初の女性パートナー『ダーティ・ハリー3』

★懐かしの洋画シリーズ

 

・題名      『ダーティ・ハリー3』    

・公開      1976年 米国

・提供      ワーナーブラザーズ     

・監督      ジェームズ・ファーゴ

・脚本      スターリング・シリファント、ディーン・リーズナー

・製作      ロバート・デイリー

・音楽      ジェリー・フィールディング

 

出演者

 

◆ハリー・キャラハン :クリント・イーストウッド  

サンフランシスコ市警殺人課の刑事。日頃の強引な捜査で、上司から睨まれ、一時人事課に左遷される。

其の後、嘗てのパートナーだったフランクの死後、再び殺人課に復帰する。

 

◆ケイト・ムーア   :タイン・デイリー      

サンフランシスコ市警初の女刑事。キャラハンのパートナーとなる。    

 

◆フランク・ジョージ :ジョン・ミッチャム     

最初のキャラハンの相棒。 キャラハンが人事課に左遷後、違うパートナーと組み、事件に遭遇。瀕死の傷を負い、そのまま死亡。

死亡間際、キャラハンに犯人逮捕の手がかりを伝える。

 

◆マッケイ      :ブラッドフォード・ディルマン

キャラハンの嫌味な上司。一時、キャラハンを人事課に左遷。

其の後再び殺人課に戻し、キャラハンが人事課で面接し、刑事に昇進したムーアをパートナーにする。

 

◆ボビー・マクスウェル:デバレン・ブックウォルター 

テロ集団のリーダー、ベトナム帰還兵。兵器工場を襲い、武装。

テロ集団と化し、市長を誘拐。市に対し、身代金を要求する。

 

◆ワンダー      :サマンサ・ドーン      

テロ集団の一味、売春婦。シスターとして暫し教会に出入りする。最後はムーアに撃たれ、死亡する。

 

◆ミッキー      :ジョセリン・ジョーンズ   

テロの一味で、ワンダと同じ売春婦。

テロ集団が武器庫を襲った際、フランクの流れ弾に当たり、死亡する。

 

◆ジョン神父     :M.Gケリー             

テロ集団と関わりあいをもつ人物。キャラハンを事の他、嫌う。

 

◆サンフランシスコ市長:ジョン・クロウフォード   

次期市長選のPRの為、女性刑事を積極的に採用する。

野球観戦後、テロ集団に誘拐される。

 

◆ジミー・マーティン :ニック・ペリグリノ     

市長の側近、腰巾着的人物。テロ集団に襲われた際、銃で撃たれ、死亡する。

 

◆エド・ムスタファ  :アルバート・ポップウェル  

黒人テロ集団のリーダー。

キャラハンに脅迫され、裏取引を行い、キャラハンに事件の手がかりを与える。

 

作品概要

 

毎度おなじみのキャラハン刑事。今回はパート1から登場しているフランク・ジョージ刑事とコンビを組み、パトロールの巡回中。

緊急無線で、街の酒屋に強盗が入ったとの連絡を受ける。

 

現場に急行した二人は、現場の指揮官が来るのを待たず、単独行動を実施。

キャラハンは例の如く、自己流の破天荒なやり方にて事件を解決する。

 

翌日キャラハンは、上司のマッケイに叱責される。

マッケイは事件解決後、市警に巨額の損害賠償が発生した事。

行き過ぎ捜査の為、解放された人質から市警が訴えられた事をキャラハンに詰問する。

マッケイはあまりのキャラハンの横暴ぶりに業を煮やし、キャラハンを人事課に異動させる。

 

翌日キャラハンは、刑事昇格の面接に立ち会う羽目となった。

キャラハンには、全くの不本意な転属だった。当然面接など、乗り気でない。

 

翌日面接は既に始まっていたが、キャラハンは堂々と遅刻する。

面接場に、何やら見慣れない女性が同伴している。

同僚刑事からの話では、なんでも今回市長の意向で女性刑事を誕生させるようだ。

その監視員(オブザーバー)として、市長側から派遣されて来た人間らしい。

市長はどうやら選挙宣伝の為(女性の地位向上)、今回の採用面接を利用する目論見だった。

 

キャラハンは、ますます気乗りしない。

たまたま面接を受けた女性警官のケイトに、面接で辛くあたってしまう。

面接は中途半端な形で終了。

この時点で面接されたケイトとキャラハンは、全くの無関係だった。

 

或る夜、市内の兵器工場が男女数人のグループに襲われた。

襲撃グループのリーダーは、ベトナム帰還兵の模様。

集団が武器庫を襲っている最中、キャラハン(人事異動前)とコンビを組んでいたフランクと新パートナーが、たまたま現場近くに居合わせた。

 

二人は兵器工場の様子がおかしいのに気付き、現場に踏み込んだ。

フランクは犯人が武器を運んでいる場面に鉢合わせ。逮捕を試みる。

 

しかしフランクは背後にいたリーダーの「ボビー・マクスウェル」に気付かず、後ろからサバイバルナイフで刺され、重傷を負う。

刺された弾みでフランクは、犯人の女性一人を銃で撃つ。

犯人の女性(ミッキー)は重体。そのまま置き去りにされ、死亡する。

 

犯人達はそのまま逃走。もう一人の刑事を撥ね、逃走する。

瀕死のフランクは病院に担がれた。死の間際、キャラハンを病床の許に呼ぶ。

 

フランクはキャラハンに

「自分の刺した人間は、嘗てキャラハンと手掛けた事件の関係者であり、心当たりがある」

と述べる。フランクはキャラハンそう伝え、息絶えた。

 

キャラハンは怒りに燃え、過去の事件の洗い出しにかかった。

過去の事件ファイルを調べようと資料課にファイルを要求する。しかし電話の主は、

「正式な手続きを踏め」

と主張する。

 

当然、キャラハンは無視。

キャラハンは電話の主の間抜けぶりに、苛立ち受話器口で相手を怒鳴りつける。

前述したが、此れは今回のテーマの一つである形式・官僚主義の批判とも取れる。

 

翌朝キャラハンは上司マッケイに、自分を殺人課に戻す人事を直訴。

キャラハンは徹夜で事件資料に目を通していた為、今朝の人事で自分が殺人課に戻っていた事実を知らなかった。

 

殺人課に戻された際、キャラハンは新しいパートナーを紹介された。

その人物は僅かだが人事課にいた際、面接をした女性警官、ケイトだった。

 

当然、キャラハンは気に食わない。早速ケイトと齟齬が生じる。

二人は兵器工場で犠牲となった守衛の解剖所見を、警察病院に聞きに出かけた。

病院でケイトは死体検死官・他の警官等から、(今で言う)セクハラ・パワハラを受ける。

 

二人が病院にいた際、突如病院の男子トイレで爆発が起こる。どうやら時限爆弾らしい。

建物周辺を調べると、キャラハンとケイトが病院に入る際、入口付近で見かけた怪しげなアフリカ系アメリカ人がウロウロしているのを発見する。

二人は追跡を開始する。二人の様子を見て、相手も二人に気付き逃げ出す。

 

アフリカ系アメリカ人は逃げ出す途中、何かをごみ箱に捨てた。

ケイトは捨てたものを回収。持ったまま、街中を駆け回った。

 

後で判明するが、それは兵器工場から盗まれた爆弾の一つだった。

追跡の末、キャラハンはカトリック教会に逃げた容疑者を逮捕する。

後に判明するが、容疑者が逃げ込んだ教会は決して無関係ではなかった。

 

逮捕後、男はどうやらアフリカ系アメリカが組織する過激派グループに出入りしていた形跡があった。

キャラハンとケイトは、過激派リーダー「ムスターファ」のアジトに直行する。

 

キャラハンとケイトは過激派グループのアジトに踏み込む。当然歓迎されない。まさに一発即発の状態。

リーダー「ムスタファ」は危険な状況を察し、キャラハンのみ部屋に招きいれる。

その場で二人は、取引をする。

 

取引の末、兵器工場を襲った一味は、ベトナム帰りの「ボビー・マクスウェル」と判明。

キャラハンはムスタファに礼を述べ、アジトを立ち去る。

 

二人が過激派アジトを立ち去る。

すると入れ替わるように、マッケイが「点数稼ぎか、早とちり」か分からないが、特殊部隊を率い、ムスタファ一味を逮捕する。

 

ムスタファ一味逮捕後、マッケイは市長に胡麻を摺る為、市長も選挙対策で女性の地位向上をアピールする為、ケイトを利用しようと企む。

 

市長がケイトに賞を与え、無理やり広告塔に利用しようと目論んだ。

しかし表彰式でキャラハンは、またもや上層部と衝突。停職処分を喰らう。

案の定、式典は台無し。

 

キャラハンはその場を飛び出す。ケイトもキャラハンを追いかけるように、その場を飛び出す。

どうやらケイト自身も、あまり自分の扱いに満足していなかった様子。

初めて二人が、パートナーとして信頼しあえた瞬間だった。

 

一方兵器工場を襲い、市を脅迫していた一味は、なかなか金がとれない為、強硬手段として市長を誘拐。

実力行使で金を奪う方法に切り替えた。

 

市長が誘拐された為、今度はキャラハンを目の敵にしていたマッケイが手がかりを求め、キャラハンに接近してきた。

いつもキャラハンのやり方に反対していた上層部(マッケイ)だが、キャラハンがいなければ、所詮何もできないのが滑稽。

結局汚い仕事をキャラハンに押し付け、自分達は点数稼ぎをしていたに過ぎない。

 

キャラハンは当然、マッケイの命令を無視。

キャラハンはケイトの協力を得、単独で事件を調べ始める。

 

兵器工場で置き去りにされた女の身辺を調べた結果、どうやら犯人集団のリーダーはベトナム帰還後、女のヒモの様な生活をしていている事実を突き止める。

 

キャラハンは死亡した女が以前勤めていた仕事場(売春宿)に踏み込む。

ひと悶着の末、女は或るカトリック教会に出入りしている情報を聞き出す。

その教会は、以前キャラハンが病院から追跡した爆弾魔が逃げ込んだ場所だった。

 

教会に踏み込んだキャラハンは、神父を尋問する。

神父は初めはシラを切る。シラを切っていた時、一味の女(ワンダー)がシスターに扮して銃を持ち、キャラハンを撃とうと忍び寄った。

ワンダーがキャラハンを撃とうとした瞬間、ケイトが銃で女を射殺する。

今までシラを切っていた神父はついに犯人集団との関係を認め、キャラハンに犯人一味のアジトを教える。

 

キャラハンとケイトは、船で市長が監禁されている「アルカトラズ島」に向かう。

島に着くなり、銃撃戦となる。

キャラハンが敵を惹きつけ、ケイトは市長を救出する。

しかしケイトはキャラハンが犯人に撃たれるのを庇い、敵の凶弾に倒れる。

 

犯人の最後の一人は、リーダーのボビー・マクスウェルのみ。

キャラハンは、ボビーが落とした使い捨ての対戦車バスーカー砲でボビーを撃ち抜き、事件は解決する。

 

解決後、市長はキャラハンに礼を述べるが、キャラハンは無言で立ち去る。

自分の為に犠牲になったケイトの許に歩みより、ケイトの遺体を抱きあげる。

 

何も知らないマッケイのヘリコプターが、上空を旋回。

犯人に話しかける姿が虚しさを誘う。映画は此処で終了する。

 

見所

 

キャラハンが上司マッケイに人事課に異動の命令を受けた際、キャラハンが人事課なんて馬鹿げていると発言する。

その時のマッケイの反応が面白い。

マッケイはキャラハンが馬鹿げていると罵った人事課に、10年いた。

劇中ではマッケイが如何に現場から乖離、何も現場を知らない官僚的人間であるのが理解できる。

 

今回は女性の社会的地位向上と同時に、現場と内部の乖離・対立が何気に組み込まれている映画とも云える

既に死語かもしれないが、嘗て米国で持て囃された「ウーマン・リブ」の先駆けとも云える。

当時米国社会では、女性の地位向上が叫ばれ、ウーマン・リブ運動なるものが存在した。

現在の日本では、「男女同権」「雇用機会均等」であろうか。

劇中では、男社会である警察機構に充て嵌め、敢えて女性刑事を登場させ、問題を投げ掛けている。

 

いま日本で流行りの「セクハラ」「パワハラ」などの要素も取り入れられている。

アクション映画だが、何気に時代を先駆けしていると言える。

映画公開が1970年代を考慮すれば、米国社会では今日の日本が直面している問題が、既に表面化していたと言える。

 

例えば警察病院での検死官、ムスタファ一味などからケイトは嫌がらせを受ける。

最も顕著だったのは、兵器工場から盗まれたバズーカ砲の試し撃ちでの場面。

警察側の男性陣が軍関係者から試し撃ちのバズーカを手渡されるが、ケイトの処に来た際、軍の男は無理やりケイトからバズーカをひったくるシーンが当て嵌ると言える。

 

試し打ちをする際、ケイトがバズーカの後ろに回り込み、キャラハンに無理やり引っ張られる。

バズーカ発射後、自分のいた処が如何に危険であったのを理解するケイトの顔が何気に笑える。

驚いたと同時に、とんでも無い処(殺人課)に来てしまったと言った表情も見て取れる。

 

敢えて言えば、サンフランシスコ市長が人気取りで仕組んだ行為。

刑事採用の面接会場で、市長の意向を含んだ女性が登場するのも何か頷ける。

ケイトの刑事昇格は、市長の忖度が働いたとも言える。

 

最初は何故、警察病院が爆破されたのか理解できなかった。

市長が誘拐され、犯人一味が身代金を要求した時、漸く理解できた。

犯人グループは兵器工場を襲撃後、市に金を要求していたが市が応じず、脅しの意味も含め、警察病院に爆弾を仕掛けたと理解できた。

 

劇中マッケイの意向で黒人指導者のムスタファが逮捕され、ケイトが女性刑事の象徴として表彰されるシーンが典型。

映像を見ても分かるが、キャラハン刑事は寧ろ、オマケのような扱い。

 

キャラハンは抗議の意味も含み、表彰間際で例の如くセレモニーをぶち壊すのも又、いつものキャラハンらしい。

現場と首脳陣の乖離が、上手く描かれている。官僚・形式主義の反抗とも見える。

尚、この構造は「ダイ・ハード」「リーサルウェポン」にもパターンは違うが、似たようなシーンが描かれている。

 

キャラハンとケイトが市長を助ける為乗り込んだ島は、嘗て囚人を収容する為に造られた「アルカトラズ島」

アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンフランシスコ湾内に位置。1963年迄、実際に使用されていた。

 

尚、クリント・イーストウッドは1979年公開された『アルカトラズからの脱出』でも主演を果たしている。

監督のドン・シーゲルとは、「ダーティ・ハリー1」でもコンビを組んだ。

 

事件が解決。市長が解放され、キャラハンに礼を述べるが、キャラハンは市長に何も答えない。

無言で立ち去り自分を助け、犠牲となった相棒ケイトの亡骸を抱き上げるシーンが印象的。

市長もキャラハンの態度に、相変わらず無粋な男だと言った顔もするのも印象深い。

 

何にも状態を把握しておらず、上司のマッケイがヘリコプターから犯人に対し、犯人の要求を呑んだ事を告げる呼びかけが間抜けそのもの。

如何に現場と首脳陣との乖離が理解できるシーン。

 

結局どの組織でも同じだが。

 

追記

 

ビッグ・エド・ムスタファ役の「アルバート・ポップウェル」。毎回、何か違った役で登場している。

何れの章も何かしら重要な役、言葉を発する。

「ダーティ・ハリー」シリーズには、なくてはならない存在。彼は続編の「ダーティ・ハリー4」でも出演している。

 

冒頭でキャラハンとコンビを組んでいるフランク・ジョージは、シリーズのパート1から出演している。

今回初めてキャラハンとコンビを組んだ。

コンビを組んだが今までのパターンと同じで、事件に巻き込まれ殉職している。

今回の初の女性パートナー「ケイト」も、最後に命を落とす。

唯一の例外は、パート1でコンビを組んだチコのみ。チコは博士号を取得していた為、現在大学教授をしている模様。

 

パート2でも述べたが、フランク・ジョージを演じた「ジョン・ミッチャム」「ロバート・ミッチャム」の弟。

ローバート・ミッチャムは「さらば愛しき女よ」の「フィリップ・マーロウ」役が有名。

 

(文中敬称略)

・前回

懐かしの洋画、クリント・イーストウッド『ダーティハリー/Dirty Harry2』