『工藤ちゃん』が耳に谺した 松田優作主演『TV探偵物語』

昔ヒットしたTV番組「探偵物語」。主演は勿論、松田優作。

イタリア製のバイク「ベスパ」に乗り、颯爽と登場。

コミカル且つ、ニヒルでダンディな探偵に夢中になった人も多い筈。

 

今回、探偵物語にスポットを当ててみた。

因みに、番組主題歌も大ヒット。一度は聴いた事があると思う。

 

・題名        『探偵物語』

・製作        東映芸能ビデオ

・放送        日本テレビ系列

・掲載期間      1979年09月18日 ~1980年04月01日(全27話)

 

・オープニングテーマ『Bad City』 

作詞・作曲:Casey Rankin

編曲:大谷和夫   歌:SHOGUN

・エンディングテーマ『Lonely Man

作詞:Casey Rankin  作曲:大谷和夫、芳野藤丸

編曲:大谷和夫    歌:SHOGUN

 

登場人物

 

◆工藤俊作 : 松田優作

東京渋谷区で探偵事務所を開業する探偵。元刑事の設定。

トレードマークの黒い帽子・黒い服、そして愛車「ベスパ」で移動する。

 

タバコは「キャメル」、ライターの火力は常に最大、手錠抜けが得意。

事件を依頼され、様々な人間を巻き込みながら、面白可笑しく事件を解決する。

 

何時も金欠状態。義理人情に篤く、時々お金を貰わず仕事を受ける場合もある。

ニヒルでダンディな探偵。

 

◆服部刑事 : 成田三樹夫

警視庁の刑事。「工藤ちゃん」が口癖。工藤探偵に付かず離れずで、事件を解決。

時に工藤に対し、見逃する事もしばしばある。

 

悪い人間ではないが刑事の特権を使い、何気に袖の下を取る事もある。

しかし時には、工藤の良き理解者。江戸時代の岡っ引きのような刑事。

 

◆松本啓二 : 山西道広

服部刑事と同じく警視庁に勤める刑事。服部刑事より若く、子分といった存在。

工藤を何かと目の敵にする。

更に工藤と似た境遇の街の連中を、軽蔑する面もある。

 

◆ナンシー : ナンシー・チェニー

工藤と同じアパートに住む、売れないモデル。

工藤とは仲が良く、ルームメイトのかほりと一緒に工藤の事務所に、ちょくちょく出入りする。

偶に探偵調査に協力する事もある。

 

◆かほり  : 竹田かほり

工藤の同じアパートに住み、ナンシーのルームメイト。設定は女優の卵。

ナンシーと同じで、探偵事務所にちょくちょく出入りする。

偶に探偵調査にも協力する。ナンシーとは良き友達。

 

◆相木マサ子: 倍賞美津子

或る事件がきっかけで知り合った、女弁護士。登場以後、暫し後の回にも登場。

準レギュラーのような存在。色仕掛けで調査する事が多い。

 

◆イイヅカ :  清水宏

表向きは古道具屋(バッタ屋)だが、拳銃密売にも手を出す。

しばし工藤に拳銃の横流しをする。

 

拳銃を横流しする際、工藤とよく映画批評をする。

最終話では、事件に巻き込まれ死亡する。

 

◆ダンディー: 重松収

工藤の良き仲間、情報屋のような存在。街の盛り場などによく現れる。

最終話では、プールバーに現れた工藤と会話を交わす。

 

◆山崎   : 榎木兵衛

酔っぱらいの故買屋鑑定人。「私は、何にもしらない」が口癖。

惚けているが、鑑定の目は確か。

 

作品概要

 

渋谷で探偵事務所を営む、工藤俊作。

トレードマークの黒い帽子と服装、イタリア製ベスパに跨り、移動する。

事件の依頼によって、個人的考えで報酬を受けなない時もある。依頼内容は様々。

事件を解決す過程で、いろいろクセのある人間が登場。番組にアクセントを添えている。

 

工藤探偵の交友関係の広さが面白い。

言葉は悪いが、決して社会的評価の高くない層の人間が、都会の片隅でひっそりと必死に生きている姿を、さり気なく描いている。

そんな人間達との、ほのぼのとした関係がふと垣間見られる。

 

何か都会の殺伐とした生活の中で、しみじみとした温かさを感じさせる番組だった。

 

番組冒頭で工藤が事務所にやってきて、事務所の開店を告げるプラカードを裏返した時、オープニングテーマのBad City が流れる映像を覚えている人も多いと思う。

 

見所

 

たいがい事件が一話で完結する為、たまたま一話を逃しても然程影響がない。

前回を引きずる事なく、次の作品が楽しめる。

出てくるゲストがなかなか豪華。登場するゲストを眺めていても、飽きないかもしれない。

 

個人的には『第5話:夜汽車できた あいつ』、ゲストの「水谷豊」がお気に入り。

松田優作と水谷豊のデュエットするシーンなどが見られ、貴重な映像もある。

 

当時水谷豊は、売り出し中の駆け出しであり、初々しさが見られる。

話は、田舎から家出した妹(原田美枝子)を探しに来た兄(水谷豊)という設定。

 

都会の片隅で細々と一生懸命に生きていく人間の姿を面白おかしく、且つシリアスに描かれているのに共感が持てる。

因みに妹の恋人役は、故古尾谷雅人。

 

工藤探偵と服部刑事の掛け合いが愉快。

作品を通じて服部刑事が吐くセリフ「工藤ちゃーん」は、番組のキーワード的な言葉。

作品の内容は忘れても、このセリフを覚えている人は多いと思う。

 

作品中で、しばし工藤が事件を解決するが、手柄は殆ど服部・松本刑事に譲る事が多い。

服部刑事も大方の状況を把握し、自分の手柄と引き換えに工藤の非合法行為を見逃す。

 

たまにそれを逆手にとり、工藤をコキ使う事もある。工藤も了承の上で、事件に協力する。

互いに持ちつ持たれつの関係。工藤探偵は裏社会に詳しく、場合によって刑事より頼りになる時もある。

 

最終話は壮絶。

それまでのコミカルな面がなく、シリアスに仲間を殺された工藤俊介の復讐劇が中心。

 

復讐後、工藤がプール・バーを出てすぐ、冒頭のスーパーでトラブルになった店員の逆恨みにあい、工藤が刺され終了する。

其の後、工藤が傘を差して街を闊歩するシーンがあるが、生死は未だに謎のまま。

 

角川映画1980年作:松田優作主演「野獣死すべし」の最後も、主人公の生死が不明のまま、不思議な終わり方をしている。

同じ流れを汲んだのであろうか。

 

追記

 

番組のエンディングで、次回の予告が松田優作本人から語られる。

最初は真面目だったが、徐々に真面目さがなくなり、最後あたりでは半ば投げやりとも思える予告も見られる。

しかし一話一話の説明が、何気に面白い。

 

毎回監督、脚本が変わっているのが特徴。予告を語る場面で、暫し監督・出演者のエピソードなどが語られる。

監督・出演者により、何気に好き嫌いが分かる。以前まとまった時間があり、DVDで全話を見た時、ふと気づいた。

 

全話を通し、同じ出演者が何回も出演しているのが分かる。出演者も当時は新人、端役だった。

後に大物になった人もいれば、其の後、消えた人もいる。男性陣はその後、活躍した人が多いが、女性陣は消えた人が多い。

 

意外にも故樹木希林が、誘拐犯のボス役で出演している。

『第9話:惑星から来た少年』

 

ゲストを見る限り、松田優作と個人的に付き合いのある人物が出演している事が多い。

二代目入れ墨の前田哲郎、片桐竜次などは同じ下関出身。

 

故古尾谷雅人、岩城滉一、故山谷初男、柄本明、江角英明、林ゆたか、永島瑛子、中島ゆたか等が、度々出演している。

 

余談で第1話で共演した当時の名前「熊谷美由紀」は、後の松田美由紀。

この共演がきっかけとなり、後に再婚した。尚、熊谷美由紀は『18話 犯罪大通り』にも出演している。

 

昔、地方などの平日午後3~5時の時間帯で、再放送している事が多かった。

子供の頃、たまたま夏休み中に再放送していた時、番組を纏めて見た記憶がある。

 

改めてDVDを見直したが、あまり覚えていない話が多い。人間の記憶は、如何に曖昧かと実感した。

既に40年以上経過した作品で、松田優作本人を始めとして成田三樹夫など、既に鬼籍に入った人が多い。

慎んでお悔やみ申し上げると同時に、芸能界を引退した人もチラホラ見受けられる。

少し残念な気もする。

 

因みにナンシーと供に、番組に華を添えていたヒロインの竹田かほりは、「甲斐バンド」のボーカル甲斐よしひろと結婚している。

 

(文中敬称略)