商売の秘訣
いきなりタイトルに「商売の秘訣」と書きましたが、別に此れから商売を始める人へのメッセージ・セミナー等ではありません。
全くの逆。動機は今迄、自分が商売側に上手く嵌られていた事実を述べたいと思った為。
嵌められたと言うよりも、商売とは元来此の様なモノだと、表現した方が的確かもしれません。
前置きが長くなりましたが、自分の体験話を述べたと思います。
目次
★無意識だが、相手のペースに嵌っている事
難しい話はさておき、身近な話題から述べたい。年が明け、間もなく二ヵ月以上が経とうとしてる。
私事だが今年の6月頃、23年乗り続けたマイカーを廃車にする予定。
格別、廃車は珍しい事ではない。先日時間があった為、廃車にする車の今迄の経費を大まかに計算してみた。
するとなんと驚くべき事に約20年間で、1千万円以上のお金を費やしていた。
此れは車の本体価格、毎年の維持費(自動車税、保険、車検は2年に一度、ガソリン代等)、消耗品(夏冬タイヤ、オイル等)を合計して概算。
他に故障の修理代、洗車代等は含まれていない。
正確に言えば、車本体は新車で約250万円。その他は全て、本体以外の価格と言える。
現在、地方在住だが、凡そ地方では車が無ければ、生活するのはかなり困難。
都会では車は「贅沢品」かもしれないが、地方では車は「生活必需品」。
学生時代、東京23区内に住んでいたが、東京の23区で舗装された駐車場(車一台分)を月極で借りた際、約7万5千円程だったと記憶している(約20年以上前の話)。
現在では、もっと高いかもしれない。
しかし物価が安いと言われる地方ですら、約20年間近く車を保有すれば、約1千万円はかかるという計算。
大雑把に言えば、地方の新築の家が約3千5百万円とすれば、1千万円は頭金に相当するかもしれない。
月に計算すれば、約4万2千円が経費になる計算。
※1千万円 ÷ 240(一年は、12ヵ月。20年は、240ヵ月)≒ 41,666円
改めて金額の多さに驚愕した。
何を諄々(くどくど)とマイカーの話をしているのかと思われるかもしれない。
実はこれが、無意識にまんまと商売側に乗せられていると言う事実を、長々と説明していたのである。
★モノを購入したその後
モノを購入した際、実は本体価格よりも、買ったモノを維持・機能させるのに金がかかるのだと主張したい。
前述した車で言えば車本体よりも、其の後の維持費の方が莫大である。
それを考えれば、家も同じかもしれない。家の場合、家本体も高い。
おそらく自分の人生の中で、一番高い買い物ではないかと思われる。
家の場合、更に買った後の維持費まで膨大。
家はあまりにも桁が違う為、反って実感が湧かないかもしれない。
その為、再度身近な例を挙げてみたい。
皆さんの自宅に、印刷で使うプリンターをお持ちの方が多いと思われる。
私も個人のプリンターを所持している。
何気に便利で、ネット等の記事を手軽にプリントアウトしてしまう。
しかし皆さんと同様、何気に私がプリンターに関し、感じる事がある。
譬え使用しなくても時間が経てば、インクが劣化する。
劣化すれば印刷に支障をきたし、新しいインクと交換しなければならない。
皆さんにも、御経験があるかと思う。
つまり云いたいことは、近年プリンターの本体は安いが、インクが何気に高いと言う事。
「インク」ビジネスと言える。
インクで儲けるには、自社製のプリンターを消費者に大量に普及させなければならない。
その為に、廉価なプリンターを生産・販売する必要がある。
更にプリンターの修理期間は、そのプリンターが発売されてから約5年で終了する。
おそらく保証期間は、各社同じと思われる。サイクル的に、約5年で現在使用しているプリンターが終了する。
5年後、又新しいプリンターを作れば、永遠に購入者はめでたく消費サイクル(循環)の一員となる。
当にボロい商売と言える。
例え大切にプリンターを使用していても、使用できるインクの生産が終了すれば、そのプリンターは壊れてなくても使用不可。
私もプリンターは既に、3台目。
人間とは不思議なもので、初めに購入した会社の製品を習性(慣れ)で買い続けてしまう。
一度慣れてしまえば、他の製品にあまり目がいかなくなる。
此れは、PCも同じ。
大昔、ワープロなるものが流行した。あれも同じだろうか。
一旦、ある会社のワープロの操作を覚えてしまえば、あまり他社製品に関心がいかない。
何故なら、又いちから操作を覚えるのが面倒な為。更に互換性の問題もあった。
互換性があれば、過去の文章をベースにして新しい文章を書くのが便利だった。
話を戻すが、大概現在のプリンターはネットを通し、生産している会社とオンラインで繋がっている。
使用の際、会社の同意事項に了承しなければ、ほぼ使用不可。此れは各社、殆ど同じ。
因って必然的にインクの残量が少なくなれば、自動的に「インクを購入しますか」等の呼びかけがくる。
ハッキリ言えば、会社の純正インクか、そうでないかの判別もできるのも驚く。
明確に会社側に、使用状況が把握されていると言える。
これは身近に感じた、ほんの一例。
★戦国時代の鉄砲
いきなり話は日本の戦国時代に飛ぶが、戦国時代でも同じ事例が存在した。
1543年、種子島に漂流したポルトガル船から齎された、「鉄砲」である。
現代でも同様。鉄砲は強力な武器だが、鉄砲は弾がなければ、どうにもならない。
つまり弾がなければ、単なる鉄の塊(鉄の棒)にしかならない。
或る意味、ポルトガル船は鉄砲を日本人に与える事で、商売(市場)の拡大を目論んでいたのではないかと思われる。
繰り返すが、鉄砲は弾がなければ、何の役にも立たない。では弾は一体、何処から手に入れるのか。
答えを云えば、当時の日本には、弾丸となる原料はなかった。弾を作る際、最も大切なものは、火薬の原料となる「煙硝」。
日本に煙硝がない場合、一体何処から手に入れるのか?
ない場合、他所から手に入れるしかない。他所からと言えば、昔も今も「外国」。
つまり外国との「貿易」で、手に入れるしか方法がない。
説明は省くが、だからこそ「織田信長」は鉄砲を使用する為、煙硝を手に入れなければならなかった。
当時日本で外国との貿易が盛んな都市と言えば、一体どこであろうか。
それは「堺」。
当時大坂の堺が、最も貿易が盛んな都市だった。だからこそ信長は、必死になって堺を手に入れ、直轄地にしたのである。
堺以外にも貿易で有名な都市と言えば、当時京の都よりも発展していたと言われた、大内氏の「山口の府」、或いは「博多」。
更に島津氏が支配する「薩摩」。有馬氏の「坊津」。大友氏の「平戸」等が挙げられる。
当然、西に偏っている。上記に挙げた大名は一時的でも、当時有力な戦国大名として名乗りを上げた。
島津氏は、戦国・徳川時代を生き残り、明治維新を迎え、現在に至っている。
こう説明すれば、現在のプリンターのインクビジネスも、似たような構造と理解して貰えると思う。
前述した自動車も「ガソリン」がなければ、ただの鉄の塊。戦車も「砲弾」がなければ、只のガラクタ。飛行機も同じ。
強いて言えば、電気製品全体にも言える。
電気がなければ、只のガラクタ。電気をガスに変えても同じ。製品は本体は安いが、購入後の維持が難しい。
今回、車を廃車にするに従い、改めて商売の秘訣を思い知らされた。
★半永久的ビジネスの強み
こうして世の中を眺めれば、一旦お客さんが購入すれば、半永久的に儲ける事ができるビジネスが存在するのに気付いた。
電話・水道・ガス・電気等。現代で言えば、ネットのプロバイダー・携帯電話等。
一度顧客が契約すれば、なかなか解約しないモノを対象とした商売と言える。
世間では、「インフラ」を呼ばれる産業かもしれない。
インフラの場合、プリンターのような循環ビジネスではないが、半永久的ビジネスと言える。
今回、普段あまり意識していない事だったが、世の中の仕組みを改めて理解する上で、とても貴重な体験となった。
(文中敬称略)
・参考文献
【逆説の日本史10 戦国覇王編】井沢元彦
(小学館・小学館文庫 2006年7月発行)