幼少期、人生の何か大切なモノを教わったアニメ『キャプテン』

大昔の子供の頃、見た漫画が何気に、其の後の自分の人生に影響を及ぼした事はないだろうか。

今回、独断と偏見で自分が読んだ漫画の中で、其の後の人生に多大な影響を与えた漫画を紹介したい。 

 

・作品       『キャプテン 』

・作者        ちば あきお

・出版社       集英社

・掲載誌       月刊ジャンプ

・掲載期間      1972年2月号 ~ 1979年3月号

・コミック      ジャンプコミック全26巻 

 

作品概要

 

墨谷二中に転校して来た2年の「谷口タカオ」は、転校前は名門青葉野球部で、2軍の補欠だった。

青葉では全く芽が出ない為、他に可能性を求め転校を決意。

谷口は地区予選で偶々見学した、一回戦すら突破できない弱小チーム「墨谷二中」に転校した。

 

本人談では、

「青葉で2軍の球拾いで、練習にも参加させて貰えない。墨谷であれば、少し頑張ればレギュラーになれるかもしれない」

という動機だった。

 

転校初日、谷口は早速野球部に行き、入部を申し込んだ。

キャプテンは外出中の為、副キャプテンが対応した。

 

しかし副キャプテンは谷口の事などお構いなし。ノックを続けた。

谷口は自ら球拾いを志願。こそこそ、以前所属していた学校のユニフォームに着替えた。

 

ユニフォームに着替えた後、墨谷二中の野球部メンバーは谷口のユニフォーム姿に唖然とした。

谷口が着替えたユニフォームは此処数年、全国中学野球選手権で立て続けに優勝していた、野球の名門「青葉学園」のユニフォームだった為。

 

墨谷のメンバーは、谷口が青葉から来たレギュラーと勘違いする。

何気に、谷口を囃し立てた。

 

しかし実際守備に立たせたが、エラーのしっぱなし。墨谷メンバーは疑いの目を持つ。

現キャプテンは、とうに谷口の実力を見抜いていた。しかし何故か目をつぶった。

 

谷口はキャプテンの気遣いと父親の励ましで、日夜の陰の特訓を続けた。

その結果、谷口は青葉のレギュラーに勝るとも劣らない程の実力を身に付けた。

 

月日は流れ、現3年生が野球部を卒業するシーズンがやってきた。

新メンバー発表で谷口は、現キャプテンから次のキャプテンを任された。

 

現キャプテンは、転校当初から谷口が青葉のレギュラーでない事を悟っていた。

しかし陰の努力で谷口は着実に力を身に着け、今ではキャプテンにふさわしい力量と判断。

谷口にキャプテンを引き継がせた。

 

これが後に続く、墨谷二中の伝説の始まり。

もしキャプテンが谷口を嘲笑。或いは罵倒していれば、後の墨谷伝説はなかった。

 

あくまで漫画の話だが、往々にして、現実社会にも当て嵌る逸話。漫画を通してのメインテーマである、「人間最後まで諦めず、努力を重ねよ」と言ったメッセージが含まれている。

 

1代目キャプテン:谷口タカオ

 

墨谷二中は谷口をキャプテンに据え、快進撃を続け、地区予選の決勝に駒を進めた。

決勝の相手は当然の如く、むかし谷口がいた青葉学園。

青葉は予選では、二軍選手を使っていた。当然墨谷との戦も、2軍で臨んでいた。

しかし墨谷は綿密に青葉対策をしていた為、試合の終盤ではリードを奪う。

 

青葉は堪らず、1軍選手を導入。青葉は1軍選手の活躍で、試合をひっくり返した。

青葉の15人目の選手交代の時、墨谷は審判団に抗議した。

 

抗議の理由は

 

「青葉は既に交代枠を使い果たし、もう交代はできない」

 

と。

 

審判団は一旦、墨谷の抗議を受け入れたが、青葉の部長は、

 

「中学野球のルールブックに載っていない為、交代は有効である」

 

と主張。

審判団は青葉の部長の主張を、そのまま認めてしまう。

 

仕方なく試合再開。再開後、投手松下は青葉の打者の打球を受け、投球不可能となった。

初めは谷口が継投する予定だったが、野球センスが抜群の1年生イガラシが継投。

見事、青葉の後続を抑えた。

 

泣いても笑っても墨谷最後の攻撃。墨谷は青葉の1軍投手を引っ張りだし、投手を攻略。

あと一歩まで追い詰めるが、ホーム・ベースでイガラシが無念のタッチアウトでゲームセット。

まさに両軍力を尽くした末の、晴れ晴れとした結末だった。

 

後日墨谷は青葉との戦いが認められ、翌年の春の選抜に選ばれた。

選抜に選ばれたのは良いが、墨谷の選手層の薄さはいかんともしがたい。

各運動部が気を利かせ野球部の戦力となる為、各部のエリート選手を野球部の練習に参加させた。

 

しかし野球部のあまりの練習の厳しさについていけず、全員リタイア。

各部の誠意は、全くの無駄になってしまった。

 

しかし無駄と思われた行為も決して無駄ではなかった。

野球部の練習に触発された各運動部は、今以上に練習に励む切っ掛けとなった。

 

墨谷と死闘を演じた青葉野球部は、全国大会に出場。見事、全国制覇を成し遂げた。

しかしマスコミが地区予選の青葉のルール破りを嗅ぎ付け、問題視。マスコミは野球連盟に訴えた。

野球連盟も問題ありと判断。思案の結果、墨谷・青葉の再試合を提案した。

 

再試合は墨谷とり、まさに「寝耳に水」。

墨谷は未だ予選すら勝ち抜いた事もないチーム。そのチームがいきなり全国大会決勝の檜舞台に上がった。

 

その為、墨谷は開始早々ペースがつかめず、序盤で青葉に大量リードを許した。

しかし試合が進むに連れ、徐々に落ち着きを取り戻し、持ち前の粘りで次第に試合を押し返す。

 

あと少しで追いつくと言う場面で、アクシデント発生。

イガラシのリリーフ予定だった谷口が指を負傷。骨折してしまう。

 

墨谷ナインは一旦は意気消沈するが、持ち前の粘りと不屈の精神で試合を盛り返す。

そして試合はいよいよ終盤、9回裏の墨谷の攻撃を迎えた。

 

谷口の指は限界に達し、指は既に骨折していた。谷口は最後の力を振り絞り、テキサスヒットを放つ。

墨谷は延長戦を戦える力は既になく、イガラシは勝負をかけ、3塁ベースを回った。

 

ホームベース手前でよろめき転倒するが、イガラシは上手く足を滑り込ませ、ホームイン。

墨谷は、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。

 

嘗て予選すら通過した事もなく、予選の一回戦も勝ち抜けなかった弱小チームの墨谷が、見事に全国優勝を成し遂げた瞬間。

 

かくして偉大な記録を打ち立てた谷口の時代は、幕を閉じた。

墨谷野球部は、2代目キャプテンに受け継がれる。

 

2代目キャプテン:丸井

 

2代目キャプテンが選ばれた。2代目キャプテンは「丸井」

嘗て1年生のイガラシにポジションを奪われ補欠になり、一度は野球を辞めようとした人物。

一度、挫折を経験した男。

 

前キャプテン谷口も、嘗ては名門青葉で2軍の補欠だった。

谷口も墨谷に移り、頭角を現した男である。互いに、何か共感するのもがあったのだろう。

 

丸井は就任早々、へまをしでかした。丸井の短気が招いた、行動の拙さとでも言おうか。

丸井の失敗は前年度優勝という勲章をひっさげ、新入生が多く集まった初日に爆発した。

 

丸井は後の4代目キャプテンと成る新人、「近藤」の言動に腹をたて、癇癪を起こした。

その場はイガラシのとり成しで、何とか収まるが、丸井の杞憂は春の選抜本番で現実となる。

 

選抜に臨んだ墨谷は、序盤こそリードするが、終盤近藤の不味い守備もあり、逆転負けを喰らった。

墨谷はあっけない、一回戦負けを喰らった。

 

負けを近藤一人のせいにして、憤るキャプテン丸井。

あまりの丸井の態度に、回りのナインもあきれ果てた。

 

「試合は確かに近藤のヘマで負けたが、自分達が何も準備もせず選抜に臨んだ事に問題があったのでないか」

と他のメンバーは必至に、丸井を諭した。

 

他のメンバーの説得で聊か丸井も自らの態度に非があったのと感じたのか、一人でバスを降り、自省した。

丸井は自省しながら、自分のチームに足りないものを見つけた。

その足りないものとは、「経験」。

 

丸井は足りないものを補うには、数多くの練習試合を熟すしかないとの結論に達した。

そう思った丸井は、選抜会場に引き返した。引き返した目的は、他校との練習試合を申し込む為。

 

丸井は数多くの練習試合を決め、部室に戻った。

部室では先に帰った部員たちが、ミーティングを始めていた。

ミーティングの末、他のメンバーは丸井をキャプテン失格として解任を決議した処だった。

 

丸井は自らの非を認め、その場で辞任した。

しかし自分が決めてきた練習試合は何とか遂行するよう頼み、その場を後にする。

 

丸井が立ち去った後、再協議の結果、やはりキャプテンは丸井しかいないと判断。

今後は皆の要請で、丸井は再びキャプテンに就任する。

 

丸井キャプテンの許、墨谷は練習試合で見事全勝を達成。

自信を強め、地区予選に臨んだ。

 

墨谷は順調に勝ち進み、決勝で再び宿敵青葉と対戦。

青葉との延長18回の死闘の末、イガラシのサヨナラホームランで墨谷は勝利する。

 

しかし延長18回まで戦った墨谷は、全員ボロボロの状態。

既に余力はなく、やむを得ず全国大会出場を辞退した。

 

此処までの墨谷は、いつも選手層の薄さに泣かされてきた。

かくして、2代目キャプテン丸井は終了する。

 

3代目キャプテン:イガラシ

 

3代目キャプテンが就任した。新キャプテンは「イガラシ」。

イガラシは1年入学時から、墨谷の変革に加わり、墨谷の中心選手として活躍した人物。

 

イガラシの代には墨谷は、もはや選手層の薄さに悩まされる事などなくなった。

逆に部員が多くなり、練習場所にも事欠く次第。

 

この時点で墨谷は、翌年の春の選抜に選ばれた。

墨谷は選抜に向け、猛練習を開始した。

 

その墨谷にマスコミの取材が来た。

そのマスコミは以前青葉のルール無視の試合を騒ぎたて、再試合の切っ掛けを作った人物。

その人物は取材後、紙面にて墨谷のあまりの練習のハードさを騒ぎ立た。

 

以前は味方とマスコミも、今度は敵に回ったような状況。

その記事は墨谷を不利な事態に導いた。

 

世間の墨谷に対する風当りも悪くなり、運悪く練習中に部員が怪我をする。

世間体と学校側(校長)の説得もあり、墨谷は泣く泣く春の選抜を辞退した。

 

選抜を辞退した墨谷は、夏の選手権に向け練習を再開した。

この頃になれば、野球部PTA・マスコミも墨谷の練習ぶりを認め、問題視する事はなくなった。

 

夏の選手権に向けた地区予選の決勝。

当然相手は宿敵青葉と思いきや、相手は準決勝で青葉を破り、イガラシの同級生(井口)が投手を務める江田川。

墨谷は苦戦の末、何とか競り勝ち、全国大会出場を果たした。

 

本戦で墨谷は、順調に勝ち進んだ。

決勝で前年度優勝校(和合)に逆転サヨナラを勝ちを収め、日本選手権制覇を成し遂げる。

イガラシは大役を終え、次期キャプテンに近藤を選んだ。

 

今思えば、谷口が表の主役。

裏の主役は、イガラシだったような気がする。

 

イガラシの代が終了した時、漫画はクライマックス、同じく墨谷野球部はほぼ一つのピークを迎えたと云える。

 

4代目キャプテン:近藤

 

4代目キャプテンが決まった。あの2代目キャプテン丸井を散々悩ませた「近藤」である。

近藤は自らは選手としては一流だが、キャプテンとしては資質に欠けている事を自覚していた。

 

キャプテン就任後も近藤はキャプテンシーを発揮する事もなく、練習は殆ど同僚に任せていた。

同僚も墨谷がより強くなる為に、自分達はその土台作りに徹しようと自覚していた。

後輩を鍛え、更に躍進する為のチーム作りに勤しんだ。

 

迎えた春の選抜。墨谷は1,2回戦を勝ち進む。

しかし準々決勝では相手のラフ・プレーに耐え兼ね、キャプテンの近藤自身が相手のラフプレーに対し報復。

結果、キャプテン自身が退場を喰らう。

 

近藤の退場の為墨谷は試合を捨て、後輩に経験を重ねる為の試合運びに切り替えた。

結果は当然、敗退。

 

敗退後、メンバーは学校の部室に帰り反省会を行った。

反省会は元キャプテン丸井を中心に行われた。

 

敗戦の第一戦犯に挙げられた近藤は、後輩が見ている目の前で、丸井から苦手なランニングを命ぜられた。

其の後、各選手が反省を述べ、自らランニングを志願。

部員全員がグランドに駆け出し、近藤と一緒にランニングを始めた。

 

墨谷は負けたその日に、明日からの戦いに備え、練習に励んだ。

野球部員の元気な声がグランドに谺して、漫画は幕を終える。

 

見所

 

キャプテンの見所と言えばやはり、弱小チームが切磋琢磨・研鑽・試行錯誤を重ね強くなり、全国の強豪校になる姿と思われる。

 

初めから上手い人はいない。只等身大の人間がいるだけ。

その等身大の人間が努力を重ね、次第に強くなっていく。

 

其処には決して素質はないが、人間努力をすれば、そこそこの力をつけることができるという強いメッセージが含まれている。

 

更に突き詰めれば、

 

「人間最大限努力をする事は大切だが、必ずしも報われるとは限らない」

 

と言う事も教えてくれるアニメだと思う。

 

人並以上に努力をしても、それが報われず、負ける事もある。

しかし決して負けに背を向ける訳でなく、事実として受け入れなければならない。

そんな教訓を教えてくれたアニメだった。

 

人が生きる上で、何か大切な物を教わったアニメだった。

アニメの中でも、暫し墨谷二中は負けている。

しかし負ける事で何かしらの教訓を掴み、翌日から負けた原因を克服しようと必死に練習に励む。

 

等身大のキャラが徐々に成長していく姿が見られ、共感が持てる。

漫画も後半になれば(イガラシがキャプテン時)、墨谷もすっかり名門の仲間入りを果たす。

チームは安定・発展期に入り、アニメは一つの終焉を迎える。

 

正直に言えば、2代キャプテン「丸井」の時代までは、墨谷の黎明・草創期だった。

個人的に、此処までが一番共感が持てた。

 

尚、1代目キャプテン「谷口」が青葉との再試合で勝利。

全国制覇の栄冠を勝ち取った代償に、指を負傷。

それが原因で、一度は野球を断念する。

 

しかし一念発起、墨谷高校の野球部に入学。

その後の活躍を記した続編「プレーボール」は有名。

 

プレーボールでは嘗て中学時代ライバルだった人間が墨谷高校に集まり、甲子園を目指す展開。

練習試合で墨谷高校は、甲子園常連校と対戦。力の差を見せつけられ、敗戦。

敗戦後、谷口キャプテンと部員がランニングをし乍ら、帰宅する場面で漫画は終了している。

 

初代谷口キャプテンが「4番でサード」と言う処が、いかにも当時の時代を反映している。

4番サードと言えばやはり、「巨人の長嶋選手」の影響。

 

ブログを書いて気付いたが、登場人物の姓は分かるが、名前までは知らない事に気づいた。

1代目キャプテンは、たまたま父母が登場。名前を呼んでいた為、「タカオ」と判明した。

 

2代目丸井、3代目イガラシ、4代目近藤は、名前すら分からなかった。

今見直してみれば、確かに疑問。他のキャラも同じで、名前は不明。

 

以上が漫画の感想だが、タイトル通り

 

「人生に於いて、何か大切なものを教えてくれた漫画・アニメ」

 

だったと思う。時々、折に触れ見直し、自らの人生を振り返るように心がけている。

 

(一部敬称略)

 

・ブログを書き約1年後、偶然にもYou Tubeにてアニメの版権を持つエイケンの公式チャンネルを発見しました。リンクを貼りますので、ご参考にされて下さい。

 

因みにアニメのオープニングソングは、今でも何か人生に立ち止まった時聞けば、又明日からの人生に何か活気を与えてくれます。

まさに人生の応援歌とも云えるでしょう。

 

(令和2年10月)

 

参考:https://youtu.be/2zhwpLKhEwE