人が絶望の淵で、心の支えになるもの『ショーシャンクの空に』

★懐かしい名作洋画シリーズ

 

・題名     『ショーシャンクの空に』

・公開     1994年 米国

・配給     コロンビア映画・ワーナーブラザーズ

・監督     フランク・ダラボン

・脚本     フランク・ダラボン  

・製作     ニキ・マービン

・総指揮    リズ・グロッツァー、デビット・レスター

・音楽     トーマス・ニューマン

・原作     スティーブン・キング 『刑務所のリタ・ヘイワーズ』

 

出演者

 

◆アンディ・デュフレーン:ティム・ロビンス    

若き銀行マンであったが、冤罪で収監される

 

◆レッド・レディング:モーガン・フリーマン  

刑務所の囚人、刑務所内の調達屋

 

◆サミュエル・ノートン:ボブ・ガントン     

刑務所の所長、職権乱用で不正蓄財を企む

 

◆ヘイウッド:ウィリアム・サドラー  

刑務所の囚人、陽気な性格

 

◆バイロン・ハドリー:クランシー・ブラウン  

刑務所主任刑務官、所長と一緒に悪事を働く

 

◆トミー・ウィリアムズ:ギル・ベローズ     

刑務所の囚人、アンディーに免罪を知らせる

 

◆ボッグズ・ダイアモンド:マーク・ロルストン   

アンディーに対し、同性愛を強要する囚人

 

◆ブルックス・ヘイトレン:ジェームズ・ホイットモア

刑務所の図書係。出所後、世間に馴染めず自殺

 

作品経過・概要

 

主人公アンディー(ティム・ロビンス)は若きにして、やり手の銀行マン。

仕事の実績が認められ、副頭取に昇進する。アンディーは、前途有望に見えた。

 

処が或る日、妻と妻の愛人が殺害される。アンディーは二人を殺害した殺害容疑で逮捕される。

冤罪であったが有罪とされ、終身刑を宣告される。

アンディーは世間でも悪名高い囚人が集まる刑務所に収監された。

 

収監されたアンディーは刑務所で、今迄係わったことのない様々な人間に出くわす。

中でも最も親しくなったのは、人生の大半を刑務所で暮らす調達屋のレッド(モーガン・フリーマン)だった。

 

レッドは刑務所では主のような存在で、刑務所内のあらゆる事に内通していた。

ある時アンディーは、レッドから「刑務所内では同性愛者がいるから気を付けろ」と忠告を受ける。

 

忠告を受けたアンディーだったが、或る日アンディーは同性愛者の3人の男に襲われる。

そんな状態が、2年程続いた。

 

アンディーとレッドは、刑務所内の屋根修理に駆り出された。

作業中、アンディーは刑務主任のハドリーが「相続が高くて悩んでいる」と、同僚の刑務官に話しているのを聞きつけた。

 

アンディーはハドリーに話かけ、

「自分は相続税を安くする工夫をするから、見返りとして此処にいる仲間にビールを奢ってくれ」と頼む。

 

交渉は成立。

アンディーは約束を果たし、仲間にビールを奢る事に成功する。

 

今回の一件でアンディーは、刑務所仲間・刑務官からも一目置かれる存在となる。

しかし、相変わらず同性愛者たちからの暴行は続いていた。

或る日、同性愛者はアンディーの態度に腹を立て、アンディーを半殺しの目に遭わせる。

 

半殺しの目に遭わせたのはいいが、アンディーはハドリーの一件で他の刑務官からも頼りされていた為、立場が逆転。

ハドリーはアンディーを重要視するが故、アンディーに手を掛けた同性愛者を半殺しの目に合わせた。

その為、以後アンディーに手を出す者は誰もいなくなった。

 

瀕死の重傷を負ったアンディーであったが、無事回復。

アンディーが自分の房に戻れば、壁に「リタ・ヘイワーズ」のポスターが飾ってあった。

レッドからの、ささやかな回帰祝いといった処であろうか。

 

アンディーの噂を聞きつけた所長サミュエルは、アンディーの経理能力を利用しようと企み、アンディーを図書係に任命した。

 

図書係には50年刑務所で暮らしていた老人、ブルックスがいた。

アンディーは表向きはブルックスの下での図書係助手だったが、実際は所長・刑務官達の相続税対策・所得税申告の代理が主な仕事だった。

 

アンディーは命じられた仕事を熟す傍ら、図書館員として図書館を充実させるべく、州議会に寄付の手紙を送り続けた。

手紙を送り続け6年後、漸く州予算確保と大量の古本が送られてくるのに成功した。

 

月日は巡り、図書係だったブルックスに仮釈放の許可が下りた。

ブルックスは、人生の大半を刑務所で過ごしていた。

その為、普通の社会生活に戻る事に対し、恐れ戦いていた。

 

アンディーとレッドの説得で、ブルックスは漸く仮釈放に応じる。

応じたのは良いが、やはり世間の生活に馴染めず、ブルックスは自殺してしまった。

 

アンディーの活躍で、州議会から毎年の予算獲得に成功。

大量の古本が送られてくる中、アンディーは或る日、古本の中に『フィガロの結婚』のレコードを見つけた。

 

アンディーは刑務所内の放送局に入り、ほんの一時レコードを刑務所内に流した。

一瞬であるが、囚人たちが自由を感じた瞬間だった。

 

アンディーの行為に所長は激怒。アンディーを懲罰独房にぶち込む。

独房から戻ったアンディーは、囚人仲間達から何故レコードを掛けたのかと問われ、アンディーは

 

「いつどんな時でも、音楽と希望は奪えない」と答える。

 

レッドはアンディーの言葉をあざ笑うかの様に、

「刑務所では、そんなものは役に立たない」と反論する。

 

或る日、所長は囚人に「労働の貴さを教える」との名目で、囚人たちを外で働かせる計画を実行する。

名目上は囚人矯正プランであったが、何のことはない。

実は、囚人が働く賃金をピンハネして不正蓄財をするのが目的だった。

 

アンディーは当然の如く、所長の不正蓄財に利用された。

アンディーは所長の不正蓄財をうまく隠す事に成功した。

 

刑務所に新たにトミーと云う囚人がやって来た。

トミーはアンディーとレッド達と直ぐに打ち解けた。

トミーは刑務所内で読み書きに興味を持ち、勉強し始める。

 

トミーはアンディーと親しくなり、アンディーが刑務所に入れられている罪の経緯を知る。

トミーはアンディーの話を聞き、以前その事件で「自分が犯人だと名乗る男がいた」とアンディーに告げた。

 

アンディーはトミーから話を聞き、所長に再審請求を依頼する。

しかし署長は、今迄のアンディーの仕事ぶりと不正蓄財の全貌を知る人物の為、にべもなく却下する。

挙句に、再びアンディーを懲罰独房に入れる。

 

なかなかアンディーが所長の脅しに屈しない為、所長は見せしめの為、トミーを射殺する。

トミーを射殺した一ヶ月後、アンディーは今迄通り仕事を続ける事を条件に、漸く独房から出された。

 

独房から戻ったアンディーは今迄の違い、囚人たちとあまり心を開かず無口となった。

そんな日が続く或る日、アンディーはレッドに

「メキシコのジワタネホに行きたい」と告げる。

 

レッドは再び

「そんな夢は捨てろ」と呟く。

 

更にアンディーはレッドに

「仮釈放になった際、ハクストン牧草地にいき、黒い石を探せ」と謎の言葉を述べる。

 

そして翌朝の点呼、アンディーが現れなかった。

アンディーの房に行けば、アンディーは既に房におらず、女優(リタ・ヘイワーズ)のポスターが貼ってあった壁の裏には、大きな穴が開いていた。

アンディーは服役中、レッドから調達したハンマーで壁に穴をあけ、脱走を計画していた。

 

アンディーは刑務所を脱走後、今迄所長が不正蓄財で蓄えていた金を手に入れ、所長以下・刑務官の不正行為を暴露。

数々の悪行をマスコミに流し、自分はそのまま逃走した。

問題発覚後、所長は自殺。ハドリー主任刑務官は逮捕された。

 

やがてレッドにも、仮釈放の日がやって来た。

レッドは仕事を紹介され、堅気の生活を営む。仕事はスーパーの袋詰め係。

 

しかし長年の刑務所暮らしが身に付いてたレッドは、当然普通の社会生活に馴染めない。

自殺したブルックスと同様、レッドも自殺を考えた。

首を吊ろうとした際、ふと刑務所のアンディーの言葉を思い出した。

 

レッドはアンディーのメッセージに従い牧草地に行き、黒い石を探した。

石が見つかり、その下を掘れば、アンディーの手紙が見つかった。

手紙の内容はレッドの仮釈放を祝う言葉と、メキシコにて再会の旨が述べられていた。

 

レッドはメキシコのジワタネホ海岸に行く。

海岸で二人は、久しぶりの再会を果たす。

二人の再会を祝福するように、ジワタネホの海岸は青く輝いていた。

 

見所

 

主人公アンディーは人生の絶頂期に無実の罪で終身刑となり、犯罪の常習犯が収監される劣悪な刑務所に送られた。

刑務所では自分が今迄、関わった事のない人間や、劣悪な環境に戸惑うアンディー。

 

古参の囚人もアンディーは他の囚人とは毛並みが違う事で、初めは互いに馴染めずにいた。

アンディーはやがて、同性愛者の餌食となる。そんな生活が二年程、続く。

絶望の淵だった。

 

刑務所内でアンディーは、刑務所の主のような人物(レッド:調達屋)と仲良くなる。

なにかしら対極な人間同士で、不思議とウマがあったのだろう。

アンディーはレッドに頼み、ハンマーを調達して貰う。

 

アンディーは元銀行員と云う経歴で、経理能力に長けており、やがて所長以下・他の刑務官の経理事務を任された。

アンディーは仕事を熟していく中、刑務所職員・囚人たちの両方から、信頼を勝ち獲る事に成功する。

信頼を勝ち取る事で、皆から様々な便宜を図って貰う。

 

アンディーは所長の不正蓄財を手助けする振りをして、何時しかチャンスが来るのを待っていた。

或る日、自分の冤罪を晴らせるチャンスが到来した。

 

しかし手掛かりは所長によって握り潰される。

その時、アンディーは長年の描いていた計画を実行した。

 

アンディーは以前から、レッドに調達して貰ったハンマーで壁を砕き、脱走の穴を掘っていた。

自分の冤罪を晴らすのが不可能と自覚した時、アンディーは積年の計画を実行に移した。

 

脱走である。

それも、今まで所長が不正蓄財で貯めた金を持ち逃げして。

 

アンディーが脱獄の為下水道を通り、脱獄が成功した瞬間の映像は、当に此の映画最大の見所。

映画のサムネイルに使われている。

長年の苦しみから解放された、人間の喜びとでも云うのだろうか。

 

下水道の汚物にまみれ乍、降り注ぐ雨にアンディーが打たれるのは、まさに名シーン。

刑務所から解放され、自由の身になったアンディーを象徴するもの。

 

長年の刑務所暮らしで、もはや「夢も希望」もない。

しかし絶望の中、アンディーは決して希望の灯を絶やす事なく、何時しか自由に成る事を夢見ていた。

 

それが遂に実現された。 どんな環境にいても、決して夢と希望を忘れてはいけない という教訓だろうか。

 

人生の大半を刑務所で過ごしていたブルックスとレッドは、刑務所暮らしが身に沁み、仮釈放になっても、なかなか世間に馴染めない。

あまりにも特殊な環境にいたが、何時しか特殊な環境という感覚が麻痺。

恰も、日常的な事と受け止めてしまう人の習性の怖さと言える。

 

一般の人も同じ。

舞台は刑務所となっているが、刑務所を会社に置き換えても然程変わらない。

会社も勤めた当初は可笑しいと思う事が、次第に感覚が麻痺。

何時しか、当たり前となってしまう。

 

しかし一旦外に出れば、暫くして、それが異常であった事に気付く。

仮令職種が同じでも違う会社に行けば、又其処には異なったルールが存在する。

それも全く同じ事。

 

ブルックスとレッドが出所後、世間からの疎外感で自殺を図るが(レッドは未遂)、何か他人事とは思えない話だった。

 

追記

 

レッドの役を演じた「モーガン・フリーマン」は今回の映画で好評を得ているが、翌年(1995年)の『セブン』でも老刑事役を演じ、好評を得ている。

 

調べて見れば、モーガン・フリーマンは、1970年代から既に俳優として活動している。

芸歴は意外に長い。

 

『グローリー』『ロビン・フッド』『許されざる者』等に出演しているが、あまり印象がない。

今作品で、一挙にメジャーになったと思われる。意外と遅咲きの俳優なのかもしれない。

因みに今回の作品での出演時の年齢は、57歳だった。

 

初めて映画を見た時、何故「リタ・ヘイワーズ」のポスターが壁に貼ってある意味が分からなかった。

映画の原作を見た時、漸く納得した。

 

映画は専門家たちの間で、高評価を得た。

アカデミー賞にノミネートされたが、賞は獲得できなかった。

 

此の年には(1994年度)、他に強力な作品が存在した。

『フォレスト・ガンプ』『スピード』など。

実際にアカデミー賞は、『フォレスト・ガンプ』が受賞している。

 

作品は無冠だったが、専門家の間では秀逸な作品と云われていた。

しかし興業的には、あまり成功したとは言えない数字だった。

 

囚人役のヘイウッドを演じた「ウィリアム・サドラー」は、1990年作:『ダイ・ハード2』でテロリスト集団のリーダーであった「スチュワート大佐」を演じている。

あまりにも印象が違い過ぎて、初めは気づかなかった。

 

(文中敬称略)