた中国人一家(ホン)の主に腕時計を渡した時、マートフが自分の父親の事を語った為。

今回の映画の最大のアクションは、リッグスとマートフがチャイナマフィアを追跡した時のカーアクションと思われる。

圧巻は、車がビルに飛び込み、再びハイウェーに戻るシーン。何か香港映画の体を張ったアクションを思い出した(ジャッキー主演、ポリス・ストーリーの冒頭)。

 

今回の映画はまさに時代と先取りしていると言える。何故なら映画製作から既に20年以上経つが、今後の中国の台頭を予測するかのような作品。現在の中国の発展を見事に描いている。

現在の米中の貿易摩擦を見れば、納得する。

シリーズが始まったのは、1980年代。この映画シリーズ中で何度も述べているが、実は初めの攻撃対象は、日本だった。

日本が中国に変遷したと言える。此れも未来を予測した、見事な洞察力と言える。

 

今でも暗躍していると思われるが、劇中冒頭の密航船は、当時横行した密航集団「蛇頭」を擬えたもの。

不審船に同乗してマートフに保護された中国人一家(ホン)の叔父のアメリカでの仕事は、偽札(偽人民元)作りだった。

中国マフィアのボス(ワン・シン)が偽札を作り、大量の偽札で中国本土の公安警察に捕らえられていた中国マフィアの4人の仲間を助けようとする設定。

つまり中国政府の悪徳将軍と中国マフィアのボス(ワン・シン)が、大金で取引。取引後、4人を解放する算段。

ホン一家は、アメリカの叔父を頼り中国から密航船でやってきた。密航費は、叔父が偽札作りを手伝う事で相殺。

中国マフィアは、ホンの叔父に仕事をさせる為の人質として、ホン一家を中国本土から呼び寄せた次第。

悪徳将軍役をしていた役者(ダナ・リー)は、映画『ランボー2』でも、ランボーと現地情報員をベトコンに売ろうとした船長の役を演じていた人物。

リックスとワンと格闘中、マートフがワンを撃つため、首をひねる仕草をして狙いを定める。此れはパート1からのマートフの癖。しかしパート3だけは、見られなかった。

 

ワン(ジェト・リー)との格闘シーン。リッグス・マートフ二人に対し、一人で応戦するワンの体を使ったカンフーアクションが見事。武器を使わなければ、ワンの方が強かったと思われる。

映画『リーサルウェポン』の題名の元々の意味は、「殺人兵器」という意味。映画の初めは、リッグスの事を指し、つまりリッグス自身が「生きる武器」として使われていた。

証拠としてリッグスが麻薬課から殺人課に転属となり、初めてマートフを出会った際、マートフがリッグスの履歴をみて、そう呼んでいた。

リッグスはベトナム戦争時、特殊部隊に所属。射撃の名手であったが、本当の意味はあらゆる武道に成熟しており、体全体が殺人兵器のようであった。

今回のワンとの格闘シーンでは、銃を使わず、敢えて体を使って戦ったのも、その意味あいを含んでいるものと思われる。過去のスタッフ一同の最後の拘りであろうか。

しかし皮肉にも最後にリッグスの命を救ったものは、海に転落した車の中にあった、マシンガンだった。

リッグスが海中で拾ったマシンガンを連発。不屈の男ワンは、リッグスのマシンガンで全身を撃ち抜かれ、死亡する。

 

リッグスが前妻の墓を訪れるのは、パート1以来。墓碑に1984年に他界と記されている。パート1が公開されたのは、1987年。今回の公開が1998年の為、既にパート1から、11年の歳月が流れていた。

劇中の登場人物も歳をとったが、今なつかしさで見直した私も既に、パート1から33年の歳月が流れていた。道理で私自身、歳をとったと実感する。

墓場に現れたレオが、リッグスに幼少の頃飼っていたカエルの話をするが、実はカエルは、リッグスの前妻の譬えている。

 

「昔大切にしていたモノを、自分の過失でなくしてしまった。しかしそれはそれで、又良い思い出」

 

とレオがリッグスに話すのは、リッグスがローナとの再婚を促す言葉とも思われる。

因みに、ローナの出産を知らせるポケベルが懐かしい。時代を感じさせる。

 

最後の記念撮影では、出演者はもとより、今迄のシリーズのスナップ。スタッフ一同のスナップ写真が登場するのが、心憎い終わり方。

やはり続編を作らなくて、正解だと思う。

 

追記

 

毎回述べているが、監督・製作等のスタッフがシリーズを通し、殆ど変わっていない為、シリーズ初期の頃からストーリーに略矛盾がなく、違和感なく見る事ができる。

他のアクション映画、シリーズものと異なり、前回と関連性が多くみられるのが、このシリーズの良い処。

ほぼ同時期に流行ったアクション映画が、数年を経て近年作られているが、どの作品も既に数十年経過している為、私自身ほどんどみていない。

譬えるならば『ダイ・ハード』、『ロッキー』など。何故見ないのかと理由を述べれば、私自身も出演者も歳を取りすぎている為。

歳をとりすぎている為、当時の感覚で映画を見る事が難しいと感ずると予想される。きっと見ても、がっかりするのが分かる。

良い思い出は、思い出のままにといった心境だろうか。

例えが悪いかもしれないが、昔クラスで好きな子がいたが、昔のイメージをもったまま今再会したならば、必ずと言って良い程、幻滅を感じるに違いない。あれと同じであろうか。

 

時を経て製作された際、主人公は既に老齢で、大概主役は元主人公の子供となっている為。そうなれば子供の親として登場して、子供の成長を見届けるというパターンで終わると想像される。それが薄々感じられる為、敢えて見ない事にしている。

やはりリーサル・ウェポンも続編が考案されたようだが、主人公であったメル・ギブソンとダニー・グローバーが難色を示し、実現しなかった。

私としては、続編が製作されなくて良かったと思う。理由は、前述したとおり。今回のパート4の終わり方を見た時、あの終わり方がベストだったと思う。

 

最後の記念写真の言葉は、リックス・マートフ一家、レオ、マーフィ警部を含め「皆、家族です」で終わっている。最高の終わり方だと思う。

 

(文中敬称略)