核弾頭が盗まれた。コードネームは『ブロークン・アロー』
★懐かしい洋画シリーズ
軍が保有する核弾頭が盗まれた。盗んだのは、現役空軍パイロットの少佐。
少佐は演習に託け、2基の核弾頭を地上に投下。テロリストと手を組み、一儲けを企んでいた。
国防総省(ペンタゴン)に核弾頭の紛失を意味する、「ブロークン・アロー」が発令された。
果たして核弾頭の行方は?
・題名 『ブロークン・アロー』
・監督 ジョン・ウー
・脚本 グラハム・ヨスト
・製作 マーク・ゴートン、ビル・バグラー
・公開 1996年
・音楽 ハンス・ズイマー
・配給 20世紀フォックス
目次
出演者
◆ライリー・ヘイル大尉:クリスチャン・スレーター
ユタ空軍基地に所属するパイロット。階級は大尉。
今回核弾頭を積んだ極秘訓練に参加する。
訓練の際、機に同乗していたディーキンズに銃を突き付けられ、格闘。
そのまま機外に投げ出される。
機外の投げ出された後、パトロール中の公園監視員テリーに出会う。
成り行き上、共に核弾頭を盗んだテロ集団を追跡する。
◆ディク・ディーキンズ少佐:ジョン・トラボルタ
へイルと同じで、ユタ空軍基地に所属するパイロット。
階級はヘイルに比べ、一つ上の少佐。
ヘイルと同じステレス機に同乗。核弾頭を積んだ極秘訓練に参加する。
訓練中、何を思ったかヘイルに銃を付きつけ二人は格闘。
格闘中、へイルを機外に放り出す。機内で一人になった後、核弾頭を砂漠に投下。
脱出後、機をわざと墜落させる。
◆テリー・カーマイケル:サマンサ・マシス
ユタ州の公園監視員(パーク・レインジャー)。
或る夜、パトロールに出かけた際、ステレス機墜落事件に遭遇。
機外に放り出されたへイルに出会う。
初めは任務の為へイルを逮捕しようとするが、知らず知らずに事件に巻き込まれる。
其の後、へイルと一緒に事件解決をする羽目になる。
◆マックス・ウィルキンス大佐:デルロイ・リンドー
ユタ空軍マクマラン基地の現地司令官。
ヘイルとディーキンズに、核弾頭を搭載したステレス機の極秘訓練を命ずる。
核弾頭消失後、事件の陣頭指揮にあたる。
◆プリチェット:ボブ・ガントン
計画のスポンサー。金銭面でディーキンズを支援する。
なかなか計画が進まず、常にイライラしている。
あまりにも口うるさい為、途中でディーキンズに殺害される。
◆ベアード国防長官:カートウッド・スミス
国防総省の長官。
当初は単なる墜落事故で収めるつもりだったが、後に核弾頭の紛失と分かり動揺。
大統領補佐官とともに、事態の収拾にあたる。
◆ケリー:ハウィー・ロング
アメリカ空軍マクマラン基地、核弾頭処理班に所属。
紛失した核弾頭の追跡チームに参加する。
核弾頭を発見後、隊長ローズを射殺する。実はテロリスト集団の一味。
◆ジャイルズ大統領補佐官:プレンティス:フランク・ホエーリー
切れ者の大統領補佐官。今回の核弾頭紛失に対する、政府側の責任者。
自ら現地(マクマラン基地)に飛び、陣頭指揮にあたる。
◆参謀本部議長:ジャック・トンプソン
軍首脳部の最高指導者。おそらく統合参謀議長と思われる。
三軍(陸海空)のトップ。
あらすじ
ライリー・ヘイル大尉(クリスチャン・スレーター)とディク・ディーキンズ少佐(ジョン・トラボルタ)はアメリカ空軍のパイロットだった。
二人はステルス機で、夜間訓練飛行を行う。訓練は核弾頭を積んだ極秘事項。
訓練は核弾頭を積んだ際、周囲の影響を調べるのが目的。
訓練機はステレス機。当時のアメリカ空軍では、最新鋭機。
ステレスとは、レーダーに探知されないと言う意味。
軍用機のネームも、「隠密」。まさに極秘任務だった。
軍用機は初めは順調に進んでいた。
訓練の為ステレス機は、地上スレスレの低空飛行を実行する。
低空飛行に成功。ステレス機は自動操縦に切り替わった。
緊張が解れ、二人は取り留めもない会話を交わす。
二人が会話中、いきなりディーキンズがヘイルに銃を向けた。
ヘイルはガラスに映ったディーキンズの姿を見つける。忽ち二人は格闘となる。
格闘の末、ヘイルはディーキンズに機外に放り出される。
ディーキンズは基地に、ヘイルが失敗したと連絡。機はそのまま消息を絶つ。
消息を絶った機は墜落。二人のパイロットは生死が分からず、行方不明。
機に積んでいた、2基の核弾頭も供に行方不明となった。
ユタ州マクマラン空軍基地から国防総省に、コードネーム(暗号)が発令された。
コードネームは、『ブロークン・アロー』。
ブロークン・アローとは、核弾頭の紛失を意味する。
紛失した核弾頭、そして二人のパイロットの行方は?
見所
映画冒頭、ボクシングの試合のシーンから始まる。
試合中、今回悪役を務めるディーキンズ少佐(ジョン・トラボルタ)が呟く。
「左と思わせて、右で殴る」
さり気ない呟きだったが、後に重要な言葉になる。冒頭では、気付く由もなかった。
物事はトラップ(騙し)。
ディーキンズはフォアマンとモハメド・アリ(カシアス・クレイ)の試合を例にだし、述べていた。
もう一つは
「諦めが早い」
此れが後の伏線となる。
空軍基地は、ユタ州(マクマラン基地)と思われる。地図に明確に示されている。
訓練では、地上スレスレの低空飛行を行う。
何故低空スレスレに飛ぶ必要があるのか。それはレーダーに捕捉されない為。
レーダーに捕捉されないと言う事は、もしステレス機が行方不明になれば、追跡不可能という事。
ディーキンズ少佐は今回、その隙を付いた。
追跡不可能の状態になり、核弾頭をまんまんと手に入れる事に成功する。
訓練飛行での二人の会話中、ステレス機が20億ドルと述べていた。
現在のレートで換算して約220億円(1ドル約110円で計算)。
当時も今も、あまりレートに変化はないと思われる。
因ってステレス1機が、約220億円と推定される。当に、途轍もない値段。
ステレス機が墜落後、国防総省(ペンタゴン)にて、上層部の緊急会議が行われる。
その際、国防大臣と大統領補佐官との会話が興味深い。
国防大臣がステレス機の墜落を、軍による民間機の誤射と発表すると告げた際、大統領補佐官が、直ぐにバレる為、正直に発表した方が良いと述べた。
その時軍部が、「君はそれでも役人か」と述べた事。
つまり此れは、役人は常に国民に対し、嘘をつくのが仕事だと公言したに等しい。
所詮政府役人は、どこも同じと言う事であろうか。
核弾頭を盗んだディーキンズが率いるテロ集団の目的は、金。
核弾頭を武器に、政府を脅迫。政府から大金をせしめようとする魂胆だった。
一方、機内から外に放り出されたヘイルは、砂漠のど真ん中で目が覚めた。
目が覚めたヘイルは、ディーキンズに嵌められた事を知る。
自分を罠にはめたディーキンズに一泡ふかせる為、へイルはディーキンズを追跡を開始した。
へイルはひょんな事から、レインジャー(公園監視員)のテリーと出会う。
テリーは事情はなにも知れなかったが、知らず知らずに事件に巻き込まれる。
ディーキンズの一味を追跡するへイルとテリーは、核弾頭を積んだディーキンズ一味の車を発見。
二人は核弾頭を積んだ車を奪取。そのまま逃走して廃鉱にいく。
ヘイズは核弾頭にセットされている暗号コードをわざと間違え(3回間違えれば、無効となる)、核弾頭を無効にしようとする。
しかしヘイズが無効にしようとするが、逆に核弾頭の起爆装置が作動する。
ディーキンズが何かあるかもしれないと念を入れ、細工をした結果だった。
核爆発が起こるまで、僅か30分(途中でディーキンズにより、短縮された)。
へイルとテリーは廃鉱の地下で核爆発を起こさせるため、核弾頭を地下に運ぶ。
劇中では、600メートル地下で核爆発させた事になっているが、実際600メートル程で大丈夫なのかと、ふと疑問が湧いた。
追加で作業用エレベーターで地下に潜った際、空調は大丈夫なのかとも思った。
つっこみ処ではないかもしれないが、廃鉱の地下で銃撃戦の際、へイルの拳銃の弾が切れないのが不思議。
とっくに弾倉が空になっていると思うが。
へイルが銃撃戦の際、二丁の拳銃を使うシーンは、ジョン・ウー監督作品『男たちの挽歌』でお馴染みのシーン。
今回も劇中で採用された。
核爆弾が炸裂。周囲に地響がなり響く。
核が爆発した際、ディーキンズの乗る車に津波のような砂嵐が押し寄せる様が面白い。
核爆発の衝撃で、ヘリが墜落。マクマラン基地の電子機器が使えなくなると述べているが、実際の処、どうなのだろうか?
核爆発の電磁パルスの影響で、周囲の電子機器が使えなくなるのかは分からない。
廃鉱の地下に閉じ込めらたヘイルとテリーは隧道を伝い、川に脱出。脱出後、地下の核爆弾が炸裂する。
爆発後、核汚染されていないのをテリーに証明する為、へイルは
と述べているが、本当だろうか?
たまたまへイルがテリーを落ち着かせる為、咄嗟にでた言葉とも思えるが。
核爆弾が炸裂した映像は映画の為に作られたシロモノだが、何かぞっとする。
此れが核のおそろしさと言うものだろうか。
ディーキンズ達の向かう先はソルト・レイクに見せかけて、実はデンバーだった。
ディーキンズ得意のトラップ。
映画冒頭のボクシングの試合の最中、ディーキンズが述べた言葉。
「左に見せかけ、右で殴る」。騙しのテクニック。
ディーキンズは列車に核弾頭を搭載。デンバーに向かう。
デンバー行きの列車にテリーが成り行き上、搭乗していた。
テリーは核爆発を阻止する為、必死に妨害を試みる。
核弾頭の爆発を阻止しようとするも、解除コードが分からない。モタモタしている中に、ディーキンズに見つかってしまう。
ディーキンズはテリーに問いかける。
ディーキンズはテリーに核弾頭を起爆させる為、起爆コードを入力させる。
テリーは震えながらも数字を押すが、最後の場面で起爆コードをキャンセルする。
一方、へイルは軍の探索部隊に保護され、ウィルキンス大佐とジャイルズ大統領補佐官に事情を説明。
供に事件の解決を図る為、ディーキンズの列車を追跡する。
ディーキンズがテリーを列車から放り出そうとしてドアを開けた際、ヘリで追跡していたへイルがディーキンズに銃を向ける。
※此処も突っ込み処、満載。何故列車にへイルのヘリが近づくのを、発見できなかったのかと。
へイルが列車に飛び移ってからは、アクションの連続。まさに見所満載。
マクマラン司令官のウイルソン大佐は、ディーキンズに撃たれ、ヘリごと岸壁に衝突。
操縦手もろとも死亡する。
ディーキンズもヘリで脱出を試みるが、へイルがヘリに細工。脱出ヘリは木っ端微塵に吹っ飛ぶ。
ディーキンズは脱出用のヘリがなくなり、脱出は不可能と悟る。
核爆弾の起爆装置を一旦解除する。
解除したが、何を思ったのか5分後に核爆弾が起こるようセットする。
へイルに対する怒りで、既に儲ける事はおろか、逃げる事すら諦めたようだ。
当然、死にたくない仲間同士の仲間割れが始める。
その隙を付き、へイルが列車に乗り込み、最後の仲間を列車から蹴落とす。
へイルとディーキンズは核弾頭の解除のリモコンを廻り、最後の一対一の対決をする。
苦戦の末、へイルはかろうじてディーキンズに勝つ。
勝ったのはよいが、列車がガソリンに引火。炎上する。
更に前方から、対向列車が迫る。まさに危機一髪の状態。
へイルは列車から脱出する寸前、核弾頭解除のリモコンを手に入れ、解除ボタンを押す。
僅か爆発2秒前だった。
列車が正面衝突した衝撃で、核弾頭がミサイルの様に発射。
そのままディーキンズに突き刺さり、ディーキンズは死亡。列車は大破する。
核弾頭は火に包まれたが、リモコンで起爆解除されていた為、爆発せず事件は解決する。
燃え盛る炎の中、へイルはディーキンズが賭けで差し出した、ボロボロの20ドル札を見つけた。
へイルが初めて勝負でディーキンズに勝った瞬間だった。
勝利を確信したヘイルとテリーは、初めて互いのフルネームで挨拶をかわし、二人は目出度く結ばれる。
追記
映画全体を通し、息もつかせないほどのアクションの連続。
間延びのしない展開・ストーリに仕上がっている。
決してみているものを退屈させない映画と言える。
監督のジョン・ウーはご存じ、香港映画『男たちの挽歌』で有名な監督。
男の挽歌で名声を博す。その後目出度くハリウッドに迎られ、今回の映画撮影となった。
映画製作では当時巨額の製作費をかけ、超大作映画として宣伝されていた。
1977年作:『サタデーナイト・フィーバー』で人気を博したジョン・トラボルタが、初めて悪役を演じた作品で有名。
ジョン・トラボルタは、『サタデーナイト・フィーバー』以後、あまり役に恵まれず、一時期不遇な時を過ごしていたが、今回の映画で新天地を開いた。
今回の主役は「クリスチャン・スレータ」が主役であるが、主役を喰った悪役と云える。
それに関しては、アラン・ドロン主演映画1968年作:『さらば友よ』と同じかもしれない。
『さらば友よ』では主役のアラン・ドロンよりも、悪役だった「チャールズ・ブロンソン」の役が、際立っていた。
翌年公開された同監督の作品『フェイス・オフ』でもジョン・トラボルタは、主役ニコラス・ケイジの敵役に抜擢。
主役のニコラス・ケイジに勝とも、劣らない演技ぶりを披露している。
この頃にジョン・トラボルタの悪役ぶりが定着したのかもしれない。
ジョン・ウー監督の手腕が大きい。
今回ヒロイン役のサマンサ・マシスは、主人公のクリスチャン・スレーターと1990年作:『今夜はトーク・ハード』で共演している。今回は、二度目。
二人は実は、私生活でも交際していた時期がある。
映画を通じ、結ばれたと言えるかもしれない。
ベアード国防長官を演じたカートウッド・スミスは、1987作:『ロボコップ』で、主人公と敵対する悪役(クラレンス・ボディッカー)で有名。
尚、カートウッド・スミスは前年の1995年、スティーブン・セガール主演『暴走特急』に出演。
同じテロ集団と対峙する軍の提督、スタンリー・クーパー将軍を演じている。
墜落現場の調査隊長ローズを演じたバンディ・カーティス=ホールは、『ダイハード2』に出演。
空港でマクレーン刑事(ブルース・ウイルス)と銃撃戦を行ったテロ集団の一人、ミラーを演じている。
ダイ・ハード2では、劇中の最後でテロ集団がジャンボ機で逃げる際、コックピットにいて飛行機ごと爆破されている。
(文中敬称略)