市町長約45%、町村議選約25%が無投票選。その原因は

現在、統一地方選挙の真っ只中。

ニュースにて全国の市長長が約45%、町村議選が約25%が無投票選であるとの報道が配信されていた。

今回は、この件に関し述べたい。

 

全国で増加した無投票選挙

斯く言う私が在住してる地方都市も16日に議員選の公示がされ、午前中に選挙運動が始まった。

午前中から各陣営の選挙カーが走り始めたが、午後になるとピタリと止んだ。

理由は、議員数以上の立候補者が現れなかった為。立候補者で議員が確定した為。

 

夕方のニュースで、無投票選挙になった事実を知った。

配信内容では、人口減少で議員の成り手不足との事。私は表向きはそうであろうが、その裏に全く別の要素が絡んでいると推測した。

 

結論から述べるが、一番大きな理由は誰も成りたがらない為。議員に成っても、あまり旨味がなくなったといった方が良いだろうか。

はっきり言えば、「地方議員年金」の廃止が大きく影響している。

詳細は省くが、地方議員年金の廃止は2006年小泉内閣時に決定され、2011年に民主党菅内閣時に実施された。

 

内容は地方議員在職10年以上、月10万円を払えば、65歳以上で議員を辞めた後、年間約450万円程の年金が貰えるという制度。月に換算すれば、約40万円以上貰えた計算になる。これが廃止となった。

 

政治・年金にあまり興味のない人は知らない制度だったと思う。世間も態と公にしていなかったのか、こっそり存在していた。

正直これが目当てで、長年議員を続けていた人もいた。廃止を期に、長年務めていた地方議員をあっさり辞めた人間もいた。

当時この話は何かと問題となっていた。

 

各年金制度については、機会があれば詳しく述べたいと思うが、この事が原因で成り手が減ったのは間違いない。

私の知り合いも長年議員を務めていた議員がいた。前回の統一選挙で、受かれば儲けものといった考えで出馬した。

結果、落選した。しかし既に議員年金が確定していた為、今では悠々自適な楽隠居をしている。

この人の場合、楽隠居できる身分なので、たいした問題ではない。

全国の何処の地方議員も、たいがい楽隠居できる身分と思われる。理由は後述する。

 

各年金制度の歪

各種年金制度は何かしらの問題を含み、各世代で不公平感が漂うと思われる。

各種の年金制度は、どれも上手く行っていないと言うのが現状。

どの年金制度も先の世代が得をして、後になれば成程、損をする仕組み。

客観的に見て、一番得をしている世代ですら自覚がない。徐々に年金が少なくなり、損をしていると文句をいう有様。

 

それを考えた時、地方で退職後、月の年金を約40万円貰っている人が、一体何人いるだろうか。譬え居たとしても、かなり少数派。

昔は一旦就職すれば、一生安泰と云われた職業「公務員、第一地銀、地方の大手マスコミ」。

偶に存在する「地方の一部上場企業」の退職者であろうか。それ程、地方での月40万円の年金は大きい。

 

議員の1年の実質活動期間は、多くても約100日、議会開催日も約30日あるかないかが実体。1年の3分の2は時間があるという事。

 

議員の言い分としては勉強会、視察、町内行事等があり、殆ど休みなしと主張する人もいるが、実際それ程、毎日行事などない。

 

地方議員年金の矛盾と復活の動き

1人の有権者として意見を述べれば、10年在職すれば月40万円の年金というのは、何か可笑しい気がする。

因みに地方議員年金廃止は与党だけなく、野党も反対していた事を付け加えておく。

所詮人間は既得権益が脅かされれば、与野党関係ないという事。

 

もし民間企業であれば、無事定年まで勤め、漸く貰える金額。

地方の中小企業では、月40万円も貰えないだろう。今まで優遇されていたとしか言わざるを得ない。

因って若い世代、企業勤めで子育て現役の世代は、あまり議員になりたがらない。

仮令1期務めても次に落選すれば、再び民間企業、嘗ての収入と同等か、それ以上の待遇を得るのは至難の業。

 

皆さんの住んでいる市町村議員を見渡せば、大抵自営業・同族会社経営・元公務員・元議員秘書あたりで占められているのではないだろうか。

安定している職を捨てて迄、敢えて議員になろうという人は少ない。

 

その為、地方議員年金を復活させようという動きが、漫ろ見受けられる。これも与野党問わず。

連動して、各地方議員が諸手当を私的流用しているニュースが暫し流れるが、さもありなんといった処だろうか。

今年消費税が上がり国民世論も鑑み、流石に今回の統一選挙前は復活はなかった。

しかし国民が忘れた頃、こっそり検討、通過となる可能性もある。今後、注意が必要。

 

続いて先程は軽く触れたが、国会議員と同様。地方議員に暫し見られる特徴を挙げたい。

在住する地域の議員の顔ぶれをを見れば分かるが、大概その地元では名士、元自治体職員、地元の有名企業、元議員のご子息、ご令嬢で占められている。

つまりその土地では、「じいちゃん、ばあちゃん、とうちゃん、かあちゃん」のコネで成り立った関係・サークルと云えば的確だろうか。

そうでなければ、自営業で昔からその土地に密着した店、企業の経営者たち。

 

地方に存在する、目に見えない階級

世間では決して公言しないが、黙っていても明らかに存在するものがある。

今回の話題の関連で云えば、地方公務員、地方公共団体、外郭団体の採用等。

 

これ等を挙げれば大概の人はピンとくると思う。そう採用基準が極めて曖昧で意図的。

もっと簡単に言えば、コネではないかと思われる採用が多数存在する

 

口利きを誰がするかと云えば勿論、現・元議員、現・元公務員、現・元地方公共団体・外郭団体の職員等の連中。

その現・元の人間が誰かと云えば、もうお分かりかと思うが、答えは「その人間の一族、又はその縁者関係の人間」

 

地方ではまるで世襲の如く、祖父・親・子供の3代議員、3代公務員、3代地方公共団体職員、3代外郭団体職員等、決して珍しくない。地方警察官等にも当たり前の様に見られる。そんな男女同士が結婚。夫婦一家がそのまま当て嵌まり、又それが何世代にも繰り返されるケースも見られる。正に最強パターン。

 

選挙立候補者は、その様な状況から出馬する。

ガチガチに固められた集団票に対し、敢えて火中の栗を拾ってまで議員になりたい人は果たして何人いるだろうか。

なかなかいないと思う。せいぜい仲間割れの分裂選挙ぐらいだと思う。

そんな状況下で立候補しても当選は難しく、徒にムダ金を遣うのみ。

 

それは目には見えないが、明らかに存在する階級と言える。

地方では存在する主流階級に属していれば一生安泰。旨味を得る事ができる。

しかし初めから除外、途中で弾き出されれば、二度と復活できず、一生冷や飯を喰う。

皆さんの中にも、そんな経験をお持ちの方が1人や2人はいるかと思う。

社会も企業も同様、自分が属する組織の有力者の逆鱗に触れてしまえば、一生日の目をみる事がない。

 

上記の様な事実が存在する為、冷飯をくった人間は可能性を求め、地方を捨て大都市に流れていく。若い人なら猶更。

地方創生と叫ばれて久しいが、このような事情も地方の発展を妨げている要因の一つと思われる。

そのまま地方人口減少、経済の停滞、そして無投票選にも繋がる要因。

 

争いをあまり好まない日本人

更に住民もあまり変化・分裂等を望んでいないのも、原因も一つと思われる。

良く云えば、「仲良しグループ」。悪く云えば、「中世の村社会」

これでは、パッと出の新人が出馬、当選できる可能性は少ない。

 

今回無投票で損をした或いは、当てが外れたと層と言えば、選挙活動で利益を得る人間達だろうか。

昔から「選挙と祭りは、タダ酒が飲める」と云われているが、本当にタダ酒も飲めるが、他にも意味がある。

選挙にはお金が掛かる。「その選挙期間中、恩恵を被る集団が存在するという」意味にも使われる。

敢えて回り諄い言い方をするが。国政選挙などは、その典型。

大金が動く為、関連業者、支援者、選挙運動員、その他の魑魅魍魎とした人間が集まり、一つの経済効果を生み出す。

これも機会があれば、話たい。

 

中には選挙に便乗した「選挙ゴロ」的な輩も現れる。

この連中、主義主張など関係なく、金で雇われれば、前回応援した陣営と反対の候補者も平気で応援する輩。

立候補者は無駄なお金・労力・時間を遣わず、無選挙で良かったのかもしれない。

 

日本人が好きな言葉「和」

意外に思われるかもしれないが、実はマスコミも儲け損ねた側の人間。

何故ならテレビ、新聞、ネットアクセス等が極端に減少する為。

結構候補者は、マスコミの宣伝枠を買い取り、広告を載せる。

最近ネットでも暫し政党のCMが流れてくると感じている人も多いと思うが、あれも同じ事。

 

何はともあれ、日本人の感覚として好きな言葉は「和」。この言葉だと思われる。

証拠として、日本で一番古いとされている「十七条憲法」の第1条が何かといえば、

「和を以て貴しとなし、忤ふること無きを宗となせ」。意味は「全て和を大事にし、人に逆らう事をするな」

これが日本人の好きな言葉。

 

「和」。つまり平和・秩序を乱すなと云う戒め。

その証左として過去の元号によく「和」の文字が使われている。今回の新元号「令和」にも「和」の文字が使われている。

それ程、日本人が好む文字だと思う。

 

日本人の感覚としては、確かに無投票選挙も悪くはない。

しかし、無投票の原因が地方独特の慣習・風習・しきたり(コネと階級)、又は「地方議員年金」廃止に起因しているのであれば、少し淋しく残念な気もする。

この現象は、少子高齢化・地方の人口減少化が進めば、益々顕在化するかもしれない。

今後この問題は、日本の行く末を象徴する出来事となるかもしれない。

 

追記

私の両親は上記のような「中世の村社会」の出身。

田舎にいる限り、将来の展望が描けないと見切りをつけ、都市部に移り住んだん人間。

両親の田舎では、未だに村社会の意識が抜けない。徐々に過疎化が進み、今では限界集落と化している。

 

私は進学で上京、Uターンした人間。しかし現在住んでいる地方都市ですら、時折村社会の意識を感じる。

何か地方が徐々に衰退していく事実、選挙が無投票が多くなってきた事実と決し無縁でないかもしれない。

 

(文中敬称略)