オールスター揃いの脱走映画の名作『大脱走』 計画編

今回は脱走映画で有名な、「大脱走」を取り上げてみたいと思います。
先ず出演者が豪華。劇中に流れる音楽も最高。上映時間が3時間以上になるが、長さが感じられず、全く苦にならない映画。
おまけに結末が分かっても、何故かいつも見ていて、ハラハラする映画と言えるのではないでしょうか。
・題名 『大脱走/ The Great Escape』
・公開 1963年米国
・配給 ユナイテッド・アーティスツ
・監督 ジョン・スタージェス
・製作 ジョン・スタージェス
・脚本 ジェームズ・クラヴェル、W・R・バーネット
・音楽 エルマー・バーンスタイン
・撮影 ダニエル・ファップ
・原作 ポール・ブリックヒル
目次
出演者
◆ロジャー・バートレット : リチャード・アッテンボロー(ビッグX)
◆ラムゼイ : ジェームズ・ドナルド(捕虜達の司令官)
◆サンディ・マクドナルド : ゴードン・ジャクソン(情報屋)
◆ダニエル・ヴェリンスキー : チャールズ・ブロンソン(トンネル王)
◆バージル・ヒルツ : スティーブ・マックィーン(独房王)
◆ルイス・セジウィック : ジェームス・コバーン(製造屋)
◆アンソニー・ヘンドリー : ジェームズ・ガーナー(調達屋)
◆コリン・ブライス : ドナルド・プレザンス(偽造屋)
◆アシュレー・ピット : デビッド・マッカラム(土拡散屋)
◆デニス・キャベディッシュ : ナイジェル・ストック(測量屋)
◆ウィリアム・ディックス : ジョン・レイトン(トンネル王)
◆アーチボルド・アイブス : アンガス・レニー(モグラ)
◆フォン・ルーゲル : ハンネス・メッセマー(収容所署長)
◆グリフィス : ロバート・デズモンド(仕立屋)
◆べルナー : ロベルト・グラフ(イタチ)
あらすじ
第二次大戦中、ドイツ領の新しくできた捕虜収容所に数台のトラックが到着した。
移送された捕虜たちは、ドイツ軍に捕虜となった後、数々の脱走を試みた常習犯ばかり。
ドイツ軍は捕虜の脱走に手を焼き、脱走後の捕獲、攪乱に頭を悩ませていた。
そこでドイツ軍は各捕虜収容所から常習犯たちをかき集め、一つの収容所に集め、厳重に監視する作戦を計画した。
新しく設立した収容所は厳重。監視する兵は、ドイツ軍の選りすぐり。
腐った卵を一つのカゴに入れ、監視する計画。効率的とも言えた。
物語では各収容所から集められた選りすぐりの脱走のプロが、一つの収容所に集めらた処から始まる。
相手も監視のプロなら、捕虜側も脱走のプロといった処。
捕虜たちは集団で脱走を計画、実行する。
実行する迄、色々な紆余曲折、哀しいい別れあり、決して一筋縄ではいかない。
脱走決行当日も、思いがけないハプニングに見舞われる。数々の難局を切り抜け、捕虜は脱走した。
映画後半は、それぞれ脱走した人間達にスポットが充てられている。
皆ドイツ軍の監視の目を掻い潜り、それぞれ脱走を試みるのだが。
そして最後には衝撃的な結末が。
見所
なんと言って見所は、豪華キャストによる共演。ストーリー性もさる事ながら、出演者の一人一人の経歴、演技は申し分ない。
出演者の中でもとくに際立つ活躍を見せるメンバーは、それぞれが主役と言っても過言でない。
その中でも特に主役と言えば、劇中で「独房王」と紹介されているヒルツ(ステーブ・マックィーン)だろうか。
脱走を計画・作業を進める皆が主役だが、敢えて言えば、マックィーンが主役。
初めは単独行動で脱走を試みる。
途中で仲間の死で協力的になり、率先して脱走計画を遂行する。
新しい収容所に着いた初日から捕虜が、脱走の為の調査・仕事に取り掛かるのが面白い。
それぞれが誰に言われるともなく、着実に自らの仕事を着実に熟すシーンが愉快。脱走専門の仕事人といった処であろうか。
後の説明が分かり易くする為、敢えて皆の収容所での役割を上記にて明記した。
初日から各自脱走を試みるが(ダニー、セジウィック、ウィリー、アイブス等)、悉く監守に見破られてしまう。
初日と言う事もあり、大目に見て貰えたが。
ヒルツは1人で野球をする振りをして、鉄条網の監視状況を調べる。
しかしあまり大胆だった為、塔の守衛に発見される。
騒ぎを聞いた所長が駆けつけ、ヒルツと言葉のやり取りを交わす。
ヒルツの言動が所長の癇に障り、早速独房行きとなる。
2人のやり取りを侮辱した罰で、アイブスも一緒に独房入りとなる。
ヒルツとアイブスは一緒に独房に入った縁で、奇妙な友情が生まれた。今後、行動を共にする。
調達屋のヘンドリーが何かを盗もうとしてトラックを物色していた時、それを見咎めやってくるドイツ兵が興味深い。
彼は後に、ヘンドリーや偽造屋コリンに対し、重要な役割を果たす。答えは後程。
脱走計画とはあまり関係ないが、測量屋カベンディッシュが収容所の部屋に入り、自分の寝床はベッドの二階がいいと飛び乗るシーンがある。
これも後の伏線となっている。
それぞれが脱走の手筈を考えていた時、数々の脱走を手掛けて来たバートレット(通称:ビッグX)が、ゲシュタポのSSに拘束され、移送されてきた。
ゲシュタポのSSは、バートレットを吐かせようと拷問したが、どうやら出来なかった様子。
拘束期間が過ぎ、バートレットは空軍所属の為、軍の管轄に回され、新しい収容所に移送された。
バートレットが収容所に来た為、脱走のオールスターが集結した。
その夜、早速脱走計画の会議が行われた。今回の脱走計画は、何と250人近く。今迄とは、桁違い。
計画を遂行する為、綿密な計画と役割分担が行われた。善因がトンネルを掘り、脱走を遂行する為、計画に邁進する。
密議後、ヘンドリーは、ルームメイトになったコリンと会話を交わす。
コリンは何処となく風変り、知的さも漂う。何か前線の兵士としては、雰囲気が異なる。
会話をする中に、コリンは前線の兵士ではなく、飛行機で偵察の際、撃墜され捕虜になったのを知る。
コリンの仕事は、書類の偽造屋。
翌日から仕事が始まる。仕事初めの方法が、なかなか面白い。思わず笑ってしまう。
例えばトンネルの掘る為、コンクリートの壁をぶち破る場面があるが、外の野良仕事のカモフラージュして作業する事。
レクリエーション室のトンネル掘りでは、敵の見回りが来た瞬間、急いで作業を中止。
排水溝を偽造。ウィリーはポップ掛け。ダニーは、シャワーを浴びるのに偽装する等が見所。
一方、集団脱走とは別行動で、独房仲間のヒルツとアイブスは、色々と脱走を試みる。
しかしなかなか上手く事が運ばない。
失敗を重ねる度、ヒルツは怯む事がないが、アイブスは徐々に精神的を病んでしまう。
トンネルを掘るにつれ、問題となったのは、掘り起こされた土(劇中では、約50トン)。トンネルにより土の種類が違う。
問題を解決する為、編み出された方法は、各トンネルの砂を一緒に混ぜ、バレずに投棄する事。
解決には、ピット(土分散屋)のやり方が採用された。
ズボンの中に2つの袋を準備。外で2人の砂を捨て何食わぬ顔で混ぜ合わせ、投棄する。
カモフラージュの為、収容所外でガーデニングをする。行進の演習をする際、どさくさ紛れに砂を投棄する等。
測量屋キャベディッシュは仕事がない時、他の囚人がカモフラージュし易くする為、収容所内で声楽隊を設立。
キャラクター的には、なかなかコミカルな役柄。
身分証明書、国内渡航証明書、軍籍証明書、個人業務日程表等を偽造する為、本物が必要。
調達屋ヘンドリーは、初めに登場したドイツ兵、ベルナー(通称:イタチ)を狙った。
ヘンドリーは巧みにベルナーに近づき、自分の部屋に誘った。
べルナー(イタチ)は部屋に誘われ、ヘンドリーに自分の大切な書類が入った財布を掏られてしまう。
ヘンドリーは、目的達成といった処。
おまけに用済みになり、ベルナーに財布を返す際も、しっかり仕事を熟す。
大人数で脱走する為、民間人を装う計画が立てられた。その為、大量の民間人用の服装が必要になった。
いろいろ準備する為、仕立屋グリフィスが活躍した。
グリフィスは仕立の腕は一人前だが、後でとんでもないへまをやらかす。それは後程。
徐々に準備が整うが、肝心な収容所を出た後の情報が全く皆無。
ビッグXはヒルツに、とんでもない取引を持ち出した。
ヒルツが一人で脱走。収容所周辺の情報を調べ、態と捕まる。独房から帰還後、その情報を教えて貰うという取引。一つの賭け。
当然ヒルツは、取引を撥ねつける。あまりにも矛盾した要求の為。
一度は断るが、其の後、或る出来事をきっかけに条件を呑む。
ベルナーが大切な書類を無くした事を、ヘンドリーに伝えに来る。
何処を探しても見当たらない。きっと昼間、ヘンドリーの部屋に来た時、なくしたと告げる。
ヘンドリーは財布を返す見返りとして、偽造に使うカメラを要求する。
大切な書類を失敬しただけでなく、返す際も見返りを求めた。
強かと言うべきか、流石。ベルナーの間抜けと言える役が愉快。
しかし間抜け役のベルナーも、後に面目躍如の働きをする。
トンネルを掘っている最中、トンネルを支える添え木が足りず、崩落が多発。
添え木を集める為、強引とも言える木を集め始めた。
屋根裏、壁裏、個人のベットの木等。ヒルツは木を集める作業に従事。キャベディッシュが使う2階ベットの木まで調達した。
何も知らないキャベディッシュは昼寝しようと思い、勢いよくベットに転がり込んだ。
すると添え木が少ない為、ベッドの底が抜け真っ逆さまにベッドから落ちる。
収容所に来た初日、勢いよくベッドに飛び乗った伏線が、ここに生かされている。
脱走作業とは別に、3人のアメリカ軍人は収容所で作業をしていた。
3人とはヒルツ、ヘンドリー、ゴフ(あまり登場しないが、独房に入るヒルツに野球用のグラブを渡す役)。
3人は作業とは別に、7月4日アメリカ独立記念日を祝う為、密造酒を造っていた。
余談だが3人が密造酒をつくり試飲する場面があるが、監督からなかなかOKが出ず、何回も取り直したようだ。
何気に独立記念を祝う場面も重要な役割を果たす。
密造酒が完成。7月4日のアメリカ独立記念を3人が祝う。収容所全体がお祭り気分となり、3人の振る舞い酒で賑わう。
脱走計画の首脳陣も気分転換に良いと、今日の作業を中止を決定。
皆が陽気に浮かれている最中、普段あまり点検をしていない収容所の所々にドイツ守衛が念入りに調べ始めた。
ドイツ兵のベルナーが偶然ヤカンの湯をこぼした時、ヤカンの湯が床に広がらず、床に直垂るのを発見する。
床に湯が直垂ると言う事は、中が空洞を言う事。つまりトンネルがあるという意味。
結果、現在メインで掘っていたトンネル(トンネル名:トム)が発見されてしまう。
トンネルが発見された事に絶望したアイブスは、精神が錯乱。いきなり鉄条網を乗り越えようとし、守衛の機銃掃射で命を落とす。
この出来事を機に、ヒルツは積極的に脱走に協力する。
情報を得る為、1人で脱走。情報を得た後、態とつかまり、収容所に帰還した。
ヒルツが捕まり独房から出てく迄、いろいろな問題が発生する。
時間をかけて偽造した書類が誤りが発覚。偽造屋コリンの目の視力が低下する等。
追加で今迄、順調にトンネルを掘っていたダニーだが、暗所閉所恐怖を再発させた。
ダニーは今まで病気を隠し、トンネルを掘っていたが、既に精神状態は限界に来ていた。
1人で鉄条網のワイヤーを切り、脱出を試みるが、同じトンネル仲間のウィリーに説得され、トンネル作業を続ける。
バートレットは、コリンの目の状態が悪いのに気付いた。計画に支障を来すのを恐れ、コリンに断念するよう説得する。
しかし同室のヘンドリーはコリンと一緒に脱走する事を提案、了解を得る。
ヒルツが独房から戻って来た。決行日の当日だった。まさにギリギリのタイミング。
皆がぞくぞくと、トンネルの入り口に集まる。皆が決行の時を待つ。
決行の時が来た。ヒルツは今迄の手柄で、一番初めに脱出する権利を得た。
いよいよトンネルは貫通。いざ脱出しようとした時、初めの蹉跌が起こった。
測量ミスでトンネルは森まで届かず、出口は収容所の塀の近くだった。(約20フィート程短かった:約18メートル)。
ヒルツは一度トンネルを抜け出す。森に潜み歩哨がいない時、合図を送り脱出する案を試みた。
何人か脱出させた後、連合軍の空襲で収容所の灯りが消された。
丁度トンネル内にいたダニーが病気を発生。トンネル内でパニックを引き起こす。
トンネルから何とか引っ張り出し、数人が逃げるが、やがて空襲が終わる。
再びロープで合図を送り脱出する作業に戻る。
脱出する際、測量屋キャベディッシュが躓き転んだ。その音を聞きつけ、ドイツ軍歩哨が収容所の外を偵察し始めた。
劇中ではキャベディッシュが2回、へまをやらかした事になる。
一つ目は測量ミスによるトンネルが短い事。
二つ目は躓く事で、トンネルがばれてしまう事。
歩哨がなかなか立ち去らず、合図が無い為、痺れをきらした仕立屋グリフィスはたまらずトンネルを飛び出し、守衛に発見された。
もしトンネルが予定通りの長さであれば、更に多くの捕虜が脱走。時間が短縮できた。
トンネルからの脱出は此処で終了。
後はトンネル脱走後の各個人にスポットを当てたシーンとなる。
余談だが、DVDでは映画が切れ目なく続くが、昔のレンタルビデオでは、此処が一本目のビデオとなり、逃走シーンが二本目となっていた。懐かしい。
(文中敬称略)
長くなりましたので、次回に続きます。