誰にもある、青年の淡い思い出 『君がいた夏』
★懐かしい洋画シリーズ
久々に昔見た懐かしい映画を紹介したいと思います。
今回紹介する映画は、ジョディー・フォスター主演『君がいた夏』。
・題名 『君がいた夏』
・公開 1988年 米国映画
・配給 ワーナー・ブラザーズ
・監督 ウィル・アルディス
・製作 ソム・マウント、ハンク・ムーン・ジーン
・脚本 スティーブン・カンプマン、ウイル・アルディス
・音楽 デビット・フォスター
目次
出演者
◆ケイティー・チャンドラー:ジョディー・フォスター
ビリーの6才上の従姉。自由奔放な性格で、行動的。従弟ビリーの良き相談相手。
◆ビリー・ワイアット:マーク・ハーモン
フィラデルフィアに住む、野球好きな少年。野球好きな父と母に育まれ、すくすく育つ。
やがて立派な青年となり、従姉のケイティーと供に高校最後の夏休み中、ビリーにとり生涯忘れられない時を過ごす。
◆アレン・アップルビー:ハロルド・ラミス
ビリーの良き友。ビリーと供にケイティーの別荘で、高校最後の夏休みを過ごす。
◆ジニー・ワイアット:ブレア・ブラウン
ビリーの母。夫サムと、子ビリーと供に円満な家庭を築くが、或る日突然、交通事故にて夫サムを失う。
◆サム・ワイアット:ジョン・シェアー
野球好きで子煩悩、何処にでもいる典型的なアメリカ人の父親。妻ジニーと供に円満な家庭を築くが、或る日突然、交通事故で亡くなる。
◆ホープ・ワイアット:ヘレン・ハント
ジニーの妹。父サムが事故死した時、まだ赤ん坊。ジニーがケイティーの訃報を聞き、自宅に戻った時は妊娠中だった。
◆ハンク・チャンドラー:リチャード・ジェンキンス
ケイティーの父。ケイティーが自殺後、ケイティーの遺言で、遺灰の処理を従弟のビリーに託す。
◆グレイス・チャンドラー:クリステン・ジョーンズ
ケイティーの母。ビリーの両親とは、とても仲が良い。
◆ロビン・パークス:オーリー・デビットソン
ビリーの女友達。アップルビリーにプロム(卒業パーティー)の橋渡しを頼まれたビリーに訪問を受けるも、そのままビリーと意気投合。二人はともに、初めての経験をする。
あらすじ
舞台は1960年代、アメリカのフィラデルフィア。
少年ビリーは、野球好きな父と優しい母に囲まれ、すくすく育つ。
ビリーには6才上の従姉、ケイティーがいた。
ケイティーはビリーが成長する過程に於いて、重大な役割を果たす。
ケイティーは何も縛られず、形式も気にしない当に自由奔放な性格の人物だった。
ケイティーは、ビリーの精神的支柱だった。ビリーは子供乍、心の何処かでケイティーに憧れていた。
時は流れ、ビリーは高校生となった。幼少の頃から父の影響もあり、ビリーは野球部で活躍した。
ある試合でビリーは9回の裏、一打サヨナラの場面で、三塁打を放った。ビリーは3塁打後、そのまま本塁に突入。見事ホームスチールを決めた。
試合終了後、大リーグ(フィリーズ)のスカウトから、夏休みにキャンプに参加しないかと声を掛けられた。
野球好きな父に育てられ野球を始めたビリーが、スカウトされた瞬間だった。
ビリーは当に、天にも昇るような気持ちとなった。その勢いのまま友人のアップルビーと列車に飛び乗り、地元の駅に向かった。
駅に着いた際、ビリーの父サムが車で迎えに来ていた。ビリーは父サムに、スカウトされた事を告げた。
当然、父は大喜び。3人は大はしゃぎで帰宅した。
ビリーは高校生活最後の夏休みを迎えようとしていた或る日、突然父が自動車事故で亡くなったとの知らせが届く。
ビリーはいきなり、天国から地獄に突き落とされたような気持ちとなった。
意気消沈したビリーと母ジニー。
傷ついた二人は心の傷を癒す為、従姉ケイティーの別荘(シースモーク)で、高校生活最後の夏を過ごす事とした。
別荘にはビリーと母ジニーの他に、友人のアップルビーが一緒だった。
皆が過ごした此の夏の一時は4人にとり、生涯忘れられない夏となる。
見所
物語りはピークを過ぎた元大リーグ選手ビリーが、落魄れた姿から嘗て野球好きで熱心に打ち込んでいた時代に戻るシーンから始まる。ビリーはこの時、既に38才。
それはビリーが忘れかけていた素晴らしき日々を、取り戻した姿だった。
ビリーは再びスタジアムに戻ってきた悦びを噛み締めた。
ビリーの首には、大昔従姉ケイティーから貰った、ボール付のペンダントがぶら下がっていた。
時は半年前に遡る。ビリーは当時、酒場のウエイトレスとモーテルで同棲したいた。
ビリーは既に野球とは縁のない生活を送り、自堕落な生活を続けていた。
或る日、フィラデルフィアのカールトンに住む母ジニーから、電話が届いた。
電話の内容は、ビリーの従姉ケイティーが自殺を図り、遺灰の処理を従弟ビリーに遺言したとの事だった。
従姉ケイティーはビリーの6才上で、とても自由奔放な性格だった。
ビリーはあまりの突然の訃報と遺言で、戸惑った。
しかし嘗て心を寄せた従姉ケイティーの遺言の為、ビリーは取り敢えず故郷のフィラデルフィアに戻った。
夜行バスで帰るビリー。途中でビリーは幼少の頃、嘗てケイティーと過ごした楽しい日々を回顧した。
ケイティーは年上で、ビリーは魅力的に思えた。ケイティーはビリーに対し、何かしらの影響を与えていた。
しかし幼少だったビリーは、その時は何かはまだ気づかなかった。
ビリーが地元に戻る此の旅は、ビリーにとり人生で最も輝いていた時と人を思い出すきっかけとなった。
時は1960年代、アメリカのフィラデルフィア。主人公のビリーは、何処にでもいる野球好きな少年の一人だった。
野球好きな父サム、愛情溢れる母ジニーに囲まれ、ビリーはすくすくと育つ。野球好きなビリーは何時しか、野球好きな高校生(ハイスクール)となった。
或るハイスクールでも野球の試合、9回裏同点で迎えたビリーの打席。延長かと思われた時、ビリーは3塁打を放つ。
勢いに乗ったビリーは、そのままホームに突入。見事ホームスチールを決め、サヨナラ勝ちとなる。
試合後、ビリーは視察に来ていた大リーグ(フィリーズ)のスカウトマンに声を掛けられた。
高校生最後の夏、「大リーグの練習に参加してみない」かと。
ビリーは当に天にも昇るとなり、そのまま友人アップルビーと列車に飛び乗った。
帰宅後、ビリーからスカウトの話を聞いた両親は、大はしゃぎ。三人は当に、幸せの絶頂だった。
夕食後ビリーは、アップルビーに頼まれた伝言を、女友達のロビンに伝えにいく。
ロビンの家でビリーはアップルビーの伝言を告げるが、ロビンはお構いなし。
ロビンはビリーに関心を示し、二人はそのまま初体験を済ました。
ロビンの家から帰る際、ビリーはロビンにせがまれ、嘗て10才の時、従姉ケイティーからプレゼントされたペンダントをロビンに渡してしまった。
此れは後に、重要な意味を持つことになるとは、その時のビリーはまだ気づかなかった。
ビリーは幸せの絶頂だった。しかし不幸は突然やってきた。
ビリーは警察からの連絡で、父サムがなくなった事を知らされた。
突然の訃報。ビリーは茫然自失となり、愛用していた野球用具を封印。野球を断念する気でいた。
前述したが、ペンダントを人に渡した事は、後の伏線となった可能性が高い。話が進むに連れ、此のペンダントは、ビリーとケイティーを結ぶ、大事な架け橋となる。
葬式後、落ち込んでいるビリーを励ましたのはやはり、ケイティーだった。
ケイティーは幼い頃、落ち込んだ時は祖父の家プールに潜り、排水溝に触れる事。そうすれば何故か気持ちが落ち着くとビリーに話した。
二人はそのまま今では他人の家になっている庭のプールに忍び込み、プールに潜り排水溝に触れた。
迷信、又はおまじないの類であろうが、何故かビリーの心は晴れた。幼少の頃を同じで、ビリーの人生の転機には、必ず従姉ケイティーの存在がいた。
場面は再び、ビリーが20年の時を経て、帰宅した時に戻る。
ビリーは母と妹との夕食中、ケイティーの父ハンクの訪問を受けた。
ビリーは自殺する寸前のケイティーの近況と、遺灰の処理を委ねられた。
ハンクの話では、ケイティーは二度目の離婚をして、ヨーロッパから帰国。
自宅に戻るが、打ちひしがれた様子で窶れ、暫し母ブレイスと衝突。
そのまま家を飛び出し、別荘(シースモーク)に住み着いたとの事だった。
ビリーはハンクから遺灰の処理を委ねられたが、どうしてよいか分からない。
途方に暮れたビリーは答えを探すべく、嘗て父亡くした夏、4人(ビリー、ケイティー、ジニー、アップルビー)で過ごした別荘(シースモーク)へと向かった。
シースモークでは傷心した母ジニー、それを励まそうとするケイティー、のんびり過ごすビリー、そして海岸で見かけた未亡人らしき女性を口説こうとする、アップルビー。
アップルビーは海岸で見かけた女性に興味を持ち、毎晩のように覗きに出かけた。
初めはビリーも一緒だったが、途中でビリーは馬鹿らしくなり、途中からはアップルビーが毎晩でかけた。
その甲斐が実ったのか、別荘を離れる最後の日、アップルビーは夜に女性に誘われ、見事初体験を済ませた。アップルビーには、忘れられない夏となった。
一方、ケイティーは落ち込んだジニーを励まそうと必死。あの手、この手でジニーを励まそうとするも、ビリーがホームスチールでサヨナラを決め、悪ふざけで撮影したフィルムみた時、思わず涙ぐんでしまった。
一層落ち込んだジニーを励まそうとしたケイティーは、ついつい羽目を外しまう。
その事が息子のジニーには理解できず、ジニーは羽目を外した母ジニーとケイティーに怒りをぶつけた。
一夜明けビリーは冷静になり、ジニーとケイティーと和解。ジニーとアップルビーを先に帰らせ、ビリーとケイティーは最後の夜と二人で過ごした。
二人は最後の日と思い、恋人気分に浸り、そのまま一夜を共にした。ビリーが過ごした最高の日だったのかもしれない。
実は此れが最初で最後の一夜であり、翌日別荘を後にしたビリーは、此れが生きたケイティーを見た最後の日だった。
当時の二人はビリー18才。ケイティーは24才だった。
別れ際にケイティーがビリーに告げた言葉。それは
「再
だった。
それから20年の時が流れた。
なかなか答えを見いだせないビリー。ビリーは久しぶりに、アップルビーの許を訪ねた。
再会した二人は、酔った。酔った挙句、夜中に嘗て無邪気にプレーを楽しんだ野球少年時代に戻る為、封印した高校時代のユニフォームを着て、夜中のスタジアムに潜り込み、野球を始めた。
野球後、二人は朝食を取った。会話中、ビリーは昔ケイティーが落ち込んだ時、祖父の家のプールの排水溝に触れれば、気持ちが収まる事を思い出し、遺灰をプールに巻く事を思いついた。
しかし嘗ての祖父の家にいくと、既にプールは跡形もなく、埋め立てられていた。
再び途方に暮れるビリー。ケイティーの遺灰をどうする事もできず、ケイティーの両親ハンクとグレイスに返す決意をした。
ビリーはケイティーの両親の自宅を訪れ、遺灰を返そうとリビングにいた時、ビリーが幼少の頃、ケイティーがビリーに語った話を思い出した。
ビリーがリビングで見つけた物は、嘗てケイティーがビリーに話した(悲しい)思い出のアトランタシティーにある桟橋のイラスト入りパネルだった。
ビリーはパネルを見た瞬間、ケイティーの遺言の意味を理解した。
ケイティーのメッセージは「自分の遺灰を思い出の桟橋が掛かる海の底に蒔いて欲しい」という意味だった。
ケイティーの遺言を理解したビリーはその場でケイティーの両親に、遺灰処理の責任を果たす事を告げ、家を後にした。
先ずビリーは、ロビンの家に向かった。ロビンの家でビリーは、昔ロビンに挙げたペンダントを返してもらう。
其の後ビリーは遺灰を持ち、桟橋のあるアトランタ・シティーに向かった。
桟橋に着いたビリーは、海に思い切りケイティーの遺灰をまき散らした。
それは自由奔放に生きたケイティーが本当に自由になった事、ビリーが重い遺言の重責から解放された事、ケイティーの遺言を理解した事により、今後の新たな人生の指針が見つける事ができたビリーの喜びの現れではなかろうか。
この映画の最高の見所と思われた。
そして舞台は最後の場面、ロートルながら再び野球に携わるビリーの姿があった。
同点で迎えた9回裏、ビリー代打で登場。3塁打を放ち、そのままホームスチールに成功。
場面はまるで20年前、ビリーがハイスクール時代にホームスチールを決めた時と同じ。
ビリーは、嘗て人生で一番輝いていた時を思い出すかのように。
映画は此処で幕を閉じる。
映画のキャッチフレーズは
誰にも、一生忘れられない人がいる
まさにそんな気がした映画だった。
追記
既にお気づきだと思うが、嘗て高校生の時、ロビンに出かけた際、出くわしたロビンの母は、映画の最後で3人(ビリー、アップルビー、ロビン)と連れ添って歩いていた女性。
つまり娘と母は、そのまま20年後の未来を演じている訳。
初めてみた時は、気づかなかったが、なかなかのオチと思われた。
(文中敬称略)