「GoToトラベル」政策 果たして一体、誰の為

久々に時事ネタを取り挙げたい。以前も話しましたが、時事ネタはあまりブログの閲覧数が伸びません。
理由として考えられるのは、ネタに興味があればおそらく、更に詳しい報道記事を見る為。
あまり伸びないが、自分自身の現在の心境を話したいが為、敢えて取りあげました。
今回取り上げるテーマはタイトルにも書きましたが、政府が新型ウイルスで落ち込んだ経済の活性の一旦として始めた「GoToトラベル」について。
何も検証もされず、見切り発車で始まった制度。開始後やはり、色々な問題が発覚した。
色々な問題が取沙汰されているが、私の過去の体験を踏まえ、幾つか問題点を指摘したい。
目次
初めに
話を進める上で先ず、「GoToトラベル」制度とは何かを軽く説明したい。
制度の意味が分からなければ、以後話す内容が全く理解できない為。
Go To トラベルとは、国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金1/2に相当する額を支援する制度。
支援の内訳は
①相当額の7割は、旅行代金の割引
②残りの3割は、旅行先で使える地域共通クーポンとして付与する。
つまり7割は利用者の旅行代金の割引に充当。
残りの3割は旅行先の経済を活性化を図る為、支給したクーポンを使用して貰う制度。
初めに此れを是非、念頭に入れて頂きたい。
制度が開始され、浮かび上がった様々な問題点
初めに結論を述べてしまうが、タイトルにもあるが、果たして制度は一体、誰の為に実行されたのか。
名目は国民経済の活性化、落ち込んだ観光業の経済対策と云われている。
国民も新型コロナウイルスが世界各国で発生し、今年の冬からやがて初夏の頃まで、不要な外出の自粛が行われた。
自粛が行われたのは良いが、国民が不要な外出を控えた事により、経済活動が停滞した。
資本主義の下では、「ヒト・モノ・カネ」が動き、経済が成り立つ。
肝心のヒトが動かなければ、所詮モノ・カネは動かない。
その為政府は、ウイルスの根本的解決のないまま、なし崩しで外出自粛を解除した。
確かにこれ以上、経済が干上がる事は難しいのは事実。
しかし繰り返すが、根本的に解決もないまま、ほぼ解禁となったのは誰の目にも明らか。
ウイルス発生当初、マスコミもこぞって新型ウイルスを盛んに報道したが、今はめっきり下火となった。
それは何故か。それはやはり、大人の事情。大人の事情とは、つまり「金」。
以前ブログでマスコミの仕組みを簡単に説明した事があった。
所詮マスコミも、企業からの広告収入で成りたつ商売。
広告収入が激減すれば、自ずと自分の首を絞める羽目となる。
その為、企業の不利となる報道は、あまりしなくなるという仕組み。
此れも以前ウイルスに関するブログで言及したが、五輪が新型ウイルスの為、来年に延期になったのはまだ記憶に新しい。
延期と云われているが実は、私は「中止」ではないかと睨んでいる。
マスコミも薄々は中止と分かっているが、敢えて中止とは書けないのではないかと推測する。
もし中止となれば、日本には言霊信仰があり、良くない事を言及、書く等して実際そうなれば、書いた人間が往々にして非難される事がある為。
「お前が縁起でもない事を書いたから、実際にそうなった」と非難されるのが関の山。
或いは、もし来年五輪が実行されるとしても、今度は誤った発言をした人間として糾弾される。
何方に転んでも、決して得にはならない。その為皆が貝のように、口を噤んでいる状態。
話が逸れたが、改めて今回の「GoToトラベル」制度を見つめたい。
私は以前、旅行業界に携わった過去がある。
その経験を踏まえ今回の政策を述べれば、今回の政策は明らかに観光業界の救済措置と云える。
此れは誰の目にも明らか。一時給付金とは異なり、全国民が恩恵を被る事は稀だろう。
理由は、この時期に敢えて旅行をする人がいるのかと云う事。
少し冷静な判断をすれば、今はやはり外出する時期ではないと判断できる。
繰り返すが、やはり新型ウイルスの根本的解決が見つからない限り、外出すべきではないと判断せざるを得ない。
参考迄に此の話を裏付けるかのように政府の観光庁は10月6日、Go To トラベル事業における利用実績(7月22日~9月15日)を発表した。
発表内容は、利用人泊数は約1,689万人。
割引支援額は、約735億円。当初の予想の約3割程度に止まった。(一部推計値を含む)。
尚、これらの数値は、主な事業者からの報告等に基づく速報値の為、確定値でない。
追加で10月に東京が対象となった為、今度は利用者が急増。一部サイトが割引を制限する混乱ぶりとなった。
私の意見を述べれば、今旅行する余裕のある人間は、あまり今回のウイルスで経済的影響が少なかった人ではないかと。
一般庶民であれば、新型ウイルスで何らかの影響を受けていると思われる。影響とは、具体的に述べれば収入の減少。
更に庶民でなくとも、多くの各業界が何等かの影響を受けた。
皮肉にも今回の政策の影響を受ける鉄道(主にJR)、航空業界は多大な影響を受けた。
JR東日本、東海は民営化後、初めての赤字計上。
国内線がメインの全日空も、各銀行から多大な融資を受けた。
インフラである為、潰すに潰せない事情もあろう。全日空は、かなりの手心を加えられたと予測する。
つまり云いたい事は、今回の制度は明らかに観光業界を救う為の制度。此れに尽きる。
あまり意識が薄いかもしれないが、旅行業界を牛耳る政府機関は一体、何処であろうか。
答えは、あらゆる利権の多くが存在すると云われている「国土交通省」が主管。
旧運輸省・建設省絡みと云えば、分かり易い。
それ程、旨味がある省庁で、それに群がる人間も多いと云う事。
実際、Go To トラベル事務局を運営する団体は、大手旅行会社(JTB,近畿日本ツーリスト、日本旅行、東武トップツアーズ)の社員が出向という形で作られている。
此れは明らかに、大手旅行会社救援措置。因みに日本旅行の大株主は、JR。まさにズブズブ。
この形式をみれば、政策が何処に向いているかが明らか。決して庶民の為の政策ではない。
参考までに10月15日現在まで此の制度は、宿泊代金と目的地までの公共交通機関の利用代金が対象。
マイカーを利用した際の高速料金などは、Go To トラベル事業の対象外とされている。
東電が東日本大震災の際、福島原発が爆発。結果、多額の負債を抱え株価が低迷。
潰す訳にいかず、政府がおそらく返済不可能ともいえる額を東電に注入した。
まさにあれと同じ。政治力がモノをいった結果。
今回も全く同じ構造。管轄が国交省の為、一種の公共事業と同じ。
公共事業と云えば主に建設関係を想像しがちだが、今回も一種の公共事業による「バラマキ」。
前述したが、国交省は旧運輸省・建設省が合併したもの。「利権の宝庫」と云える。
蜜に群がるアリがいても可笑しくない。
客観的矛盾
利用者があまり増えない理由は、近年日本の観光業界は主に「インバウンド」を中心に事業を展開していた為。
「インバウンド」とは分かり易く説明すれば、日本に来日する外国人客を目当てに事業を展開する事。
そういえば最近、めっきり聞かなくなった訪日外国人訪問者数の発表。
何故聞かなくなったと云えば、新型ウイルスが発覚する前年同月に比べ、数字がガタ落ちした為。
あまりにも数字が悪い為、発表しなくなったと推測する。
発表すればあまりも数字が悪い為、隠蔽ではないが公然と表に出さなくなったのではないか、というのが私の意見。
此れも前述した「言霊」と同じ思考。
近年日本の観光業界は、大まかインバウンドで潤っていた。
五輪やカジノ計画も、訪日外国人を狙らった政策。大阪万博も同じ。
インバウンドを狙ってたのは、観光業界ばかりでなく、あまり日本人が行かなくなった、小売業(主に百貨店など)も同じ流れ。
一時期、訪日外国人の「爆買い」と云われた購入も、最近ではめっきり減ってしまった。
政府も国内消費の減少を、訪日外国人が落とす金で減少額を賄う政策を奨めていた。
それが今回の新型ウイルス騒動で減少、見事に弱点が露呈してしまった。今迄の強みが、逆に弱味となった。
ブログの初めに「国内旅行」という文字に敢えてアンダーラインを引いたのは、此の話に影響している。
近年インバウンド客を中心に商売していた為、いつの間にか国内旅行者を疎かにしていまい、国内のお客が離れてしまった。
長年の不況と円安の影響もあるだろう。
一旦離れたお客さんが、未だにウイルス騒動が終始していない此の時期、危険を冒してまで旅行する気など起きないのではないか。
昔旅行会社にいた人間としては、如実に感じる。
去年ブログを開設した約1ヵ月後(令和元年の改元時)、改元に伴う大型連休が存在した。
私は大連休中、個人旅行をした。行先は私が旅行代理店勤務時代、しばし訪れた京都。
その詳細と感想は連休後、ブログで述べた。
端的に述べるならば、「京都は既に日本人の為の観光地ではなく、外国人客の為に存在する」と。
私の心中では、京都は「日本でありながら、既に日本人には訪れにくい場所となった」、「近くて遠い存在」と痛切した。
1年を経て、今では全く逆な状況となった。世界各国がウイルスの対処に追われる中、人々は旅行などする余裕などなくなった。
因ってインバウンドが見込めない為、急に商売の対象を日本人に切り替えても、一旦離れた客はなかなか戻ってこない。
此れは客商売をしている者であれば、犇々(ひしひし)と感じるであろう。だから商売は難しい。商いは「飽きない」と云われる所以。
くだらない冗談はさておき、政府が必死に音頭をとり進める政策だが、イマイチ盛り上がりに欠けるのは、上記に挙げた様々な要因が原因ではなかろうかと勝手に想像する。
身近に感じた矛盾
実は今回の私が感じた身近な矛盾の一つに、10月から開始した旅先で使う地域共通クーポン券(以下クーポン券)の取扱いがある。
何が矛盾かと云えば、先ず宿泊先の関係者が何処でクーポン券が使えるのか、正確に把握していないと云う事。
旅行者が宿泊側に利用先を尋ねても明確な返答がなく(フロント、コンシェルジュ等)、旅行者は使える場所が分からない。
端的に言えば、宿泊先の従業員は何処の店でクーポン券が使えるのか、全く把握していない。何故そうなるのか。
地域クーポン券が使えるかどうかは、使用を希望する店が、自分達でGo To トラベル事務局に申請する必要がある。
つまり、店側がクーポン券が使えるよう、申請しなければならない。宿泊先はどの店が申請しているのか、把握していない。
宿泊先が、一つ一つ確認するのは至難の業。手間暇がかかるし、無駄な作業とも云える。
本来、従業員の仕事とは言い難い。
せいぜい、一流ホテルなどに常置されている「コンシェルジュ」ぐらいだろうか。
決して宿泊先の全従業員が把握している訳ではない。
その為、自ずと使い道が限られてくる。詳しくは述べないが、私は現在、小売業に従事している。
10月1日でクーポン券の使用が可能となった際、勤務する店で早速クーポン券が使われた。
お客さんがクーポンを利用して購入した商品は、全国どこでも値段が一律の「タバコ」だった。
お客様も旅先で利用できる店が分からず、仕方なく嗜好品、或るは換金性が高い商品を購入したものと思われる。
参考までにクーポン券には使用期間が決められおり、使用期間を過ぎれば無効となる。
結局旅行者も利用先が分からず、個人経営の店では大半が使用不可の為、使い道に困り、旅先の大手スーパーやコンビニ等でタバコを購入したものと思われた。
名の知れた大手スーパー・コンビニであれば、大概使用可能な為。
結局、旅先の地元経済を潤わす目的で考案されたクーポン券も、元来の目的とかけ離れた使用をされた可能性が高い。
此れもやはり、何の検証もなく見切り発車で始めてしまった制度の矛盾。
個人店でクーポン使用に加盟している店は、おそらく少ないのではないかと予測する。
因みに「酒、タバコ」は大半が税金の為、結局クーポンを利用しても、大半は国庫に返納される。
何故なら酒、タバコの税金は、財務省の管轄。タバコの版元、JTの大株主は財務省。
クーポンの精算方法を明かせば、クーポン券は月2回の精算日が存在する。
クーポン券の期日、又は処理を誤れば換金できない可能性がある。
更にクーポン券は自らがまとめ、前述したGo To トラベル事務局に事業者自らが申請の為、郵送しなければならない。
申請後、或る一定の期間を経て漸く振り込まれる。
振込まれるタイムラグを考えれば、個人店を経営する者としては、あまり旨味がない。
個人経営者は日銭が大切で、大手のような潤沢な回転資金はない。
只でさえコロナウイルス影響で売り上げが減少している最中、いつ手に入るか分からない金を待っている余裕はない。
大概どこの個人店も、3ヵ月売上げが減少すれば蓄えも底がつき、干上がるのではなかろうか。
中らずと雖も、遠からずではなかろうか。
Go To トラベル事務局の高額な日当
先日ネットニュースで、今回の制度を取り仕切る Go To トラベル事務局の出向している職員の日当が発表(暴露?)されていた。
驚くべき事実は、旅行会社大手4社からの職員の出向という仕組みで運営される事務局員の日当は、凡そ我々庶民の感覚からすれば、とてもかけ離れた金額と思われた。
具体的に明記すれば、
・主任技術者=61,000円 ・理事・技師長=56,700円 ・主任技師=48,300円
・技師①=42,600円 ・技師②=35,500円 ・技師③=28,600円
・技術員=24,400円〉
※文春オンライン一部抜粋
一瞥して、皆様はどう思われたでしょうか? 繰り返しますが、此れは日当です。
おそらく一言「高すぎる」という言葉が出てくるのではないかと想像する。私も同感です。
事務局の仕事内容は、クーポン券の取扱いを拡大・促進する事。
具体的には、ただ電話を店に電話をかけクーポン券の取扱いを勧める事のようだ。
おまけに、常勤ではない。
此れは果たしてまともな事務局と云えるであろうか。決して言えないと思う。
前述したが管轄が国交省の為、出向職員は公共工事にかかわる調査及び設計業務を国が委託する際に支払う『設計業務委託等技術者単価』に準じた額で設定されている。
つまり 国が建設業に公共事業を委託した際、支払われる額と同じ と云う事。
以前旅行会社にいた人間としては、事務局の仕事内容は大方予測がつく。端的に言えば、数字管理のみ。
PCを眺め、クーポン券が使われた状況、申請があったクーポン券の確認と換金の手続きだろう。
それ以外、予測がつかない。
旅行会社の内勤と云えば旅行の企画、手配、後は経理ぐらいであろう。他に仕事が見当たらない。
事務局は旅行商品を仕事でない為、仕事と云えば経理業務しか残らない。因って先程述べた数字管理ぐらい。
此れで前述した日当が、国から支給される。国から支給されると云う事はつまり、「税金」である。
此れが私が今回のブログの冒頭でのべた、国民の為と言い乍、実は一部の既得者の為にしかならない政策と述べた理由。
一律給付金であれば金額はさておき、国民一人一人に付与された。
しかし今回の政策は明らかに偏った政策。
初めに戻るが、観光業しかもどうやら大手旅行会社の救済措置としか思えない。
あくまで大手と限定したのは、中堅或いは小規模な旅行会社は、殆ど恩恵をうけない。
旅行会社以外の宿泊施設・飲食店関係・小売業でも、大手以外はあまり恩恵を受けない制度と云える。
私が身近に感じた矛盾も、小売りに限定したモノ。飲食店でも同じだろう。
まさに矛盾だらけの政策と云える。
この様な矛盾だらけの政策が何故、見切り発車で罷り通ったか。それはやはり、政治力。
ある種の大人の事情とでも云うのか。それしか考えられない。他にも数々の綻びが露呈している。
10月に対象が東京都にも拡大されたのが、更に一層の混乱を招いた。
ネットによる旅行予約サイトでは、制度の対象商品を見直しが行われた。
結局、混乱だけ招き、あまり効果が期待されない政策は止めた方が良い。
以前も話したが大昔の地域振興券、ごく最近の地域プレミアム券などの類は、果たしてどんな効果があったのか。
検証すらされていない。私が思うに、おそらく何の効果もなかったと推測する。
皆様も自分が住んでいる地域経済を俯瞰してみれば、凡そ検討がつく。
思うままに心情を述べましたが、皆様は如何お考えでしょうか?
追記
このブログを発表した約2ヵ月後、令和2年12月14日、政府は漸く年末年始の Go To トラベル政策の一時停止を発表した。
まさに、遅きに期した感がある。
その間にも新型コロナウイルスは拡散。第3波の広がりをみせ、東京などでは連日感染者の数字が更新する事態となった。
令和2年12月15日付
(文中敬称略)